第37話 地上の地獄と、諦めないエンジン
いつもお読みいただきありがとうございます! 今回は視点が地上に戻ります。ロアたちが真・宇宙で苦戦している裏で、地上のセレステとゼニスは崩壊の瀬戸際に立っていました。 ルカ、アルゴス、フィオナそれぞれの意地の見せどころです!
ゼニスの地下指令室。何十面もあるはずのモニター画面の半分以上が砂嵐――エラーコードで埋め尽くされ、残りのモニターにもリアルタイムで更新される被害情報が洪水のように流れ込んでいた。
「……バグ出現ポイント、また三箇所増えた。っていうか、もう数えるの無意味じゃねえかコレ!」
ルカが舌打ちをして、頭を机に打ちつけそうになるのをギリギリで止める。指令室に漂う煙草とオイルの混じった臭い。飲みかけのインスタントコーヒーは完全に冷め切っている。最後にちゃんと飯を食ったのがいつだったか、もはや記憶にない。
「兄さん、水分くらい取って」
弟のテオが脇からズイとコップを突き出してくる。ルカはそれを受け取りながら、一瞬も画面から視線を外さなかった。
「ありがとな。……で、現状だが」
ルカはオペレーター席に広げた自作の手書き地図を叩く。赤いバツ印が、セレステとゼニスの地図を覆い尽くすように増殖している。
「上から降ってきたバグがそのまま市街地に定着しはじめてる。最初はデータ的な撹乱だけだったが、今は物理的に街の構造をベースから書き換えはじめてやがる。建物の壁がコードに戻ったり、地面から意味不明な幾何学模様が湧いて出たりな」
「……それって、街が消えていくってこと?」
「まあそういうこった。世界の書き換えが本格的に始まってる。ロアたちが向こうで喧嘩中だから、そのしわ寄せが全部こっちに来てる」
「……ロアは、大丈夫かな」
テオが不安そうに呟く。ルカはコップの水を一口飲んで、少しだけ表情を和らげた。
「あいつが大丈夫じゃなかったことなんて、今まであったか?」
「……うん。ないね」
「だろ。だから俺らは俺らの仕事をする」
◇
その頃。 セレステの城壁外縁。
「次の群れが来るぞ! 盾を構えろ!!」
アルゴスの大声が、ゴウゴウと鳴り響く轟音にも負けずに響き渡った。
城壁の上では、神聖騎士団の騎士たちが一列に並んで巨大な魔力盾を展開している。迫ってくるのは、これまでのバグとは形が変わっていた。以前の黒い这い回る塊ではなく、鳥の群れのような形の小型バグが、数千の規模で一斉に突進してくる。
「魔術砲撃班、第一射!」
フィオナの号令と同時に、後方に並んだ魔術師たちが一斉に砲撃魔術を撃ち込んだ。爆発と光の中でバグが幾つも弾けるが、次の瞬間には爆発した数の倍以上のバグが自己複製で出現する。
「……数が全然減らない。魔法で消しても意味がないのか」
アルゴスが苦い顔で呟いた。
「物理的な質量で叩き潰すしかないか……だが俺一人では」
「アルゴスくん!」 フィオナが走ってくる。
「ゼニスのルカ殿から通信が。ハッキングで操作している重機の群れを城壁まで展開する。物理的にバグを押し潰す準備をしてほしいと」
「……あの天才ガキは今もそんなことをやってるのか」
アルゴスは感心したように鼻を鳴らした。
「つなげてくれ」
(代37話終わり)
地上の防衛戦、いかがでしたでしょうか! ルカとアルゴスの「鉄と魔法の共闘」、楽しんでいただけたら嬉しいです。
そして今回、ルカの設計コードに「説明のつかない既視感」が生まれています。 これが一体何を意味するのか……は、まだずっと先でゆっくりと明かされます。
次回は再び真・宇宙に戻り、ナハトが重大な告白をするシーンです! 【ブックマーク登録】や【ポイント評価】での応援、よろしくお願いします!




