第28話 監視者の塔、銀翼の迎撃
お読みいただきありがとうございます! 天井はすぐそこ……。 しかし、世界の「上層」を守る防衛部隊が、かつてない規模でロアたちの前に立ちふさがります。 魔法が「エラー」として処理される中、ラグとノエルが導き出した究極の連携とは? 空中を舞台にした、ハイスピードな迎撃戦が展開されます。
雲海を抜け、垂直の壁をさらに数千メートル登った先。
一行の前に現れたのは、もはや物質的な塔ではなかった。
それは無数の銀色の幾何学体が、目に見えない磁場で繋がり、脈動し続ける浮遊する防衛線。
塔の中央からは、まるで地上の空というモニターを投影するための巨大なレンズのような構造が、不気味に空の頂を睨んでいる。
「……あれが、……監視者の本拠地……!?」
ノエルが、自身の魔導出力がみるみる低下していくのを数値で感じていた。
この高度では、世界の理の密度があまりに高すぎて、人間が放つ魔法はノイズとして即座に打ち消されてしまうのだ。
「……ターゲット確定。……世界の保全優先。……不法ユーザーの全データを一括削除します」
銀の鳥たちの親玉とも呼べる、巨大な銀翼の防衛機が姿を現した。
それは巨大な鏡の翼を持ち、太陽の光を消去のレーザーへと変換して降り注がせる。
ズドォォォォンッ!!
ソリの直前を、光の柱が通過した。 触れた空間ごと白紙に戻り、空気そのものが消滅したことで発生した真空が、一行を激しく揺さぶる。
「……っ。ラグ、ノエル! ここからは、僕の掃除だけじゃ足りないかもしれない!」
ロアが、重力の消えかけた空中でハンマーピッケルを構えた。
だが、回避と防御に手一杯で、敵の懐へ飛び込む隙がない。
「……フッ。言ってくれるな、ロア」
ラグが身の丈ほどもある大剣を肩に担ぎ直し、不敵に笑った。
彼の目には、単なる雇われ仕事としてではなく、自分を仲間として受け入れてくれた奇妙な二人を守るという、傭兵の意地が宿っている。
「ノエル、君の魔力を……この大剣に、流し込んでくれるか?」
「……正気? ここじゃ魔法はエラーで消されるのよ!」
「ああ、知っている。だから、消される前に私の武器ごとに叩き込むんだ! 物理的な質量を伴う一撃なら、情報の壁だって強引に突き破れる!」
ノエルがハッとなり、ゴーグルを指先で弾いた。
[Logic_Bypass: User_Data_Injection]
「……わかったわよ、この脳筋用心棒! ……でも死なないで! 私、まだあなたに言いたいことが山ほどあるんだから!」
ノエルが残った全魔力を練り上げ、それを座標ではなくラグの大剣へと直接流し込んだ。
[Object: Lag - Status: Overclocked_by_Noel]
「……うぉぉぉぉぉぉッ!!」
ラグの全身から、青白く、けれど温かな光の膜が溢れ出した。
彼は垂直の壁を蹴り、重力を捨てて真上へと落下した。
銀の翼たちが放つ消去レーザー。ラグはその光の海を、鍛え上げられた戦士の直感で紙一重に潜り抜け、最短距離で巨大防衛機へと肉薄する。
「……お前の正論は、もう聞き飽きたんだよ!」
ラグの大剣が、銀翼の核を貫いた。 その衝撃で生まれたわずかな接続エラー。
「今だよ、ロア! 剥がしてっ!!」
ノエルの叫びに反応し、ロアが空中を蹴った。
ラグが切り開いた一瞬の綻び目がけて、黄金のハンマーピッケルが振り下ろされる。
「——掃除完了!!」
ガガガガッ、と。 銀色の塔の一部が、まるで古びた石膏のように剥がれ落ち、空の裏側を隠すモニターが激しく明滅し始めた。
(第28話終わり)
第28話、お読みいただきありがとうございました! アルゴスとノエルの「無茶な連携」が、鉄壁の防衛線に風穴を開けました。戦友としての絆が深まる熱いバトル、楽しんでいただけたでしょうか。
続きが気になった方は、ぜひ【ブックマーク登録】や下の【☆☆☆☆☆】から評価をいただけますと、執筆の大きな励みになります!
いよいよ次章、世界の「空」が剥がれます。 第29話「剥がれる蒼穹、モニターの裏側」。 ロアが見た「空の真実」とは? 次回、衝撃の真実にご期待ください!




