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まおうが魔王になる物語  作者: キクメン


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第21話

 それからさらに半年が経過して、私がこの世界にて生まれ変わってから一年が過ぎた頃、状況は徐々に変化し始めてきた。


 まずこちら側の変化として、リザードマンの子供が8人、獣人の子供が6人、ゴブリンの子供が10人、ゴキブリ人間の子供が20人誕生し、私とジャンヌを含めた総人口が90人になった。


 ちなみにゴキブリ人間達にはオスメスの区別がなく、単体で子孫を残す事が可能だった。


 レベルアップについては私と側近達は伸び悩み状態が続いたが、新しい子供達とジャンヌの成長は早かった。


 食料事情に関しては全く問題なく、この一年で世界の果てと呼ばれる魔物側の大陸はほぼ全て調査し終えていて、豊富な狩場も沢山発見し、この先人口が数百万人に達したとしても食料不足に陥る事はなさそうだった。


 また、大陸最南端以外の場所から人間達が侵攻してくる可能性を考慮して、大陸の海岸線を一周して調査してみたが、激しい潮流や荒波、そして100メートルを超える高さの断崖絶壁、さらに私の視力をもってしても対岸を確認する事が出来ない程の遠距離という事で、他の場所からの侵攻はまず不可能だという事を確認した。


 実際何百年にも渡って最南端以外からの侵攻がなかった事からもそれは証明されている。まぁこの先数千年後の科学技術が発達した未来においてはその限りではないが……


 それでも東西南北の最果てに転移魔法陣と監視所を設けていて、最南端以外は最低一日一回は獣人達が交代で見回りを行っていた。


 さらに人間達の大陸においても状況は変化していて、人間達の大陸では大きく10区画に分けられていてそれぞれに国があったが、現在は7区画に統合されていたようだった。


 統合と言えば聞こえはいいかもしれないが、実際には支配下に入ったというのが正しく、中でも2つの国は滅ぼされたようだった。


 そのうちの国の一つにジャンヌの故郷も含まれており、ジャンヌは悲しみの涙を流さなかったがとても虚しい気持ちになったと言っていた。


 それから10日程が過ぎたある日の午後、西側の観測所から中型の船を2艘発見し、今にも難破して沈みそうだという知らせが届き、すぐに私と魔法人とジャンヌで駆けつけた。


 すぐに私の超視力で船を確認すると、船には難民と思しき人々が必死に互いにしがみついて荒波に耐えていたが、どう見てもこちらに辿り着く前に海の藻屑と化すように見えた。


 ジャンヌがすぐに状況を分析して即断即決し、彼等を助ける事で我等にとって有利な状況を作り出す事が出来ると言ったので、私自身も正直助けたいと思っていたので、すぐに魔法人達と一緒に船に向かった。


 海岸から飛び立つと思っていた以上に風も強く吹いていて、こんな状況で船を出すとかまるで自殺行為だと思った。それはつまりそれくらい何かに追い込まれていたという事でもあった。


 マジク達に大丈夫かと聞いたが、全員何も問題ないと頼もしい答えが返ってきたので、二手に分かれて私はパッと見て乗員が多そうに見える方の船の船尾を押し、マジクは船首を押しながら進むべき方向を見定めて向きを変えてくれた。


 同様にマジエが別の船の船尾を押して、マジコが船首で船頭を務めていた。


 しかし私達が進んだ先は100メートルを超える断崖絶壁がそびえ立ち、接岸出来る場所などなかったが、それでも私達はその絶壁に近付き、乗員の数名が「激突する!」と叫んだところで、マジコが大地の魔法でなだらかに傾斜したスロープを作り出し、船は惰性でそのままスロープを登り切って停止した。


 そしてマジクが転移魔法を発動させて、皆に光の円柱の中に入るよう言ったが、皆怖がって入ろうとしないのでどうしたものかと考えていると、ジャンヌが光の円柱の中から出てきて、怯える人間達に向かって「私は人間だ、この先は安全な陸の上だ、安心して私についてきてくれ」と言ってくれたので、皆ジャンヌに従って光の円柱の中に入っていってくれた。


 全員無事に安全な陸地に移動したところで、私はジャンヌとマジエにその場を任せて、私とマジクとマジコは拠点に戻った。


 まず私は調理の腕の成長が著しい女ゴブリンのソシエに温かいスープを作るよう依頼した。ちなみにソシエとはフランス料理の厨房でソース作りと肉料理の仕上げを担当する花形料理人のことを指す言葉である。本国の人はソーシエと発音し、コックよりも上の立場の意味があるがここでは考慮する必要はないだろう。もちろんソーシエの語源はソースである。


 (※Sauce⇒Saucier)


 次にざっと見て50人以上はいる人間達の収容施設をどうするかマジクとマジコと一緒に検討し、以前獣人達を発見した川の近くが良いだろうという事で、そこにマジコの大地の魔法で仮設住宅を作ってもらった。


 私はもう一度拠点に戻り、沢山作り置きしているおやつのナッツ入りトウモロコシクッキーをいっぱい大皿に乗せて、スープについても常にスープの元は作り置きして貯蔵庫に保存しているので既に出来上がっていたので、ソシエと一緒に収容施設へと持ち運んだ。


 ちなみにコックは配下のゴキブリ人間達と一緒に夕食の支度をしていた。


 一通り避難民の受け入れ態勢が整ったのでジャンヌ達のところに戻り、仮設住宅と温かいスープを用意したと言うと、真っ先にジャンヌは私に感謝を述べて、ジャンヌは避難民を引き連れてマジクが開通させた光の円柱の中に入って行った。


 さすがにいきなりゴキブリ人間達が食事を配膳するのを目の当たりにするのはショックだろうという事でソシエには拠点の厨房に戻ってもらっており、その代わりフードを外した黒髪の美しいマジコが器にスープを注いでいた。


 毒など入っていない事を皆に示すため、ジャンヌが注がれたばかりのスープを飲んでみせて、とても美味しいと言い、クッキーも食べて甘くて美味しいと言ってとびきり美しい笑顔を見せた。


 私も皆の前で飲んでみせて、ソシエの上達ぶりに満足して笑顔を見せたが、魔王である私の顔の笑顔に果たしてどれほど効果があるだろうか。


 難民の中には小さな子供もいたので、マジクにお願いしてフードを外してもらい、クッキーを配ってもらった。


 マジクは本当はとっくに成人を過ぎている年齢なのだが、見た目はとても美しい少女の容姿をしているので、子供達から見れば自分達と近しい歳の子供に見えるはずなので警戒感や緊張感も和らぐと考えたのだ。


 狙い通り、子供達はマジクからクッキーを受け取ってひと口食べると、目を大きく開けて美味しいと元気に言って喜んだ。


 それを機に皆スープとクッキーを受け取りに来てそれぞれ口にして、皆美味しいと言って喜んでくれた。


 ジャンヌによると全部で64人いるとの事で、どうやら彼等はジャンヌの故郷の隣国にある地方領主一家と近所の住人達だとの事だった。


 彼等は魔物討伐の際にも結構活躍した傭兵達でもあり、ジャンヌの祖国が滅ぼされた時の敵国の汚いやり口と残酷さを良く知っており、本来は魔物の進撃に備えて隠し持っていた輸送船でいちかばちかの命がけの脱出を試みたそうだった。


 彼等はジャンヌを見て、ジャンヌの元の名前を口にして、貴女は彼女の親族か? と聞いてきたらしく、彼女の全くいわれのない濡れ衣には酷い憤りを感じていると言っていた。

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