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第42話 修復の道標と、見えない壁の向こう

いつもお読みいただきありがとうございます! 修復の力に目覚めたロア。ただ壊すだけだった「お掃除」が、ここから新たな形を見せます。 真・宇宙の奥深く、見えない中枢コアへの道が切り拓かれる熱い展開です!

 修復の光が奔る。


 真・宇宙の暗い星屑の海。

 次々と襲い来る黒いバグの群れに対し、ロアの動きはもはやただの子供の乱暴なスイングではなかった。

 ハンマーのあご(剥離)でバグの装甲を引っ剥がし、ひるんだ隙に、ピッケルの先端(修復)で対象のコードを静かに叩く。


 ――チンッ!


 澄んだ硬質な音が空間に響くたび醜悪な化け物の姿をしていたバグが、温かいオレンジ色の光の粒子へと戻り周囲の空間へ溶け込んでいく。消滅させるのではない、本来の正しいコードとして世界に還しているのだ。


「すげえな……。あいつが叩くたびに、このイカレた空間が少しずつ呼吸しやすくなっていく気がするぜ」


 ラグが大剣で牽制しながら、呆れたように、だが頼もしげに笑った。


「ええ。単なる力の乱反射じゃなくなった。ロアは今、この世界の乱れた糸を一本ずつ解いて、結び直しているのよ」


 ノエルもまた、後方から支援の光弾を放ちながら頷く。


「……前方のバグ群、消滅(正常化)を確認。ロア、あなたのその修復の力、やはりシステムにとって完全に計算外の挙動です」


 無表情のナハトが、目の前に浮かぶホログラムの数値を読み上げながら言った。


「えへへ。爺ちゃんが遺してくれたお掃除道具なんだから、これくらいできなきゃね!」


 ロアは汗を拭い、ピッケルをくるりと回して腰のベルトへと収めた。


「調子乗ってると足元すくわれるぞ、掃除屋!」


 ロアの肩に乗った通信ドローン、ルカくん2号から声が飛んだ。


「俺のモニターじゃお前らが進めば進むほど、前方の空間密度がいかれてきてる。バグの密度どころか空間そのものが迷路みたいに書き換わってやがるんだ。このまま闇雲に飛んでたら、永遠に同じ場所をループする羽目になるぞ!」


「ループ? 迷子になっちゃうの?」


「……ルカの言う通りです」ナハトが同意した。


「この真・宇宙の深層は、中枢コア――つまりシオンのいる領域を隠蔽するための防壁プロトコルが作動しています。物理的な座標が存在せず、正常なコードを辿らなければ、決して中枢の扉へは到達できません」


「じゃあ、どうすればいいの?ナハトには帰り道、分かる?」


「私の権限は既に剥奪されています、中枢へのルートを演算することは……不可能です」


 ナハトがわずかに視線を伏せる、かつてはシステムの一部であった彼女にとって、それは己の無力さを突きつけられる事実だった。


 しかし、ロアは全く気にした様子もなく、にっと笑った。


「そっか。分かんないなら、作ればいいだけだよね!」


「……作る?」


「うん! ルカ! この辺で一番、コード?がぐちゃぐちゃに絡まってる場所ってどこ!?」


「は? ぐちゃぐちゃって……あー、待て、お前らから見て右斜め上、距離にして三百メートル。そこに極端にエラーが圧縮された結節点がある。だが、そこに触れたらバグの大群をご破算で引き寄せるぞ!」


「そこでいい! ラグ、ノエル! ちょっとだけ道開けて!」


「おうよ!!」


「無茶苦茶ね、相変わらず!」


 三人の阿吽の呼吸、ラグが旋風のように大剣を振り回してバグの群れを弾き飛ばし、ノエルが灼熱の炎で空間の視界を確保する。

 その文字通りの火を吹く道を、ロアが弾丸のように飛び抜けた。


 ロアが到達した先には、ルカの言う通り、星屑の光すらも吸い込むような巨大な黒い歪みが渦巻いていた。それは中枢を隠すための、巨大なエラーのダミープログラムの起点だった。


「ここが、一番痛がってる……!」


 ロアの黄金色の瞳が、歪みの中心を正確に捉える。彼は迷いなくハンマーピッケルの修復の刃を、その巨大な黒い渦の中心へと全力で突き立てた。


 ――ガキィィィィィィィンッ!!!!


 これまでで最大の、世界中を共鳴させるような打撃音。ハンマーから溢れ出した強烈なオレンジ色の光が、黒い渦の内部へとネットワークのように駆け巡る。ロアは自分の言葉で、狂ったシステムに正しい形を教え込むように刻み続けた。


「隠さなくたっていい! もっと、みんなが歩きやすい道になれ!!」


 バキンッ!


 ガラスが砕けるような音と共に、黒い渦が弾け飛んだ、そしてその奥から現れたのは――。


「……道、だ」


 ノエルが呆然と呟く、無造作に散らばっていた星屑がロアの修復の光を帯びて一直線に整列し、暗闇の奥深くへと続く黄金の道なき道を形作っていた。それは中枢を隠すバグを解きほぐし、システムが元々持っていた正しい接続ルートを物理的に現出させたものだった。


「……ハッ。デタラメにも程があるぜ。だが、俺のスキャナーもその光の道の奥に、巨大なコアの存在を捉えた。間違いない、それが大当たりのルートだ!」


 ルカの声が興奮に上ずっている。


「よしっ! これで迷子にならないね!」


 ロアがドヤ顔で振り返る。


「……計算外。規格外。想定外」


 ナハトがぶつぶつと呟きながら、それでもその目に、微かな安堵と期待のようなものを宿していた。


「……ええ。その道を進めば、きっと中枢へ辿り着けます」


 しかし、世界の防衛システムも黙ってはいない。黄金の道が開かれた瞬間、その道の両サイドからこれまでとはレベルの違う白く発光する無機質な騎士が何十体も実体化し始めたのだ。

 シオンの直属、中枢領域を守護する高位防衛プログラム。


「チッ……。お出迎えのレベルが跳ね上がりやがったな」  ラグが大剣を構え直す。


「ロア! ここは私たちでなんとかする! あなたはその道を塞がれないように、先へ進みなさい!」     


 ノエルが魔力を極限まで高め、両手に圧倒的な熱量の炎をまとわせた。


「ラグ! ノエル……!」


「行けよ、お掃除屋。お前の背中くらい、俺たちがいくらでも守ってやらぁ!」


 仲間の力強い声に、ロアはこくりと頷いた。


「うん! 任せたよ!」


 ロアはハンマーピッケルをしっかりと握り締め黄金の道を真っ直ぐに駆け出した、見えない中枢の壁。シオンの待つ、世界の本当の中心に向かって。


(第42話 終わり)

ロアの修復の力が、単なるバグ退治から、ついに「世界に道を作る(再結線する)」レベルへと昇華しました! ラグとノエルの頼もしい後衛、そしてロアの迷いのない前進。 いよいよ次回から、中枢領域へと突入し、シオンの配下との激戦が予想されます。


「続きが熱い!」「修復の力、いいぞ!」と思っていただけましたら、 ぜひ下の**【ブックマーク登録】や【ポイント評価】**で応援をよろしくお願いいたします!

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