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まおうが魔王になる物語  作者: キクメン


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第25話

 門を通過して城下町に入り、城の前の広場にてリザロ達を待機させ、私とジャンヌと傭兵隊長で地方領主でもあるアルカンと側近の2名だけで武装を仲間に預けてから城内に入った。


「ご配慮感謝申し上げます」


 案内人は深々と頭を下げて礼を述べて、私達は案内人の後に続いて城の中へと入って行った。


 さすが国王の城というだけあって城内はとても広く大変豪華で、王の間に到着するまで5分もかかった。


 王の間の両扉は既に開かれていたが、その扉は高さが5メートル程もあり、扉全体に施された装飾や彫刻は実に見事なものだった。


 紀元前末期でもここまでの物を作り出す事が出来る人間はやはりいずれこの世界の頂点に君臨する存在であるという事を思い知らされた。


 王の間に入ると、玉座に座っていた王は立ち上がって、一段高い壇上から足早に降りてきて、なんと私の前で片膝をついて頭を下げた。


「新たな魔王よ、此度の救援、真に感謝する、これまでこちらから何の返答もしなかった無礼、どうかご容赦頂きたい」


「頭をお上げ下さい王よ、こちらこそ一方的に貴国に対して書簡のみを送り続けた非礼、お許し頂きたい」


「おおっ! 新たな魔王はなんと寛容なお方なのだ!」


 あらかじめ書簡にて伝えていた通り、まずは我々の救援を実際に実行して見せる事と、互いに初顔合わせをする事を第一義としており、いきなり深夜に現れて敵を撃退した後で会談を行うというのはあまりにも性急過ぎて、相手にとってはすぐに決められる事などほとんどないだろうと考えていたので、今日のところはいったん戻り、3日後に改めて訪問する事にしていた。


 ただ、アルカンと側近達はこの場に残り、王に対してこちら側の情報をほぼ全て開示する許可すら与えて残ってもらった。


 そうして我々は王自らの見送りのもと、世界の果てへと戻って行った。


 魔王となった私もジャンヌも仲間の魔物達も全く疲労していなかったが、それでも一応休める時は休む事にしているので軽く仮眠をとった。


 翌朝、透明ゴキブリ人間達が敵国の野営地から入手したアイテムを確認すると、まず小麦袋を多く確保したのは嬉しかった。また、黒コショウと唐辛子に似たスパイスもあったのには喜んだ。


 金銀財宝の類には興味がないので敢えてそのままにしておくよう命じていて、それよりも敵国の地図と各地に配置されている軍の規模が記載されている書類を持ち帰ってきたのは僥倖だった。


 それを見るとかなり多くの場所に分散配置しているのが分かり、パッと見ただけでも30か所以上もあり、少なく見積もってもその総数は20万人にも及ぶことが分かったが、ジャンヌによるととてもそれだけの人数の食料と水を確保し続ける事は出来ないとの事で、全ての箇所において常にその数の軍隊が駐留してはいないとの事だった。


 それでも一国の軍隊だけでこの規模の兵力があるという事に改めて我々は厳しい現実を思い知る事になり、そんな状況で唯一私にとって良い事があるとすれば仲間の魔物達が、やはり私が打ち立てた人間達との共存しか我らが生き続ける道はないと再認識してくれた事だった。


 獣人達が我等もリザードマン達のように尻尾を切って少しでも人間のようになった方が良いだろうかと聞いてきたので、そこまでしなくても良いと言っておいた。


 ちなみにリザードマン達の尻尾はこの後数年で元に戻るそうで、切り落とした時も特に痛みはなかったそうだ。ただ、いつもあるものがないのでバランス感覚の違和感に慣れるのに少し時間がかかったとの事だった。現実世界にはトカゲの尻尾切りというのがあるがリザードマン達も同じなんだなぁと感心してしまった。


 ジャンヌの考えでは、今回勝ち過ぎない程度に勝利した事は上々の出来栄えで、敵が再侵攻してくるまでには兵士の補充に指揮官の任命に兵站の準備を行う必要があるので、少なくともひと月はかかるだろうとの事だった。


 また、援助した国は他国と比べてどうしても手に入れたい重要資源があるわけでもないので、急いで部隊を再編成して派兵する事はないだろうとジャンヌは考えていた。


 そもそもアルカン達が地方領主でもあるのに傭兵稼業を営んでいた事からも、あまり豊富な資源がなかった事を裏付けていた。


 一方アルカン達は助力した国テルジアの王フェルペ3世とこれまでの経緯とこれからの方針について協議を行っていた。


 これまで王の居城のバルコニーに送り届けてた書簡には我々は長い時間をかけて人間との共存を望む方針に変更する旨を記載していて、人間達の大陸に侵攻する事はないと私の署名と血判入りで宣誓した書も送っていた。また、助力した見返りとして、我等との交易と同盟国への宣伝をして欲しい旨を記載していた。


 こうした書簡の内容についてはアルカンにも教えていて、アルカンにはこちらの情勢を全て王に話しても構わないと伝えてあるので、アルカンは隠し事なしで正直に全てフェルペ王に話した。


「……、なるほど……、今度の魔王がこれまでとまるで違うように見受けられたのはそうした背景があったからなのか……」


「ですが、それは我等を油断させ、密かに力を蓄えるための時間稼ぎかも知れませんぞ」


「うむ、だがその時間は相当長くかかるだろう、何せ今や魔物達は100にも満たない数しかいないのだからな」


「この三ヶ月もの間、我々は魔王と魔物達と共に暮らしてきましたが、とても我等の知っている魔物達とは思えない程に理性的で親切でした、また驚くべきことに魔王は自ら料理を行い、その腕前は王室料理人をも凌ぐほどの腕前でした」


「なにっ!? 魔王自ら料理!? それも王室料理人をも凌ぐ腕前だと!?」


「はい、見た事もない華やかな細工を施した美しい料理で、味の方もこれまで食べた事のない大変美味なものでした」


「し、信じられん……」


「こうした物言いが適しているかどうか分かりませんが、なんというか……、新たな魔王はまるで品の良い人間のようです、何故か魔王はまったく上からの命令口調を使わず、配下の者達に対しても常に丁寧な言葉遣いをするのです」


「うーむ……、一体魔王と魔物達に何があったというのか……」


「これは推測に過ぎませんが、壊滅的なまでに敗北した事が影響しているのかも知れませんな」


「分からん……、分からんがやはり明後日の会談で直に会って話しをしてみて、新たな魔王がどういう人物なのかこの目で見極めたい」


 フェルペは魔王の事を人物と言ったところで少し言い淀んだが、もう一度人物と言った。


 そして会談の日がやってきて、私はマンモスの極上の部位の肉や特製ソースや酒などを持って、王の居城へと向かった。もちろん会談の後には私自ら料理を披露するつもりだ。


 私はこの日のためにクモの糸で編んだ白い調理服を着こんでいて、禍々しい印象を与える素肌は隠していた。もちろん靴もしっかり履いていて、これはクロゲータの皮をなめして作った革靴である。


 食材を運んでくれた避難民の人達以外で、私の付き添い人はジャンヌと魔法人3人で、こちらも皆クモの糸で編んだ白いドレスを着込んでおり、皆容姿が極めて良いだけに、まるで女神が勢揃いしたかのようだった。


 城へと到着すると先日と違って、今日は正装に身を包んだ人達に迎えられ、さらに王自らも正面玄関に出迎えに来てくれていた。

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