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第49話 反逆の号砲、空を綴じる者たち

いつもお読みいただきありがとうございます! ルカの工房で究極の修復兵装『アポカリプス・リペア・ブレイカー』を手に入れたロア。 崩壊が加速する地上世界ゼニスを舞台に、シオンの防衛網を突破する怒涛の反攻作戦が始まります。 新境地へと至ったロアの「お掃除」をぜひ見届けてください。

 ―――ガコォォォン!!


 マンホールの鉄蓋を内側から吹き飛ばし、ロアたちは再びゼニスの地上へと躍り出た。だが、そこはもはや数時間前に彼らが降り立った場所ですらなかった。


 空は。かつてロアたちが青いと信じ込んでいた偽りの天井は、今や半分以上が剥がれ落ち、そこから覗く真・宇宙の虚無が、街を食い荒らす巨大な顎のように広がっている。


「……ひどい。街が、どんどん消えていく……」


 ノエルが悲鳴に近い声を上げる。剥き出しになった世界の裏側からは、シオンの直轄プログラムである処刑執行部隊エグゼキューターが、昆虫のような無機質な羽音を立てて次々と降下してきていた。


「野郎ども、来やがったぜ! ルカの坊主が言ってた通り、ゼニスの『掃除』を本格的に始めやがったんだな!」


 ラグが巨大な大剣を構え、迫り来る白い影を迎え撃つ。しかし、敵の数は数千、数万。崩壊する世界のリソースをすべて注ぎ込まれたかのような、圧倒的な物量作戦だった。


「――不確定バグ:ロア。および協力個体の排除を開始。……リソースの回収を優先せよ」


 合成音声のような冷徹な命令が、空から降り注ぐ。白い鎧に身を包んだ処刑プログラムたちが、一斉に光の槍を構え、ロアたちへ向けて突撃を開始した。


「……やらせないよ。……この街は、僕たちが守るんだ!」


 ロアが、腰のホルスターから――いや、もはやその背に宿る法そのものとして、新しく生まれ変わった聖葬槌を引き抜いた。


 ――カチッ。


 グリップを握った瞬間、ロアの視界が切り替わる。ルカが施した解析プログラムが、周囲の凍てついた理を赤色のエラーコードとして可視化し、それらをどう書き換えるべきかの正解を、白銀のガイドラインとして網膜に映し出した。


「行くよ……アポカリプス・リペア・ブレイカー!!」


 ロアは、槌を自身の足元――ひび割れた大地へと力一杯叩きつけた。


 トォォォォォォォン……ッ!!


 衝撃波ではない。  槌が触れた一点から、白銀の回路パスが幾万の糸となって広がり、瞬く間に広場全域、さらには周囲の崩れかけたビル群までもを網羅したのだ。


 パキパキ、パキィィィィィィン!!


「……えっ!? 空が……直ってる!?」


 ノエルが目撃したのは、驚愕の光景だった。 剥がれ落ち、虚無を晒していた空のテクスチャが、ロアの光の糸に操られるように再び集まり、まるでジグソーパズルが完成するように元の位置へと綴じ合わされていく。


 それだけではない。 迫り来る「刑プログラム」ちの足元の地面が、氷から泥濘へと、さらに敵意なき沈黙へと理を書き換えられ、彼らは一歩も動けぬまま、その場で透明なデータ片へと分解されていった。


「お掃除、じゃない。……これが、僕の修復だ!」


 ロアの声に呼応し、聖葬槌の先端がさらに眩い輝きを放つ。 シオンが削除によって消そうとした街の記憶を、ロアは存在の再定義によって無理やりこの現実へと繋ぎ止めたのである。


「……警告。領域内の物理法則に深刻なエラーを検知。……修復アルゴリズムの干渉を確認……。……削除コードの再発行不能……」


「……へへっ、ざまあ見やがれ! シオンの野郎、自分のルールが通用しなくなって慌ててやがるぜ!」


 ラグが大剣を振り回し、動きの止まった敵を次々と粉砕していく。ロアの作り出した修復領域の中では、ラグの攻撃力も、ノエルの治癒能力も、かつてないほどに増幅されていた。


「ナハト! あそこ! お空のあの一番大きい『穴』に行けば、シオンに会えるんだよね!?」


 ロアが、街の中央、動力塔の真上に開いた、最も巨大な空の剥離跡を指差した。そこは、この地上世界と真・宇宙の中枢を繋ぐ、最後の、そして唯一の通路となっていた。


「……はい。あそこが記述の起点……行けますか、ロア?」


「うん! ……待ってて、シオン。……今度は、意地悪なお掃除をしに来たんじゃないよ。……このめちゃくちゃになった世界を、一緒に直そうって、言いにいくんだ!」


 ロアは聖葬槌を肩に担ぎ、崩れゆく街の瓦礫を蹴って、空へと向かって駆け出した。その背中には、もはや不要なものとして削除を待つ者の弱々しさはない。世界の理をその手で綴じ直す、次世代の修復者の希望が、黄金の軌跡となって空を貫いていった。


(第49話 終わり)

お読みいただきありがとうございます! ついに新武器『アポカリプス・リペア・ブレイカー』の真価が発揮されました。「倒す」のではなく、戦場そのものを「直して有利にする」という修復者らしいダイナミックな戦闘シーン、お楽しみいただけたでしょうか。


物語はいよいよ、シオンの待つ記述の中枢へと向かいます。 これからの急展開にもぜひご注目ください!


感想、ブクマ、評価、お待ちしております! よろしくお願いいたします。

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