9
呆れて物も言えない、と顔に書いてある。
そしてその表情通りに、口を開いた。
「全く、呆れるね。
あんたねぇ、昨日墓参りを終えたばかりだからって言ってもね、そんなにのんびりしてていいのかい?
まだ向こうの事は何一つ片づいちゃいないんだろう?
あんたと同じ旅路を行ったゴルドーは、もうこっちでやるべき事に取り掛かってるよ。
あんたにほんのちょっとでもあの子の力になろうって気があるんなら、ゴルドーの手伝いでもしに行ってきたらどうなんだい」
言う。
もちろんシエナの言う『あの子』は言うまでもなくミーシャの事だ。
「う゛……」
シエナからの正論に、思わず呻く。
シエナがまた一つ息をついた。
そーして俺とシエナを隔てる木のカウンターに手をつき、やや身を乗り出して周りに聞こえねぇくらいの声量で脅してくる。
「──それに、あの子の事。
向こうに置いたままうかうかしてたら緋の王にかっ拐われちまうかもしれないよ?
向こうはまだ、あの子の婚約者のつもりでいるんだろうからね」
……そう、嫌〜な事を言ってくる。
俺はそれに何とも言えず、逃げる様にそそくさとシエナから離れる。
「あ〜っと。
そーいや俺、やんなきゃならねぇ事があるんだった。
早く行かねぇと。
じゃ、」
もちろんやんなきゃならねぇ事も行かなきゃならねぇ場所もねぇ。
が、そー言ってそそくさとギルドを出ていこうとする俺に、
「フン、」
とシエナが後ろから鼻息一つよこしてきたのだった──。




