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お父様の試験2

父親視点


 とうとうこの日、クリスと戦う日が来た。


 こっそりと学校の模擬戦を見た限りでは、まだまだ俺の負ける相手ではないが、あの自信のある様子からして隠し玉の一つや二つはあるんだろうな。


 おもしろい。


 昼飯は、アンジーが作ってくれたステーキを、一切れだけ食べた。あんまり食うと動きづらくなるからな。

 帰ったら、新作のパインサラダを用意しておいてくれるらしい


 良い嫁さんを貰って俺は幸せだな。



 さて、ここで見世物として戦うのは珍しくはないが……今日は随分と盛況だな。


「娘さんを私に下さいぃぃぃ!」


 あっ!? 今の誰だ?

 その話しは、俺を倒してからだろーが!


 まぁいい。うちの娘はかわいいからな。

 懸想する程度はしょうがない。

 クリスの同級生がピーチク、パーチク言っているのもしょうがない。


「くんかくんかしたいぉー!」


 よし。そこの眼鏡だな。

 よーく、お前の気持ちはわかったぜ。

 後でお話しをしような。肉体言語でな。

 

 つーか、クリスも大分苛立ってやがるな。

 仕方ない、何か声をかけてリラックスさせてやるか。


「まぁ、男が集まった時の猥談はこんなもんだ」


 ……何か間違えたらしい。クリスの怒気が殺気に変わった。

 しかも明らかに俺に向いているぜ!

 これは話題を変えなければ……。


「レイモンド様。前置きはこれぐらいで、ルールの説明をお願いします」


 頼んますわ。


「うむ。勝敗の決め方は単純。お互い全力で模擬戦を行い、どちらかが、負けを認めるか、私が戦闘不能と判断するまでとする。それから念の為に言うが最上級、並びに伝説級の魔法は禁止だ」


 流石に使えないだろ、そんな物。

 いや、クリスはもしかして使えたりして……。


「何か双方発言したい事はあるか?」

「では私から。――お父様大剣は用意していますか?」

「ほぉー」


 言ってくれるね。


「あぁ。用意はしてみたのだが、刃引きしているといっても大剣だからなぁ。娘のおいたを躾けるには……いささか過剰すぎやしないかい?」


 訓練用のロングソードをこれ見よがしに振ると、殺気が一段と強くなる。

 うぅ、そんなに怒ったらお父様泣いちゃう。


「では、その判断を後悔させてあげましょう。お父様……いいえ、クサレ親父!」


「よろしい、では双方準備は良いな」


 開始の合図を前に魔力の集中を行う。

 クリスの奴は、随分と複雑な魔力を練っていやがる。

 なんだこれは?


「始めぃ!」

「「パワード!!」」


 まずはセオリー通り、お互いに土と火の混合魔法パワードでの身体強化。

 何か複雑な魔力操作を行っていたクリスも同様だ。


 彼我の距離は10メートル。


 クリスは身体強化魔法を2種類とも使えるはずだが、両方使ってもスピード以外は俺が上。片方なら尚更だ。

 まっすぐ突っ込んで、切りかかる。


「……?」


 おかしいな、下がりながら次の強化魔法を使うかと思っていたが……。

 複雑な魔力操作は継続中。だが、関係ない。俺の剣が届くのが先だ!

 そう思った瞬間目の前に、魔法の発動光。


「まじか!」


 目の前に現れる、魔法の水の壁。

 ウォータースクリーンだと!? 無詠唱、いや自動魔法って奴か?

 初級魔法とはいえ、流石だな。


 ――だが甘い! このまま行かせて貰うぜ。


「だりゃ!」


 水の壁を突き破る。少しパワードで作ったエネルギーが消され、質量が流された。

 おまけに衝突の衝撃で少し勢いが落ちちまった。


 が、まだ俺の剣が届くのが先と見た。


 妙だ。まだ魔力操作をしているし、下がってもいない。

 ……考えるのはやめだ。どうするんだよ、クリス。


「チェストぉぉ!」

「アクセル!!」


 ――何ぃ!

 二つ目の強化魔法を使うと同時に、後ろへ下がりやがった。

 こちらの攻撃は空振りに終わり、その隙に数歩下がられる。


 だがお前は後退、俺は前進。

 この速度差はどうするよ?

 後二歩、一歩――


「オラァ!」


 必中の一撃を放つ。が、その瞬間逆にこちらが驚愕する事になる。


 クレイガードだと!? しかもこちらの攻撃の進行方向をきっちりと逸らしてきやがる角度だ。

 おいおい、魔法の発動が早すぎるだろ。

 始めからこの展開が狙いだったのか。


 だがな!!


「舐めんなよ!」

「ツッ!!」


 強引に魔法を叩き割る。

 どうにか衝突コースへ修正。

 避けられるか!?


「ちっ!」

「はぁぁ!」


 当然の如く、姿勢を沈めて回避される。続けて抜剣と同時に振りぬかれる斬撃。


 面白くなってきた!


「うおぉ!」


 僅かに稼いだ時間でなんとか体を傾けて回避。

 それでもクリスはそのまま一回転。って、おい


「せりゃぁ!」

「痛ぅぅ!」


 ちきしょう、痛ぇ!

 回転の勢いのままに放たれた蹴りの直撃を受けて倒れちまった。

 急いで上半身を起こし、クリスの方向を見るとまっすぐに下がってやがる。


「ファイヤージャベリン!」


 高速でこちらへ飛翔する炎の槍。

 半分起こした体を勢いよく反対に倒し、腕の力でバク転をして回避。

 着地と同時に前へ……くそっ!


「もう次が来てるのかよ!?」


 着地際を狙った、炎の矢。

 避ける? ムリだ。

 はじく? いや…



 ドンッ!!



 炎の矢を無視して、前へ。

 痛ぇが、所詮は初級魔法。

 覚悟決めて受ければ耐えられる。

 あの場に留まっていたら、封殺されるだけだからな。


 距離を詰めた俺に対し、こちらに向けていた左手を下し、両手で剣を構えるクリス。


「「はぁぁ!!」」


 ギンッ!!

 鈍い衝突音を放つ互いの一撃。


 突進の勢いそのままの一閃は受け流されたが、お互いに速度が鈍る。

 足を止めての打ち合い。

 スピードは五分、技量も予想を超えて五分。


 だがパワーは俺が上!

 数合打ち合えば徐々に俺が優勢になるが……


 っ! またかよ!

 打ち合いの最中に、再度現れた土の盾。

 今度は剣を流される。


「もらったぁ!」


 体勢を崩したスキに、首を狙った一撃が飛んでくる。

 かろうじて体を捻り回避を試みる。


「グッ!!」


 首は守ったが、肩にくらった。

 痛みと共にもんどり打って倒れてしまう。

 追撃を避けるためそのまま転がり起き上がると、

 再度距離を取られ、左手の掌をこちらへ向けていた。


 が、先ほどの様に魔法が飛んでくる様子は無い。



「お父様。大剣の用意をお願いします」



 ……びっくりしたぜ。本当に強くなった。


 親としてはここで負けを宣言してやっても良いのだろうが。

 本気で戦ってみたくなった。



 なーにオトコ同士なら当然だ。





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