第48話 解析される宿命、再誕する黄金
いつもお読みいただきありがとうございます! 崩壊するゼニスの広場で人々を救ったロアたちは、ルカのアジトへと急ぎます。 そこで明かされる、ルカ自身の存在の謎と、ロアの「お掃除道具」に隠された真の姿とは……? 物語が大きく動き出す、覚醒の回となります。
「……はぁ、はぁ……ッ! ルカ! ルカ、いるの!?」
ロアたちが雪の積もるマンホールを蹴散らし、地下鉄クズ街の最深部――ルカの工房『ジャンク&フィックス』に転がり込んだ時。
そこには、数日見ない間にひと回りやつれたような、それでいて目の奥に狂気じみた光を宿したルカが、モニターの壁に囲まれて座っていた。
「……遅えよ、バカロア。……それと、ノエルにおっさんも。……生きてて何よりだ」
ルカは振り返りもせず、キーボードを叩く手を止めない。工房内は、以前よりもさらに複雑な配線が這い回り、見慣れない純白の光を帯びたケーブルが、床一面を埋め尽くしていた。
「ルカ、これ……。地上の空が剥がれてるの。シオンが……」
「分かってる。……俺のスキャナーが、世界の全リソースが管理者領域に吸い上げられてるのを検知した。……あのアドミン野郎、お前らを消すために、この世界の寿命を前借りしやがったんだ」
ルカがようやく椅子を回転させ、ロアたちと向き合った。その顔は、冷徹な機械技師のそれではなく、何か途方もない真実に突き当たった者の困惑に染まっている。
「……なぁ、ロア。お前を……いや、お前が持ってるそのハンマーピッケルを、解析させてもらったぜ。……真・宇宙での戦闘データと、さっきの広場での修復の挙動をな」
「爺ちゃんのハンマーが、どうかしたの?」
ルカは重い沈黙の後、一枚のホログラム・ウィンドウを表示させた。そこには、ロアの生体コードと、ルカ自身の構造データが並べられている。
「……見てみろ。……おかしいんだよ。……俺のソースコードの深い部分にある保護領域の記述が……お前のそれと、酷似してやがる。……まるで、同じプログラマーに書かれたみたいにな」
「えぇっ!? じゃあ、ルカも爺ちゃんの親戚なの!?」
「アホか! 血の繋がりの話じゃねえ、魂の……いや、この世界の役割の話だ!」
ルカが立ち上がり、工房の壁際にある、分厚い鉄扉を指差した。 そこはこれまで、彼自身も「開け方が分からない」と言っていた、ガレン(ロアの祖父)から受け継いだという『開かずの倉庫』だった。
「……さっき、お前が広場で修復の力を全開にした時。……この扉のロックが、勝手に外れやがった。……お前の修復者としての波長が、鍵になってたんだ」
ルカが震える手で扉を押し開ける。中から溢れ出したのは、これまでのゼニスの技術体系とは一線を画す、透き通った白銀の光だった。
そこには、一つの基盤が浮遊していた。ガレンがロアにハンマーを託した際、同時にルカの工房に隠しておいた――真・宇宙の理を上書きするための、究極のパッチプログラム。
「……お掃除屋・ガレン。……あの大ジジイ、最初からこうなることを予見してやがった。……ロア。そのハンマーピッケルを、この基盤と同期させろ。……それは汚れを消す道具から、この壊れた世界を定義し直す杖へと進化する」
「……爺ちゃんが、これを僕に……」
ロアは、黄金の道具を基盤へと差し出した。
瞬間。 キィィィィィィン!!
という鼓膜を劈くような高周波と共に、ハンマーピッケルがその姿を変え始める。
これまでのどこか愛嬌のある掃除道具の丸みが削ぎ落とされ、より洗練された、鋭利な白金の結晶体がハンマーの打撃面を覆っていく。ピッケル側は、宇宙の星々を繋ぎ合わせる針のように細く鋭く、そして神々しい輝きを放ち始めた。
「……すごい。……温かいけど、すごく強い……」
「……当たり前だ。……名付けて、『終焉の虚無を穿つ聖葬槌』。……シオンの削除を正面から弾き返し、消された世界をその場で再執筆する。……それが、お前の新しい特権だ」
新しく生まれ変わったハンマーピッケルを握り締めたロア。その全身から、これまでのオレンジ色の光とは異なる、白銀と黄金が混ざり合った至高の燐光が溢れ出した。
「ルカ、ありがとう。……僕、分かったよ。……ルカも、この街も、みんな爺ちゃんが大切にしたかった世界の一部なんだね」
「……うっせえ。……俺は、俺のためにやってるだけだ。……さあ行け、ロア。……シオンの野郎に、本当の『お掃除』ってやつを教えてやれ!」
地下工房の壁が、地上の崩壊の余波で激しく揺れる。しかし、ロアの瞳にもはや迷いはなかった。 最強の武器を手に、お掃除屋の反撃が、ここ機械都市ゼニスから再び始まろうとしていた。
(第48話終わり)
お読みいただきありがとうございます! 第48話、いかがでしたでしょうか。 ついに物語の最大の謎の一つ、ルカの「ソースコード」の秘密に触れつつ、ロアの武器が最終形態へと進化する胸熱な展開となりました。
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