表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/72

第35話 中枢(コア)の大扉と、白き統制者

いつもお読みいただきありがとうございます! 真・宇宙の最深部、ついに世界の理のすべてが格納された第0領域の扉へ到達します。 そこでロアたちを待っていた「真っ白な管理者」とは……?



 ノエルの放った絶対業火によって凍結システムが崩壊し、ロアたちはついに真・宇宙の最深部へと到達した。


 そこは、星屑の海の中で唯一、完全に無音の閉鎖空間だった。宙に浮く巨大な白銀の扉。それが、世界の理のすべてが格納されている場所――第0領域への入り口だった。


「……着いたね。ここを綺麗にお掃除すれば、世界が元通りになるんでしょ?」


 ロアが黄金のハンマーピッケルを右手に提げ、大扉を見上げる。その後ろでは、ノエルを背負ったラグが警戒するように周囲を睨みつけていた。


 ――扉を開けさせてはならない。


 ナハトがロアの前に立とうとした、その直前。巨大な白銀の扉の前に、一枚の真っ白な羽根が舞い落ちた。


 羽根が床のガラスに触れた瞬間、空間そのものが波紋のように揺らぎ、そこから一人の青年が音もなく現れた。完璧に左右対称の、隙のない白装束。一切の感情を剥ぎ取られたような、透き通った白い瞳。その後ろには、機械仕掛けの天使のような6枚の白い光の翼が展開している。


「……管理者アドミン・シオン」


 ナハトが、これまでで最も硬い声でその名を呼んだ。


「……ご苦労だった、観測補助プログラム・ナハト。君の誘導のおかげで、これ以上システムを損壊させることなく、ウィルス(彼ら)をこの閉鎖空間に誘導できた」


 シオンと呼ばれた青年は、冷徹な視線をロアたちへと向けたまま、淡々と告げる。


「あんたが、この世界のてっぺんに踏ん反り返ってるボスってワケか。随分と白くて綺麗じゃねえか」  


 ラグが大剣を構え直す。


「……いいえ。私はボスなどという人間的な階級図には存在しない」


 シオンは静かに翼を広げた。


「私は、ただシステムの正常稼働を維持するための規律そのもの。かつて、不完全な感情バグを持った人間たちを見限り、世界をコード化することで永遠の静寂へと導こうとした――ガレンと共にこのシステムを設計した者だ」


「おいノエル! ラグのおっさん! 気をつけろ!」


 ロアの肩に乗った通信ドローン・ルカくん2号から、ルカの血相を変えた叫びが響く。


「そいつのデータ構造……これまでの防衛機構なんかと桁が違う! そいつ自身が、世界のルールそのものの塊だ!」


「……その通り。私は全情報の削除デリートという特権を持つ」


 シオンが右手を軽く掲げると、真・宇宙の空間そのものが歪み、ルカくん2号の通信が強制的にノイズの奥底へと遮断された。


「……ルカの声が切れた……」  ロアが眉をしかめる。


「君たちのように不規則な感情――バグによって動くデータは、もうこの世界には不要だ」


 シオンの白い瞳がロアを捉える。


「ガレンは甘かった。彼はバグを温かさと呼び、システムの外へと逃げた。だが、不完全な温かさなど、いつか世界を自壊させるだけの熱病に過ぎない。君が持つ剥離の力も、いずれシステムを崩壊させる。だからここで、すべてを真っ白に初期化する」


 シオンが無言で指を弾く。


 ――次の瞬間。


 ラグが咄嗟に振り上げた大剣の刃が、空間ごと削り取られ、無音のまま消滅した。


「なっ……!?」


 ラグが驚愕の声を上げる。斬られたのではない。世界からその部分のデータが存在しなかったことにされたのだ。


「無駄だ。私の削除は、防御も回避も不可能。物理的な破壊ではなく、存在証明の否定だからだ」  


シオンが一歩、ロアへと近づく。


「……待ってよ」


 ロアが、今まで見せたことのない、真剣な顔でシオンを見据えていた。


「お兄ちゃんのやってること、ちっとも綺麗じゃないよ。ただ全部見えなくして、なかったことにしてるだけじゃん。そんなの、ゴミを絨毯の下に隠してるのと同じだよ」


「……何?」  シオンの眉が、わずかにピクリと動いた。


「じいちゃんが言ってただろ?」


 ロアはハンマーピッケルを両手でしっかりと握りしめる。


「掃除っていうのは、ただ全部壊して真っ白にすることじゃない。汚れたところだけを剥がして、元のみんなの温かい形に直すことだって!」


「……不合理なバグの妄言だ」


 シオンが右手をロアへと突き出す。


「初期化を実行する」


 シオンの手から放たれる、世界すべてを白紙に戻すための最高権限の光。

 だが、その光がロアを包み込むより早く。


「――よぉぉぉぉしっ!!」


 ロアは一切の恐怖もなく、純粋な掃除係としての誇りだけを胸に、真っ向からハンマーピッケルを振り抜いた。削除デリートの光と、剥離リワイヤリングの黄金の軌跡が、真・宇宙の中心で激突する。


(第35話終わり)

ついに姿を現した管理者・シオン。「すべてを白紙にする特権(削除)」に対して「汚れたところを直す特権(剥離)」が真っ向から激突します! 次回からも目が離せない展開が続きます。


ここまでお読みいただき本当にありがとうございます! ぜひ下部より**【ブックマーク登録】や【ポイント評価】**で応援のほど、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ