第12話
側近達の報告によると全員怪我無く無事にそれぞれの目標を達成したとのことで私は安堵し、各々の成果を楽しみに聞くことにした。
リザロ配下のリザードマン達は残っていたもう一羽のガガラを倒す事に成功し、リザロ以外全員またレベルがひとつ上がったとの事だった。
ゴブロ配下の男ゴブリン達は大きなナマズを仕留めてこちらも全員レベルが一つあがったが、ゴブロ自身もレベルが一つあがったと言って喜んでいた。
リザラ配下のリザードウーマン達は2メートルはありそうなアルマジロのような生き物を捉えたそうで、こちらもリザラを含めて全員レベルが一つあがったと言って喜んだ。
ゴブリ配下の女ゴブリン達は多種多様な果物と木の実と野菜を採ってきて、ゴブリ以外全員レベルが一つあがった。
最後にゴキブリ人間達はイモとニンジンに似た野菜などを大量に確保して、やはり全員レベルが一つあがったようだった。
早速戦利品を確認しに行くと、どれも実に大したもので、肉や魚は私の指示なしで良い感じに解体されていて、さらに不足しがちな野菜や果物や木の実が豊富に沢山ある事にも喜んだ。
皆の働きに応えるため、私はレモンに似た果物を抱えて拠点の厨房に戻り、コックが煮込んでいるサトウキビからかなり濃くなってきている煮汁を少しもらって、別の鍋に美味しい雪解け水を入れてレモンを両手に持って握りつぶして鍋の中に果汁を入れていった。
そうして即席のレモンジュースを完成させて、コックに一口飲ませるととても良い反応が返ってきたので早速鍋を持って洞窟に戻り、側近達に人数分の器を持って来てもらうように言った。
器が届き次第私はレモンジュースを手早くどんどん器に入れて皆に配っていき、全員の分が揃ったところで私はお疲れ様!と言って器を高く掲げて一気に飲み干した。
「さぁ! 皆も飲んで!」
「いただきます!」
ゴクゴクゴク……
「オォーーーッ!」
「美味い!」
「美味しいです!」
「甘くて酸っぱくて美味しい!」
「なんだか疲れが取れる気がします!」
「有難う御座います! 魔王様!」
即席で作ったジュースではあったが、皆とても喜んでくれたので私もとても嬉しくなった。
今作ったジュースの甘味の元となるサトウキビの事を皆に話し、人間達からは世界の果てと呼ばれるこの不毛な大地にも、探せばこうした良い物が沢山あるのだと力説して、私はこうした資源を探す活動を行うと宣言した。
また、各地に逃げ延びている魔物達を探し、彼等にも合流してもらって、より安定した社会を構築したいと言うと、皆賛成してくれた。
具体的な施策については明日考えるとして、まずは今日の夕食を作るため私は拠点の厨房に戻ると、コックが出来上がった黒糖を確認して欲しいと言って差し出してきたので鍋の中を覗いてみると茶色い黒糖の塊がちゃんと出来上がっていて、コックに頼んでひと欠片削ってもらって口の中に放るととても甘い上に無添加なので色々な成分も含まれているので豊かな味わいだった。
「これは良い! とても良い具合だよ!」
「ありがとうございます魔王様! 次からは私が作りますので魔王様は他の大事なお仕事をなさって下さい」
「ありがとう、そうしてくれると助かるよ」
「他に煮込んでいる鍋もかき混ぜてアクを取っていますがこちらはまだ煮込み続けますか?」
「そうだね、赤い方はそろそろ火を消してもいいかな、こっちの黒い方は中の具材をすりつぶして水と黒糖を入れて少し煮込んでから火を消して、二つとも一晩寝かそうと思う」
「難しいですね……」
「やってみるかい?」
「はい! 是非教えてください!」
私は中濃ソースを作っている鍋の中の具材を潰してピューレ状にするようにコックに説明した。コックの手は熱さを感じない上に硬いのでとても都合が良く、鋭い爪の反対側を使って溶けきっていない果物や野菜を押しつぶしてドロドロのピューレ状態にしてもらった。
その後美味しい雪解け水を加えて黒糖を少しずつ足して味見をして、トンカツやお好み焼きなどには欠かせない中濃ソースに近い味になるように調整した。
「うん、まぁまぁ近い味になった」
「とても不思議な味わいです、私はとても気に入りました」
「これがあると、料理の幅が広がるよ」
「魔王様! どうか色々教えてください!」
「分かった、コックはとても筋が良いからこれからも一緒に色々料理を作ろう」
「有難き幸せ!」
「あと今すぐの話しじゃないけど、この先何人か一緒に料理を作るメンバーを増やしたいね、今はまだ私とコックで何とかなるけど、これからもっと仲間が増えたら皆の分の食事を作るのに私とコックだけじゃ間に合わないよ」
「確かに魔王様のおっしゃる通りです」
「だからまず今はコックに私の知っている料理を教えるから、一通りコックが出来るようになったら今度はコックが他のメンバーに教えるんだ」
「分かりました! とても光栄です!」
その後トマトソースと中濃ソースの煮込みを終えて一晩寝かすために横にどけて、今日の夕食作りに取り掛かった。
まずは午前中にゴブロ達が弓矢で捕まえたマスのような魚を捌いて刺し身を作り、玉ねぎをスライスしてボウルに刺し身と一緒に入れて塩をまぶしてからレモン汁をかけて軽く混ぜて皿に盛り付けた。
コックと二人でちょっとつまんで味見して頷き合い、側近達を呼んで洞窟に運んでもらった。
「どんどん作るから皆待たずに食べるように言って! 君達もね!」
「しかし……、あっいえっ、仰せのままに!」
そうして私はコックに料理を教えながらどんどん色々な物を作っていった。その間毎食ごとに味見をしたので、私もコックもお腹が空く事なく手を動かし続けた。
食事を運んでくれた側近達が、皆腹一杯で満足していると教えてくれたので、最後に果物をカットして、黒糖を少し溶かしたシロップをかけて渡して私とコックは一仕事終えた。
「魔王様のおっしゃる通り、この先仲間が増えたら大変ですね」
「うん、だから有望そうな者は早いうちから厨房で練習させた方がいいかもね」
「分かりました、明日才がありそうな者を探してみます」
「うん、有望な人材なら種族に関係なく連れてきて」
「かしこまりました」
その後食べ終わった皿が運ばれてきたが、どの皿も凄く綺麗に洗われていたので聞いてみると、ゴキブリ人間達が率先して洗ったとの事で、この世界のゴキブリ人間は皆綺麗好きで几帳面なのではないかと思った。
翌日、コックは有望な人材を選別しに行き、私は側近達と話して人間達から世界の果てと呼ばれるこの不毛な大地でも有益な資源がありそうな場所を探しに行くのと、同じく逃げ延びた魔物達を探して保護しに行くのに可能性がありそうな場所を検討し、優先順位を付けていった。
やはり生き物も植物も生息していくには水辺が必要だという事で、極寒でも灼熱でもない場所で水辺のありそうな所を選定していたが、さすがに地下洞窟にある水源までは探る事が出来ず、この点についての調査は課題となった。というのも外敵の驚異や厳しい自然環境から身を守るのに地下洞窟はとても適していて、今いる仲間達も地下に逃げ延びていたからだ。
この課題はひとまず後回しにして、有望そうな場所から探索を開始する事した。




