第102話 届かなかった叫び
白金の光が、父王の胸元へ突き刺さった。
夢の儀式場が、一瞬だけ静止した。
高い天井。掲げられた両国の旗。白と黒の同盟魔法陣。整列した使節。緊張した兵士。祈祷師の祝詞。文官の開いた巻物。
すべてが、祝福の形をしていた。
その中心で、父王の身体がわずかに傾く。
光は白金だった。
誰の目にも、そう見えただろう。
ルミナリアの聖魔法。
セラフィードの国に伝わる、清く、正しく、王家の祝福にふさわしい魔法の色。
けれど、違う。
現世のノア・クロウには見えていた。
外側だけだ。
外側だけが聖魔法に偽装されている。
白金の光の皮を被った術式の内側で、黒い線が花のように開いていた。父王の足元から這い上がり、同盟魔法陣の光に紛れ、胸元へ届いた瞬間に開花する。花弁のように広がる黒い構文。その中心に、灰色の帳簿印。さらに奥へ、白花派の古い紋が重なっていた。
ルミナリアの聖魔法ではない。
セラフィードの術ではない。
父王を貫いたのは、聖魔法に見せかけられた外部術式だった。
ノアは叫ぼうとした。
喉が、夢の中で裂けるように詰まる。
「違う……ッ!」
声は、父王へ届かなかった。
儀式場の誰にも届かなかった。
父王は崩れる。
周囲の使節が息を呑む。
兵士たちの鎧が鳴る。
若いイリアスが、父王へ駆け寄る。
その身体に、赤い飛沫がかかる。
赤い色が、儀式用の正装を汚した




