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第27話 雲海の墓標、捨てられた記憶

お読みいただきありがとうございます! 重力が狂う垂直の壁を登るロアたち。 雲の上に広がっていたのは、美しい世界……ではなく、世界の「捨てられた残骸」でした。 かつて存在し、そして「消去」された別の歴史。 ロアのハンマーピッケルは、悲しい記憶をどう導くのでしょうか。

「……ねえ。あれ、セレステの時計塔……じゃない?」


 垂直の壁を登り、分厚い雲海を突き抜けた先。

 ノエルが震える指で差したのは、空中に浮遊する巨大な瓦礫の山だった。

 そこには、彼女たちが住んでいた学園都市セレステと酷似した、けれどどこか古臭く、あちこちがノイズのように欠落した街の残骸が、まるで墓標のように漂っていた。


「……計算不能。……地理データが重複しています。……ですが、この建造物は現存するセレステより300年以上古い記述言語で構成されています」


 ドローン越しのルカの声も、かつてない困惑に揺れている。

 そこは、世界の管理システムがアップデートの際にデリートし、ゴミ箱へと放り込んだ古いバージョンの世界のバックアップデータだった。


「……あ。……あぁ……」


 瓦礫の間から、半透明の人影がふらふらと這い出してきた。

 それはかつての住人たちの残留思念。いや、消去しきれなかったデータの端切れだ。

 彼らは自分たちが消されたことにも気づかず、失われた時間のパズルを合わせようと、虚空を虚ろに手繰っている。


「……お掃除して。……僕たちを、……白く、戻して……」


 ノイズまじりの声が、ロアの耳に届く。  彼らはあまりに長い間ゴミ箱の中に放置され、自分たちの存在理由さえも腐食し始めていた。


「ロア、行っちゃダメ! あれに触れたら、あなたまで過去のデータとして飲み込まれちゃうわ!」


 ノエルが制止するが、ロアは迷うことなく、瓦礫の広場へと降り立った。

 黄金のハンマーピッケルを握る手が、いつもより少しだけ震えている。


「……おじいちゃん。これ、掃除できるかな?」


 ロアが見つめる先には、一つの小さな家があった。

 そこには、今まさに消えかかっている母親と、その腕の中で泣くことさえ忘れた子供の姿がある。  彼らは世界の効率のために、無駄な旧データとして切り捨てられたのだ。


「……イレギュラーを検知。……アーカイブ・クリーンアップを増幅します」


 上空から、先ほど垂直の壁で遭遇した監視者たちが、今度は何百という群れをなして飛来した。  彼らにとって、この墓標に触れるロアこそが、最優先でデリートすべき最新のバグに他ならない。


「……どいて。……今、その人たちのところに行かなきゃいけないんだ!」


 ロアの背後で、ラグが咆哮を上げながら重厚な大剣を振るい、ノエルが絶望的な物量の監視者に向けて、燃え盛る魔導の炎を叩きつける。


「行って、ロア! 私たちが時間を稼ぐ! ……その人たちを、……せめて綺麗にしてあげて!」


 ノエルの叫びに背中を押され、ロアは走り出した。

 黄金のハンマーピッケルが、過去の亡霊たちの悲鳴を切り裂き、世界の捨てられた記憶を強引に剥がし取っていく。


 それは破壊ではない。

 存在したという証明を、世界の記憶ログに正しく書き戻すための、魂のメンテナンス。


「……よし。……掃除開始!」


 ロアの一撃が瓦礫を叩いた瞬間、墓標のような街に、かつての日差しのような温かな光が、一瞬だけ蘇った。


(第27話終わり)

第27話、お読みいただきありがとうございました。 世界の「ゴミ捨て場」で出会った、かつての世界の住人たち。ロアが彼らを「お掃除」することで、世界の不条理な構造が少しずつ剥き出しになっていきます。


もしこのお話が少しでも心に響きましたら、ぜひブックマークや評価、感想をいただけますと非常に励みになります!


次回は第28話「監視者の塔、銀翼の迎撃」。 本格化するシステムの反撃に、ラグとノエルが全力を尽くします! これからも応援よろしくお願いします!

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