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第43話 白き騎士と、重なり合う意志

いつもお読みいただきありがとうございます! 黄金の道を開いたロアたちの前に立ち塞がるのは、これまでのバグとは次元の違う「白き騎士」。 少年の姿をした管理者シオンの冷徹な防衛プロトコルが、一行に襲いかかります!

「……来るよ。今度は、掃除を絶対にさせたくないって奴らだ」


 ロアが黄金の道の上で、腰のベルトからハンマーピッケルを抜き放った。

 前方の空間が白熱し、ノイズと共に実体化したのは、全身を純白の甲冑に包んだ十数体の騎士だった。彼らは武器を持たない。ただ、巨大な鏡面のような盾を構え、無機質な動作で一行を遮る。


「排除対象の存在を固定化。これ以上の干渉を不許可とします」


 騎士たちの発した声は、感情の欠片もない合成音声だった。


「へっ、抜かしやがれ!」


 ラグが先陣を切って跳ぶ。重力加速を乗せた大剣が、先頭の騎士が構える盾に直撃した。


 ――ガァァンッ!!


 手応えはあったはずだ。盾には深い亀裂が走り、騎士の身体は後方へ弾け飛んだ。しかし、次の瞬間。


「……プロトコル、Undo(巻き戻し)。事象の固定を確認」


 騎士の周囲に青い光の格子が走ったかと思うと、砕けた盾も、吹き飛んだ身体も、まるで映画を逆再生するように無傷の状態へと戻っていた。ラグの攻撃が当たる直前の座標へ、完璧に回帰したのだ。


「あァ!? 今、確実に手応えがあったぞ!」


 後方で浮遊するナハトが、感情を削ぎ落とした声で冷徹に告げた。その眼差しには生命の温かみが一切宿っておらず、まるで精巧な自動人形が言葉を発しているかのようだ。


「あれはシオン様直属の防衛プログラム。受けたダメージを論理エラーとして定義し、瞬時に確定前の状態へ巻き戻す。事実上の無敵の盾です」


「無敵なんて、私の魔法が許さないわ!」


 ノエルが憤然と叫び、両手から極大の火炎放射を放つ。白き騎士たちを呑み込む業火。だが、それすらも騎士たちが「Undo」を繰り返すごとに、火の粉一つ残さず消失していく。


「……チッ、なんだこれ。初めて見るはずなのに……」


 ロアの肩にあるドローンから、ルカの苦々しい声が漏れた。


「おかしいぜ。あいつらの並列処理の癖、パケットの回し方……。俺がゼニスの地下で書いたコードの癖と似すぎてて、反吐が出そうだ!」


「ルカ? どうしたの?」


「……わからねえ! だが、あいつらの巻き戻しには、極微弱な再構築の隙がある。ナハト! 同期しろ! 奴らのUndo座標の直後に、ラグの追撃を叩き込むぞ!」


「了解……。演算同期を開始」  ナハトの虚空を見つめる瞳に、膨大な文字列が高速で流れる。


 ルカの指揮による、捨て身の飽和攻撃。

 ラグの斬撃をUndoで凌いだ「0.001秒後」に、ノエルの火線が着弾する。騎士たちの盾に負荷が溜まり、処理速度が僅かに低下していく。


「今だ! ロア!」


「うん!」


 ロアが黄金の道を一直線に駆け抜ける。  

 目の前に立ち塞がる騎士の盾に、ロアはピッケルの先端を、そっと寄り添わせるように触れさせた。


「……君たちの盾、すごく冷たいね。ずっと嫌だ嫌だって言いながら、扉を閉めてるみたいだ」


 騎士たちの盾――それはシオンが世界を拒絶するために作り上げた、絶対的な孤独の証明。ロアはそれを砕くのではなく、その冷たい論理に、温かな光を流し込んだ。


「でも、もういいんだよ。お掃除が終わったら、みんなでここを通れるようにしてあげるから!」


 ――チリンッ。


 風鈴のような音が響き、騎士の盾にオレンジ色の回路が描かれる。Undo(巻き戻し)ではない。それは過去を否定するのではなく、現在のエラーを受け入れ、新しい理へと修復する力。


 騎士たちの盾が、鏡から透明な結晶へと透き通り、そのままパリンと砕けて光の粉になった。だが、その光は消え去ることなく、ロアが歩むべき先の道を照らす灯火へと変わっていく。


「……論理防壁、沈黙。まさか、防衛プログラムを『説得リライト』するなんて」


 ナハトが呆然と呟く。その少女のような小さな胸の奥で、定義不可能なざわめきが広がっていた。


 守護者たちを突破した一行の目の前に、巨大な、あまりに無機質な白銀の門が現れた。世界の心臓、中枢領域へと至る聖域のサングチュアリ・ゲート


 その門の奥。椅子に深く腰掛けたシオンが、空中に浮かぶ無数のモニターを見つめていた。その輪郭には未完成な幼さが残っているが、全身からは王者のような威圧感と、どこか壊れそうな危うさが漂っている。そのうちの一つの画面には、ピッケルを腰に収め、迷いなく門を見上げるロアの姿が映っている。


「……私の騎士たちが、消去ではなく『協力』を選択した……?」


 シオンの白い指先が、僅かに震えた。それは恐怖ではなく、自らが作り上げた完璧な論理の檻が、ロアの温かな打撃によって、静かに、だが根底から書き換えられていくことへの、言いようのない不快感。


「……不愉快だ。ガレン、これが君の言っていた直すことの結末か」


 シオンの瞳に、初めて暗い陰が差す。門の向こう側から、ロアの足音が響いてくるのを、彼は黙って聞き続けていた。


(第43話 終わり)

ついにシオン直属の守護者を突破し、中枢ゲートに王手をかけました! 無敵の「Undo」すらも修復してしまうロアの力。そして、シオンの中に芽生え始めた「不快感」という名の、最初の感情。 次回、第44話では、ゲートの奥で待ち受ける「シオンの肉声」と、世界の真実に一歩迫る激突が描かれます。


「ルカの既視感が気になる!」「シオン君、もっと動揺して!」など、感想をいただけると励みになります! ぜひ【評価】や【ブクマ】で応援よろしくお願いします!

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