23、いざ薬師ギルドへ!①
薬師に会うため、早速ユーリに街へと連れてきてもらった。もちろん認識魔法もかけてもらっている。
私とユーリは並んで歩きながら、薬師たちが集まるギルドへ向かっていた。
「そういえば、ユーリも認識魔法をかけているの?」
「そりゃあな」
詳しい事情はわからないけれど、彼は突然魔法塔から姿を消していたのだ。何か隠れたい事情があるのだろう。
「でも初めて会った時は、魔法をかけていなかったわよね?」
「……あんな森で人に会うと思わないだろ」
「それもそうね」
そんな話をしているうちに、薬師ギルドへ到着した。木造の建物には薬草が吊るされており、窓からは乾燥させた薬草の香りが漂っていた。
早速、薬師たちに魔力欠乏症と魔力回路について相談してみることになった。
「なるほど! つまり、魔力回路の暴走を抑えて、自身の魔力を守るということだね!?」
「その通りよ! 話が早くて助かるわ」
「いや〜僕、天才だからね〜」
えっへん、とでも言いたげに胸を張る。
目の前に座っているのは、この薬師ギルドの長であるユアンだ。茶髪の癖っ毛に人懐っこい笑顔。どちらかと言えば年下に見えるほど柔らかい雰囲気をしている。
正直、とてもギルドの長には見えない。
けれど周囲の薬師たちの反応を見る限り、その実力は本物なのだろう。
「それにしても、リーゼとユリスはどうして魔力欠乏症について詳しいんだい?」
リーゼとユリス。それは私とユーリが即席で決めた偽名だ。お互い隠れて生活しているのなら名前は隠したほうがいい。
「えっと、私が魔力欠乏症で……」
「俺がリーゼの治療をしている魔法師だ」
全くの嘘ではない。嘘の中に真実を混ぜれば、それだけ信憑性も増すものだ。
「へぇ〜。それは大変だったね」
ユアンは何度か頷いた後、ふっと口元を緩めた。そして、にやりと笑う。
「でもそっか。患者と治癒師の関係なんだね〜てっきり恋人同士かと思ったよ」
「へっ!?」
思わず変な声が出た。思ってもみなかった発言にリゼリアの顔が一気に熱を帯びた。だけどユーリは通常運転だった。
「ふーん。そう見えるものか?」
隣に座るユーリはどこまでも平然としている。少しも動揺していない。
(私だけ気にしてバカみたいじゃないの……!)
恥ずかしさを誤魔化すように、隣のユーリの脇腹を肘で小突いた。
「……何するんだよ」
「ユーリ……じゃなくて、ユ、ユリスのバカっ!」
「だから何なんだよ」
本気で意味が分かっていない顔だった。
そんな私たちを見ていたユアンは、くすくすと楽しそうに笑う。
「ふふ。やっぱり仲良しみたいだね」
ユアンはうんうんと満足そうに頷いた後、ぱんっ、と手を叩いた。
「とりあえず、お茶飲む〜?」
***
「ふーん。リーゼたちも研究に参加したいの?」
「ええ」
「まあ、いいよ〜。人手は多いに越したことないし」
思ったよりあっさり許可が下りた。
「でも魔法師はケチだね〜。こんな大事な話を共有しないなんてさ〜」
そう言った直後、ユアンははっとした顔になる。
「あ、ごめんごめん! ユリスも魔法師だった」
私は立ち上がりかけたユーリを手で制した。
「いいのよ。魔法塔には魔法オタクしかいないみたいなの」
「おい」
「そもそも話を共有するって発想すらなかった可能性があるわ」
「おい」
「うるさいぞ。なんでお前が言うんだ」
「間違っていないでしょう?」
「あっはっは!」
ユアンが腹を抱えて笑い出した。
「いいね、君たち!」
ひとしきり笑った後、彼は楽しそうに言う。
「じゃあ明日から来てよ」
「本当!?」
「うん。成功するかは分からないけどね〜」
ユアンは肩を竦めた。
「正直、前例のない話だし」
その言葉に、私は少しだけ表情を引き締める。
やっぱり簡単な話ではないのだ。それでも――。
「やってみたいわ」
そう言うと、ユアンは満足そうに笑った。
「うんうん。その意気だね〜」
「ありがとう! よろしくね、ユアン!」
「こちらこそ〜。よろしくね、リーゼ」
そう言ってから、彼はちらりとユーリを見る。
「ユリスもね〜」
「……ああ」
相変わらず愛想のない返事だ。それでもユアンは全く気にしていない様子だった。
「ふふ。面白くなってきたね〜」
楽しそうに笑うユアンを見ながら、私は小さく拳を握る。
魔力を取り戻せるかもしれない。同じ様に病に苦しむ人を救えるかもしれない。
まだ何も始まっていない。
それでも、ほんの少しだけ未来が開けた気がした。
こうして私たちのポーション開発が始まったのだった。
年齢→ユアン > ユーリ > リゼリア




