22、私にとっての魔力
後半ユーリ視点!
”私の魔力は奪われていた”。その衝撃的な事実に、リゼリアは言葉を失っていた。
誰が? どうして? 答えは何ひとつ分からない。
だけど、第一王子の婚約者だった自分は、決して目立たない存在ではなかった。
高い魔力を持ち、多くの者から羨望を向けられていた。
妬まれていても、おかしくはない。
考え込むリゼリアを見て、ユーリが再び口を開く。
「……すまない。現時点で考えられる可能性は二つある」
「えっ?」
まだ他にも何かあるの?
リゼリアが顔を上げると、ユーリは指を二本立てた。
「一つは、お前自身の魔力回路に問題がある場合だ」
「魔力回路に……?」
「ああ。器に穴が空いているような状態だな。魔力を保持できず、漏れ続けている可能性がある」
リゼリアは思わず息を呑んだ。
「もう一つは」
そこでユーリは僅かに目を細める。
「さっきも言った、誰かが意図的に奪っている場合だ」
その言葉で、空気が一瞬にして重くなった。
「じゃ、じゃあ……まだ病気なのか、故意によるものなのか分からないってこと?」
「ああ」
ユーリはあっさりと頷き、リゼリアは大きく息を吐いた。
「はぁ……驚いたわ……」
突然、自分の魔力が誰かに奪われているかもしれないと言われたのだ。
怖くないと言えば嘘になる。
でも――。
(私の魔力は、消えたわけじゃない)
ユーリはそう言った。
原因があるのなら。失ったものを、取り戻せる可能性があるのなら。
まだ諦める理由になんてならないはずよ。
「まあ、引き続き調べてみるさ」
「ありがとう、ユーリ」
その言葉に、胸の奥が少しだけ軽くなる。
「じゃあ、もう食事にしましょ。もう準備できるからユーリはそこで待っていて」
「ああ。ありがとう」
そうして私は中断していた食事の支度を始めた。ユーリはソファに座り、静かに待っている。
まだ私の魔力について分からないことは多い。これからどうなるのかも分からない。
でもなんだかユーリの存在が心強く思えた。
魔力がなくても、自分の力で生きて、自由に世界を見てみたいと思っていた。
それでもやっぱり私にとっての魔力は――私が私である誇りだったのだ。
(絶対に取り戻すのよ)
諦めない。そう心に誓ったリゼリアだった。
***
ユーリは、食事の準備をするリゼリアの背中を静かに見つめていた。
リゼリアをここに連れてきたのは、自分の目的のためだった。
リゼリアをこの家に置いたのは、決して善意からではない。
彼女の魔力が外へ流れ出していることに気づいたのは、出会ってすぐにわかった。
そんな現象を、俺は今まで見たことがなかった。
それは、自分にとっても無視できないことだった。
もし彼女の魔力について調べれば――自分が長年抱えている問題の答えに辿り着けるかもしれない。
そう思ったから、ここへ連れてきた。
俺が家を空けていた理由も、本来は別にある。
だが、「何をしていたの?」
彼女にそう尋ねられた時、俺は意図的に話を逸らした。
彼女の魔力について調べていたのも事実だ。説明したこと自体は嘘ではない。
俺には俺の事情がある。余計なことを話すつもりはなかった。
そう思ったはずなのに。
ただ利用しているだけだったはずなのに。
(……なんなんだ?)
なぜか、彼女の背中を見ると少しだけ胸の奥がざわついた。




