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黒い災厄は、聖なる伴侶の檻から逃げられない~前世で俺を殺した英雄が、今世では赤い糸で俺を閉じ込めてくる~  作者: なつめ
第五章 【記憶の棺と幼い亡霊】

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第102話 届かなかった叫び



 白金の光が、父王の胸元へ突き刺さった。


 夢の儀式場が、一瞬だけ静止した。


 高い天井。掲げられた両国の旗。白と黒の同盟魔法陣。整列した使節。緊張した兵士。祈祷師の祝詞。文官の開いた巻物。


 すべてが、祝福の形をしていた。


 その中心で、父王の身体がわずかに傾く。


 光は白金だった。


 誰の目にも、そう見えただろう。


 ルミナリアの聖魔法。


 セラフィードの国に伝わる、清く、正しく、王家の祝福にふさわしい魔法の色。


 けれど、違う。


 現世のノア・クロウには見えていた。


 外側だけだ。


 外側だけが聖魔法に偽装されている。


 白金の光の皮を被った術式の内側で、黒い線が花のように開いていた。父王の足元から這い上がり、同盟魔法陣の光に紛れ、胸元へ届いた瞬間に開花する。花弁のように広がる黒い構文。その中心に、灰色の帳簿印。さらに奥へ、白花派の古い紋が重なっていた。


 ルミナリアの聖魔法ではない。


 セラフィードの術ではない。


 父王を貫いたのは、聖魔法に見せかけられた外部術式だった。


 ノアは叫ぼうとした。


 喉が、夢の中で裂けるように詰まる。


「違う……ッ!」


 声は、父王へ届かなかった。


 儀式場の誰にも届かなかった。


 父王は崩れる。


 周囲の使節が息を呑む。


 兵士たちの鎧が鳴る。


 若いイリアスが、父王へ駆け寄る。


 その身体に、赤い飛沫がかかる。


 赤い色が、儀式用の正装を汚した


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