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『ハズレスキル【スーパーマーケット】で辺境スローライフを満喫中〜実家が滅びそう?俺は大間産マグロで無双する〜』  作者: 月神世一


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自作自演の悲劇? 世界一過剰防衛な農村を舐めるな

自作自演の悲劇? 世界一過剰防衛な農村を舐めるな

「ヒヒッ……いいぞ。村の連中は完全に寝静まってるみたいだな」

 深い森の陰からポポロ村を見下ろしながら、課金勇者ゼロスは下劣な笑みを浮かべた。

 彼の背後に控えているのは、神界の炎上プロデューサー・ワイズの豊富な資金(裏予算)で集められた、数十人のゴロツキや悪徳傭兵たちだ。彼らは一様に、薄汚れた『魔王軍の残党』を思わせる偽装鎧を着込んでいる。

「いいかお前ら。ワイズ様からの指示通り、まずは村の外周にある畑や納屋に火を放て。村人たちがパニックになって逃げ惑い、絶望の悲鳴を上げたその時……僕が颯爽とカメラの前に登場し、お前たちを蹴散らす。手はず通りに『やられ役』を演じろよ」

 ゼロスの傍らには、フワフワと浮遊する『神眼カメラ』が待機している。現在は録画ランプは消えているが、いつでも生配信を開始できる状態だ。

「村の人間はどうせただのモブだ。何人死のうが、女や子供が泣き叫ぼうが知ったことじゃない。むしろ悲惨であればあるほど、視聴者(神々)の同情を誘い、スパチャが飛び交うんだからな」

「へへっ、勇者様も悪よのう。火事場泥棒で女と金は俺たちが頂くぜ」

「ああ、勝手にしろ。ただし、あの目障りなマグロ剣士だけは、僕がこの聖剣で直接嬲り殺しにしてやる」

 ゼロスがオリハルコンの聖剣をチャキッと鳴らすと、ゴロツキたちが卑劣な笑い声を上げながら、村の境界へと忍び足で向かっていった。

 武器を片手に、松明に火を灯し、ただの長閑な農村を血と炎で染め上げようとする悪鬼の群れ。

 ――だが、彼らは致命的な勘違いをしていた。

 彼らが襲撃しようとしているこのポポロ村が。三大国の正規軍ですら攻め入ることを躊躇う、世界一『過剰防衛』な狂気の要塞農村であるという事実に。

「よし、まずはあの見張り塔を燃やして――」

 先頭を歩いていた大男のゴロツキが、村の敷地を囲む柵を越え、ふと地面に足を踏み入れた瞬間だった。

『――カチッ』

「ん? なんか踏んだか……?」

 大男が足元を見た、その時。

 ドゴォォォォォォォォォォォォンッ!!!

 夜の静寂を切り裂く、凄まじい爆発音が轟いた。

 ただの地雷ではない。地下帝国ドンガンの最新技術によって高純度の魔力を圧縮した、『対装甲魔導地雷』だ。

 大男の体は、悲鳴を上げる間もなく跡形もなく吹き飛び、その爆風で周囲にいた数人のゴロツキが宙を舞った。

「な、なんだ!? 魔法の罠か!?」

「クソッ、ただの農村じゃねえのかよ!」

 パニックに陥るゴロツキたち。

 しかし、彼らの悲劇はまだ始まったばかりだった。爆発音に反応し、村の防衛システムが完全な『迎撃モード』へと移行したのだ。

『ビーーーーーーーーッ! 侵入者感知。自動迎撃システム、起動シマス』

 機械的な音声と共に、上空から「ウイィィィィィィン……!」という甲高いモーター音が鳴り響く。

 夜空を埋め尽くすように飛来したのは、赤いセンサーの目を光らせた無数の『魔導長距離自爆ドローン』だった。

「ひ、ヒィィィィッ!? 空から変な鳥が……ッ!」

「うわぁぁぁぁっ! 来るな! 来るなァァァ!」

 チュドォォォン! ドドドドォォォンッ!!

 正確にターゲットをロックオンしたドローンたちが、次々と急降下して特攻を仕掛ける。鮮やかな火柱が上がり、偽装魔王軍の陣形は一瞬にして崩壊した。

「なんだこれは!? どうなってる!?」

 森の陰で待機していたゼロスは、あまりの惨状に腰を抜かしかけていた。

 悲鳴を上げているのは村人ではない。自分が金で雇った傭兵たちだ。彼らは村の畑に火を放つどころか、第一防衛ラインの魔導地雷原すら突破できず、ドローンの雨霰にボロ雑巾のように蹂躙されている。

 そして、ダメ押しとばかりに、村の奥から重低音のエンジン音と地響きが迫ってきた。

「自警団長マンミア、ポポロ村の民と法を断固として守護する!」

 轟音と共に現れたのは、下半身が馬、上半身が人間の女性というケンタウロス種の戦士――マンミアだった。

 彼女の背後には、キャタピラ音を響かせて前進する分厚い装甲の『魔導戦車』が控えている。

 マンミアの左腕には、巨大な鋼の杭が仕込まれたパイルバンカー式刺突型シールド【アグニ】。右腕には精密狙撃用のクロスボウが握られている。

「侵略者には、一切の容赦はしないッ!!」

 マンミアは右手のクロスボウで牽制の矢を放ちながら、数百馬力の脚力で一気にゴロツキたちとの距離を詰めた。

「ば、化け物ォォォッ!!」

「逃げろ! こんなの聞いてねえぞ!」

 逃げ惑う傭兵の一人に、マンミアは腰に巻きつけていた分銅付きの拘束鎖【メビウス】を投擲した。

 ジャラッ! と音を立てて鎖が男の胴体を締め上げる。

「捕らえました!」

「ぎゃあぁぁぁぁっ!?」

 そのまま彼女は、時速80km近いスピードで反転し、鎖で男を地面に引きずり回す。ケンタウロスの圧倒的な馬力で振り回された男は、木々や岩に次々と激突し、あっという間に白目を剥いて気絶した。

 さらに、村の中から飛び出してきた自警団の農民たちが、魔導ライフルや魔導誘導バズーカを肩に構え、手慣れた様子で一斉射撃を開始する。

 ドゴォォォン! ズガガガガガッ!!

 それはもう、農村の自衛というレベルを遥かに超越した、一方的な『殲滅戦』だった。

「ひぃぃぃっ! ごめんなさいごめんなさい! 降参だ! 降参しますぅぅ!」

「助けてくれぇぇぇッ!」

 開始からわずか五分。

 ゼロスが手配した偽装部隊は、火の粉一つ村に届かせることなく、最新鋭の魔導兵器とケンタウロスの超重突撃によって完膚なきまでに叩き潰された。

「……バカな。なんなんだこの村は……っ!」

 森の奥で、ゼロスはガタガタと震えながら聖剣を取り落としそうになっていた。

 村が燃え、悲劇のヒロインが泣き叫ぶ――そんな炎上シナリオは、完全に消し飛んだ。悪党どもが農民の持つバズーカで泣かされているなど、エンタメとしてもお粗末すぎる。

『――馬鹿者! 何を呆けている!』

 ゼロスの脳内に、怒りで震えるワイズの念話が響き渡った。

『このままではただのギャグ動画だ! 早くカメラを回せ! お前がそのケンタウロスとバズーカを持った農民たちを「魔族に操られた狂信者」としてなぎ倒せ!』

「む、無理ですよワイズ様! あんな火力の化け物ども相手に、俺の剣が通用するわけが――」

『黙れ! 予算はくれてやる! 私の神格権限(無限課金バフ)で、お前のステータスを限界突破させてやるから、さっさと飛び出せッ!!』

 瞬間、神界から莫大なエネルギーがゼロスの身体に直接注ぎ込まれた。

 ユニークスキル【マネー】が強制的に発動し、何億円分もの課金アイテムを一度に使用したのと同じ状態になる。

 ゼロスの筋肉が異常に膨張し、オリハルコンの聖剣が虹色の『神聖不可侵バリア』を纏ってギラギラと輝き始めた。

「……おお……おおおっ!! 力が、力が湧いてくるぞッ!!」

 課金による圧倒的な万能感に酔いしれ、ゼロスは再び下劣な笑みを取り戻した。

 神眼カメラの録画ランプが赤く点灯し、生配信が開始される。

 ゼロスは表情を『悲壮感に満ちた勇者』の顔へと瞬時に切り替え、森の中から広場へと躍り出た。

「――待たせたね!!」

 朗々たる声が、夜空に響く。

 バズーカを構えていた自警団員たちや、息を整えていたマンミアが、突如として現れた光輝く男に警戒の視線を向けた。

「僕は勇者ゼロス! 魔王軍の残党に襲われているという悲報を聞きつけ、駆けつけた! 村の皆、もう大丈夫だ。この悪しき魔物たちは、僕が必ず討ち果たす!」

 そう言って、ゼロスは倒れている自分の雇った傭兵たちを踏みつけながら、マンミアの方へと聖剣を向けた。

「そこのケンタウロス! そして狂った武器を持つ者たちよ! 魔族に操られ、この平和な村を火の海にしようとした罪、僕の聖剣で浄化してやる!」

「な、何を言っている!? 我々はポポロ村の自警団だ!」

 マンミアが混乱しながらもパイルバンカー盾を構える。

 しかし、無限課金バフを受けたゼロスのスピードは、先ほどの傭兵たちとは次元が違った。

「悪党の戯言など聞く耳持たないッ! くらえ、ホーリー・スマッシュッ!!」

 マッハを超える踏み込みで、ゼロスの聖剣がマンミアに迫る。

 マンミアが盾を掲げて防御姿勢をとるが、神聖バリアを纏った理不尽な火力が、彼女の強固なパイルバンカーごと吹き飛ばそうとしていた。

「くぅぅっ……!?」

「ハハハハハッ! 死ねえええええっ!!」

 ゼロスの刃がマンミアの肩に届こうとした、まさにその絶体絶命の瞬間だった。

「――おい。深夜にデカい声を出して近所迷惑だとは思わないのか、ペテン師」

 冷たく、感情のない声。

 ゼロスの振り下ろした聖剣とマンミアの間に、銀色に輝く巨大な『壁』が割り込んだ。

 ガァァァァァァァンッ!!

 鈍い衝撃音が響き、ゼロスの聖剣がピタリと止められる。

 そこに立っていたのは、いつの間にか【スーパーマーケット】から召喚した『業務用冷凍庫の分厚いドア』を片手に盾として構え、パジャマ代わりのスウェット姿で欠伸をしている男。

「ケ、ケント殿……ッ!」

「よう、マンミア。怪我はないか」

 俺は冷凍庫のドア越しに、目を見開いて硬直しているゼロスを冷ややかに見据えた。

「カメラを回して自作自演とは、随分と手の込んだお遊戯だな。だが、俺たちのスローライフを邪魔するなら……大火傷じゃ済まさないぞ」

 夜のポポロ村に、凍てつくような氷魔法の冷気が満ちていく。

 元社畜の知略と、課金勇者の偽りのステータス。

 理不尽な神の炎上シナリオを叩き潰すための、本気の防衛戦が今、始まった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

「魔導地雷に自爆ドローンって、完全に農村の定義超えてるw」「マンミアさんの重装甲突撃がカッコよすぎる!」「業務用冷凍庫のドアを盾にする主人公(笑)」

など、少しでも楽しんでいただけましたら、

ページ下部にある

【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると、ケントの業務用冷凍庫の防御力が上がり、作者の執筆スピードも加速します!

また、【ブックマーク】へのご登録も何卒よろしくお願いいたします!

次回、第9話「課金ステータス対決! 腐った勇者と社畜の知略」。

無限課金バフで暴れ回るゼロスに対し、ケントが現代スーパーの【高圧洗浄機】と社畜の知略で完璧に受け流します! 情報戦の準備も着々と進行! お楽しみに!

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