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でも、まだ何か話をしてくれそう。
そんな気がした。
「〜お願い、兄上。
何か言いたい事があるのなら言って」
今を逃せば、次にいつアルフォンソが口を開いてくれるか分からない。
もしかしたら今が突破口になるかもしれない。
そう思い必死に語りかけるミーシャをよそに──。
「──失礼します」
淡々とした、凍てつく様に冷たい声が扉の外からかかった。
その、途端──。
アルフォンソの“何か話してくれそうな気配”がすっと消え去った。
──消え去って、しまった。
“どうぞ”と言った訳でもないのに、部屋の扉が勝手に開く。
コツ、コツ、と冷たく重い靴音と共に入ってきたのは、血の様に赤い髪と茶金色の瞳の男──。
緋の王アランだった。
ちら、と閉まりゆく扉の向こう側で見張りの兵がアランを制止しようと手を伸ばしかけるのが見えたが、結局何の役にも立たなかった。
パタン、と扉が閉まり──……。
アランがこちらへやってくる。
「〜……ノワール王……」
思わず硬い表情でミーシャはアランの顔を見る。
端正だが、どこか冷酷そうな、鋭い刃を思わせる顔。
実際ノワール国ではこの男によって焼き払われた村や街が数多く存在し、彼に意見する者は悉く処刑されていると聞く。
サランディールではもちろんその様な振る舞いはしないが……。
──ノックの返事も待たず、兵の制止も聞かずに入ってくるだなんて。
まるで我が物顔だ。
心に苦い思いを持ちつつ呟いた言葉に、アランは特に気にした様子を見せなかった。
ミーシャに対し表面的には恭しく声をかける。
「──ミーシャ姫。
こちらにおられましたか。
殿下のお加減はいかがですか?」
「──変わりありません。
いつも気にかけて頂きありがとうございます」
今先程の事を──……アルフォンソが何かを語りそうであった事を言う必要はない。
それによってアルフォンソの身に危険が及ぶ可能性だって、ないとは言い切れないのだから。
それに──……。
本当にアルフォンソ兄上の事を気にかけてくれている様には、思えない。
こうしてここに来ているのはお見舞いに、というより見張りの為にという気がしてならなかった。
アルフォンソが以前の様に戻ったりしないかどうかの、見張り。




