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まおうが魔王になる物語  作者: キクメン


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第20話

 その後私は仲間達にジャンヌを紹介し、私の力で彼女を魅了し完全に私の配下として生涯忠誠を誓う存在になったと言うと、誰一人疑うことなく私を信じてくれて、これで人間達の貴重な情報を得る事が出来るという事で皆喜んでくれた。


 ジャンヌは早速クモの糸で編んだ服を着てその上にマントを羽織り、これまで来ていたみすぼらしい囚人服は血の付いた包帯と共に海岸から少し離れたところにある崩れかけた砦跡に置いて、死を偽装した。


 さらにジャンヌは食事と温泉にとても感激して喜び、まるで高級旅館のようだと言って満足してくれた。


 私はジャンヌに料理の事や食材や調味料の事を聞くと、確かに美味しい店はあるにはあるが、私達が作った料理に遠く及ばない店の方が多いとの事だった。調味料については大陸の南東地域が食文化が進んでいるらしいと教えてくれて、私はいつか行ってみたいと思った。


 それから一週間程かけてこの世界の今の時代の人間達の情報をジャンヌに教えてもらった。


 それによると今の世界人口はおおよそ5千万人程らしく、長期に渡る魔物達との戦闘と大規模飢饉によって半分近くまで減ったとの事だった。


 また、文明的には紀元前の後半頃のようで、まだ火薬が発明されておらず、羅針盤も印刷機も機械式時計もない時代のようだった。


 聡明なジャンヌは私が火薬や蒸気機関などについて説明するのを聞いて、私が未来の別の世界から来た人間だという事が真実だと信じてくれて、他の仲間達は未来を予測する魔王の力だと言って感動していた。


 私は側近達に説明するまでもなく、現在の状況において100人にも満たない我らが5千万人の数を誇る人間相手に勝てる見込みはない事を理解してもらい、仮に我らが数を増やして力を付けてもその頃には人間達は億を超える数になり、武器や道具も遥かに強力な物になる事を説明し、例え我らが一騎当千を誇る強さを持ったとしても人間達を滅ぼすまでには至らず、負けないとしても多くの仲間達の屍を積み重ねていく戦争を未来永劫続けるのは私の望む所ではないと話した。


 そこで私は時間をかけて人間達と共存可能な関係を築く事を生存戦略とする事を掲げた。そのための手段として、人間達の社会が戦乱を迎える事を利用し、弱い国に助力する事で少しずつ人間達の意識を変えさせていく方針を伝えた。


 もちろんそれは今すぐに出来る事ではなく、まずは今まで通り我等は力を付けて数を少しでも増やしていく事に専念するのだと伝えた。


 当然の事ながら側近達はこれまで敵だった人間達と共存する事についてすぐには受け入れられない様子だったが、今の状況で人間達に挑んでも全く勝ち目がない事も、今後数十年程度では5千万を誇る人間達に追いつく事など到底出来ない事は理解しており、この方針に従う他なかった。


 私を除いてわずか44人という絶望的な魔物人口ではあったが、その分不平分子の発生確率は極めて低く、異を唱えて反乱を起こす確率もほぼゼロだという事は私にとっては有利で、これから先長い時間をかけて意識改革を行っていき、新しく生まれてくる仲間達は過去のしがらみを受けずに、人間との共存という新たな道を受け入れてくれるだろうと願い、いや自然に受け入れてもらえるようにしなければならないと私は考え、皆にもそれを伝えた。


 その後透明になったゴキブリ人間達を見破る人間はいるかどうかジャンヌに確認してもらったところ、絶対にいないとは言いきれないが、少なくとも最北の町にはいないのは確実だという事で、真夜中に2匹のゴキブリ人間を最北の町に潜入させる事にした。


 そして翌日の深夜に潜入させたゴキブリ人間を回収して情報を聞き出すと、人間達の様子はジャンヌから色々と教わった通りの状況だというのが分かった。


 ゴキブリ人間達は大胆にも私が喜ぶお土産を持ち帰って来て、調味料や香辛料や酒を持ち帰ってきた。


 ジャンヌもゴキブリ人間達の潜入能力にはとても感心して、彼等に人間達の文字を教えて重要な軍事書類や政治経済に関する重要情報を持ち帰れるようにしてはどうかと提案してきた。


 これには私も大いに賛同して、私自らもジャンヌに文字を教えてもらったが、なんとその様子を見た他の魔物達も全員一緒に文字を学び、さらに算数計算まで学び始めた。ちなみにこれについては私も先生役をつとめた。


 皆いよいよレベルが15になり、側近達は17で私は20になった。そこで肝心のジャンヌのレベルを教えてもらおうと聞いたところ、ジャンヌはレベルとは何かと聞き返してきた。


 私は試しに心の中で『この者の能力を示せ』と念じてみた。


-------------------

ジャンヌ

生命力:20

魔法力:0

持久力:20

攻撃力:15

防御力:10

素早さ:10

【スキル】

気象予測

戦況分析

即断即応

-------------------


 えっ!? レベル表記がない!? それにこんなにも低いのか!? 英雄と言われる存在だとしても人間一人の個の力とはこの程度なのか?


「うん? 気象予測? 何ッ!? そんなのがあるのか!?」


「はい、私は子供の頃から天気が分かるという事で農家の人達の役に立ち、それが知られて徴用されるようになり、やがて戦場に行くようになると戦いの流れも分かるようになりました、その能力が認められて英雄として大軍を指揮するようになったのです」


「なるほど……」


 どうやら人間の英雄というのは、個々の生命力や攻撃力が高い存在ではなく、大軍を率いて勝利に導く能力才能のある人の事を言うようだ。


 そうなると、今度は純粋に個の力が強い戦士や魔法使いの能力が知りたくなった。


 ただ残念ながら私以外、誰一人として自分以外の誰かのレベルを見る事が出来る人材はおらず、それを知るには私自らが赴いて、対象者に近付く必要があった。


 それにしてもまさかここまで個の人間と力の差があったとは思わなかった。


 しかし考えてみれば例え地球の最強格闘家をもってしてもこの世界のマンモスには勝てるはずがなく、人間は圧倒的な科学力を手に入れたからこそ地球上の生物の頂点に辿り着いたのだ。


 まだ紀元前後半のこの時代においては、まさに一匹の魔物が一騎当千の力を持ち、だからこそ数に勝る人間達に挑んでいったというのが今になってようやく実感として理解出来た。


 また人間達はジャンヌのような特別な才能を持つ者を英雄と認識し、戦場の場や闘技大会などで勝利した者をランキングする事で強さを認識していて、誰一人として個の能力を数値化したデータが見える者はいないらしい。


 こうなると我々の生存戦略も大分実現の可能性が高くなった。


 あとはどのタイミングでどのように人間達に近付いていくかという詳細プランを検討する段階に入ってきた。


 定期的にゴキブリ人間を最北の町に潜入させて情報を収集し、文字を覚えたゴキブリ人間達はより詳細な軍事状況や経済状況や周辺の状況を含めた政治的情報を持ってくるようになり、それらは大いに有益なものとなった。


 また、ジャンヌは魔物達の手ほどきを受けて、日々レベルアップを目的とした戦闘訓練や狩りを行い、その結果ジャンヌ本人もとても人間とは思えない程に身体能力が向上したと言って大いに喜んでいた。恐らくこれは私が持つ何らかの力が影響しているのだろう。

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