10
考えてるとゴルドーがハッ、と鼻息一つくれる。
「まぁ当然だな」
言って、机の上の黒電話の受話器を取る。
ゴルドーが電話をかけんのを見るとはなしに眺めつつ……俺は不意にミーシャの事を思った。
最後に顔合わせてから、まぁまぁの日付が経っている。
ミーシャ、今頃どうしてっかなぁ。
向こうにゃレイジスがいるし、ダンやガイアス、マーシエもいる。
不自由はしてねぇだろうけど……。
……会いてぇなあ。
じんわりと胸に、んな思いが込み上げてくる。
が──
『──それに、あの子の事。
向こうに置いたままうかうかしてたら緋の王にかっ拐われちまうかもしれないよ?
向こうはまだ、あの子の婚約者のつもりでいるんだろうからね』
不意にこないだシエナに言われたあの言葉が、胸にグサッと突き刺さってくる。
あの男……。
緋の王は、ミーシャとの婚約をどー思ってんだろう?
あのいかにも人間離れした、冷てぇ目。
愛とか恋とか、んなモン一ミリたりとも持っちゃいなさそうなあの男が、まさかミーシャに言い寄るなんて事があるんだろーか?
ムダに嫌な想像をして思わず眉間に皺を寄せる……と。
受話器を耳に当てたまま電話が繋がるのを待っていたゴルドーが、こいつも眉間に皺を寄せていた。
そういや確かに電話、中々繋がんねぇな。
ゴルドーも同じ事を思ってるのに違いねぇ。
眉間に皺を寄せたまま耳から受話器を離し、意味もなくその受話器を怪訝な面持ちで睨む。
俺はそいつに──
「ゴルドー?」
声をかけた。
だがゴルドーは俺の声を全く無視し、受話器を持っていない方の手で受話器を置く所の出っ張り(俺にはその正確な名称が分からねぇからそう言うだけだが)を押し、電話を切った。
そーしてやっぱり俺への返答はナシのまま、またどこかへダイヤルする。
今度は、わりかしすぐに電話が繋がったらしい。
『ガシャッ』という音が聞こえた。
向こうから何かの声が聞こえる。
名を名乗ったのか『もしもし』とでも返してきたのか。
それは分からねぇがゴルドーは口を開く。
「ああ、あんたか。
俺だ。
ゴルドー商会のゴルドーだ。
今、レイジス王子サマんトコに電話かけたんだが繋がんなくてな……ああ、そうだ」
電話の向こうで誰が出てんだか、何を話してんだか、こっからじゃ全く分からねぇ。




