第10話
私は身体が震えたが、それは恐れによるものではなく眼前の闘いに感化されて燃え上がった闘争心から来るものだった。
「皆……、この後もしかしたら絶好のチャンスが来るかも知れない……、最初に皆に無理をするなと言ったのにごめん……、私はそのチャンスが来たら闘いたいという心の衝動を抑えられないような気がする……」
「ま、魔王様!?」
「心得ました! もとより覚悟の上です! この命に代えても魔王様をお守りします!」
「私も命を懸けてお守りします!」
「魔王様の仰せのままに!」
「それでこそ魔王様です!」
「魔王様万歳!」
皆覚悟を決めて各々武器を手にした。しかし誰一人として悲壮感あふれる顔をすることはなく、これからの闘いに闘志を燃やす顔だった。
そうして私達は2匹の怪獣の闘いを見守り続けたが、先程までとは全く異なる気持ちで絶好のチャンスが到来するのを待ち続けた。
キェーーーッ!
キェーーーッ!
ケェーーーッ……
ホーグルが消耗しているのが明らかに分かり、その鳴き声も擦れてきた。
シュウーーーッ!
シュウーーーッ!
ブシュゥーーーッ……
しかしクロゲータの方も歯の隙間から漏れ出る息がかなり苦しそうだった。
ホーグルは大したもので巨体のクロゲータをぶら下げたまま高度20メートル程に達していた。
私は強く手を握りしめて、瞬きもせずに目を見開いて、今か今かと待ち続けた。
そして遂にその時はやってきた。
首を目一杯伸ばして羽ばたき続けたホーグルがとうとう力尽きて地面へと落下したのだ。
ズシィーーーンッ!!
2匹の巨体が激しく地面に激突し、その凄まじい重量によってまるで地震のようにこちらまで地面が揺れた。
ホーグルは分からないがクロゲータの方は確実に内臓に大ダメージを負ったはずだ。
「今だッ!!」
私は弾かれたように飛び出した。
この時私はどういう顔をしていただろう?
邪悪な笑みを浮かべていたかも知れない。
己の心の中にある狂暴性を解き放ち、その快感に浸り口元を醜く歪めていたかも知れない。
今から圧倒的な強者を殺戮するのだ、自分よりも強い存在を殺して自分がその力を得るのだ、そう考えるととても興奮して気持ちが良かった。
私は力強く指を開いた両手を胸の前で構え、これまでで最大出力の雷を放つべく自分の身体を駆け巡るエネルギーを両手の先端に送り込んだ。
すると青白く光り輝く球体が出現し、バチバチと音を立てて荷電粒子が漏れ出る程にその球体は凄まじいエネルギーを蓄えていた。
恐らく数秒という短い時間だったが、私の中ではまるでねっとりとした水飴の中を進んでいるかのように遅く感じ、戦闘準備を整えるのに十分な時間を得る事が出来た。
そして私は両手を前に掲げ、クロゲータの口の先端とホーグルの足首にタッチして、ありったけの雷撃を流し込んだ。
バリバリバリィーーーッ!!
2匹の巨大な生き物は激しくのけぞり、その後ピクリとも動かなくなった。
「ハ、ハハッ、ハハハッ、ハハハハッ! アハハハハハ! やったぞ! やったぞーッ!」
私は身体中に力が漲ってくるのが分かった、それと同時に強い快感が身体中を駆け巡り、私は顎をあげて空を見上げ恍惚の表情を浮かべた。
「ああ! 我が魔王様!」
「素晴らしい! なんと素晴らしい!」
「お見事です! 魔王様!」
「魔王様! ああ我らが魔王様!」
「魔王様……、ウゥ、グスッ、魔王様……」
「魔王様万歳! 魔王様万歳!」
「ワァーーーッ!!」
側近だけでなく、洞窟に逃げ込んでいた魔物達も全員戻ってきて私の回りに集まってきた。
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真央 真人
レベル:5⇒10
生命力:50⇒100
魔法力:50⇒100
持久力:50⇒100
攻撃力:50⇒100
防御力:50⇒100
素早さ:50⇒100
幸運度:50⇒100
魅力 :50⇒100
【魔法】
回復 :5⇒10
雷撃 :5⇒10
【スキル】
威圧⇒覇気(進化)
飛行
調理
士気向上⇒陶酔(進化)
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「やった! レベルが一気に10になった!」
「オォーーーッ!!」
皆も熱狂的な程に喜んでくれて、やはり皆魔物なだけに闘って勝利する事が好きなんだろうなと思った。
また、側近達以外の魔物達もレベルアップしたとの事でリザードマン達は2あがり、それ以外の者達も1あがったという事で、それもあって皆大喜びしているのだった。
「リザロは上がらなかったんですか?」
「はい、オオトカゲを倒した程度ではあがらないようです、それに魔王様の雷撃のおかげで私はほとんど労せずして頭を落としただけですから」
「余計な事をしてしまいましたか?」
「いいえ滅相もございません! 魔王様のおかげでオオトカゲに逃げられずに済みました! アレはああ見えて結構足が速く、持久力もあるので一度逃げられたら我等では追いかけるのはほぼ無理なのです」
「そうなんですね、それなら良かったです」
「さてと……、皆疲れているかと思いますが、もうひと頑張りしてもらえますか?、肉が傷まないうちに解体作業を手伝って欲しいのです」
「仰せのままに! 魔王様!」
「疲れてなどおりません! 魔王様!」
「魔王様のおかげで力が漲っております!」
「ありがとう、それでは早速取り掛かろう!」
「オォーーーッ!」
とは言ったものの、何せ2匹とも巨大なので解体作業は一苦労で、とりわけクロゲータはホーグルの鋭い爪やクチバシでも傷を付ける事が出来ない程に頑丈な皮膚を持っているので解体は不可能のように思えた。
「困ったな……」
「我等にお任せください魔王様!」
ゴキブリ人間達が私の前に整列して進言してきたのでどうするのかと聞くと、大きな口の中から体内に入って柔らかい肉を切断するとの事で、コック以外のゴキブリ人間達なら身長1メートル程なので上手く出来そうだった。
早速許可するとゴキブリ人間達はクロゲータの口の中に入っていき、まずは分厚い舌を鋭利な爪で引き裂いていった。
これはかなりグロイ光景ではあるが、私はもうすっかり慣れてしまったようで、なんとも思わなくなってしまった。
「魔王様! ホーグルの解体のご指示をお願いします!」
「あっ、了解です!」
その後私の指示のもとホーグルの解体も進み、大量の肉と素材が手に入ったが、ゴキブリ人間達は何でも食べるので一切捨てる部位はなくすべて持ち帰った。
ちなみにクロゲータの頑丈な皮膚については、足の付け根などの可動部分は比較的柔らかかったのでリザロの剣とマジクから借りたナイフでなんとか切断する事が出来て、それ以外の箇所も可動部分を見つけてゴキブリ人間達の口から溶解液を出してもらって何度も塗り込んで柔らかくしてから剣とナイフで切断し、後は皆で力を合わせてなんとか丸めてサイズを小さくして持ち運んだ。
そして持ち帰った大量の肉は拠点の地表近くにある倉庫に保管した。ここは極寒の地表近くにあるため常に氷点下の温度で、これなら大量にある肉も腐ることなく保存出来るとの事だった。




