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19話 ~二人三脚~

 


 青空のグラウンドは人のざわめきに満ちている。


 子供たちは思い詰めたような顔をしながら競技に取り組んでいて、親たちの目は血走っている。映像だけで見れば運動会そのものなのだが、笑顔が少ない。勝利した子供だけが少し笑った後でまた気を引き締めている。


 いまこのような状況になっているのは、王立ワシントン学園というこの国で最も格式の高い学校に、一般人でも入ることが出来るようになったから。


 うまくいけば王立ワシントン学園卒業という最高の肩書になるだろうし、最高の教育も受けることが出来る。しかも身分の高い人間とのつながりもできるとなれば、必死にもなるというものだ。


 そんな中に会って比較的落ち着いている子供が一人歩いている。


 黒い髪をした比較的体格のいい子供こそ、前世では日本人の高校生だったレイ・フェリックスだ。



「あら?!」


 謎の受験項目、二人三脚の会場へ行ってみて驚いた。先に準備をしているの受験生の姿があるのだが、男の生徒と女の生徒が足を結んでいたのだ。


 男女混合競技か。


 二人三脚だけでも受験項目としてはかなりトリッキーだと思っていたのだが、さらに男女混合とは思わなかった。こうなれば相手が気になる。


 別にロリコンではないのでどうでもいいと言えばどうでもいいのだが、できれば美少女であって欲しいという気持ち。勝ちたいという気持ちは当然あるが、競技が二人三脚である以上はひとりだけ頑張ってもどうしようもない。


 受付へ行って番号札を渡すと「しばらく待っていてください」と言われた。


 ドキドキする。


 いったいどんなタイプの美少女がくるのであろうか。気になりながら周りを見てみると、受験であるにもかかわらず参加者はどこか浮かれたような顔をしている、主に男の方だけど。


 背中を叩かれた。


 振り向くと「太った、角刈りの、男の子」がいた。モゴモゴ話しているのを聞いて見ると、受付で俺と一緒にペアを組んで二人三脚をするように言われたという。


 What’s?


 話が違う。男女混合では無かったのか、これじゃあ男男になるのだが………。どう見ても男に見えるのだけど、まさかこの子は女子なのか?


 受付へ話を聞きに行ってみると、男女混合では無くて受付した順番に組み合わせが決まるらしい。人数が多いのでスムーズに進行するためには仕方がないという。つまりさっき見た組み合わせが、順番的にたまたま男女の組み合わせだっただけという事か。


 素直にわかったふりをしながら引き下がる。あまりしつこく食い下がれば、どうしても女子と二人三脚がしたいやつになってしまうので、「あ、まあそれなら全然いいっすよ」みたいな顔をしておいた。


 しかも性別の組み合わせによってスタート位置が違う、というハンデつきのルールにしているらしい。女子と女子の組み合わせならスタート位置は前の方というわけだ。


 ということは男と肩を組みながら走る上に、一番後ろからスタートしないといけないということだ。なんだこれは?日ごろの行いのせいか?全然面白くない。


 仕方がないので「太った、角刈りの、男の子」と足を結び合う。彼の名前はドンチッチ。緊張しているのか、モゴモゴ話す癖はあるが良いやつそうではあるのでやるしかない。やらない理由もない事だし。


 それにしてもずいぶんと体が大きい。俺も他の受験生に比べて少し大きいほうではあるのだが、それでも頭一つ分くらいは大きい。


 足を結んで肩を組むと「ムニッ」という感触。


 ロリコンではないので別に構わないと言えば構わないのだけど、できれば男に対しては感じたくない感触だった。



 人数が集まったようで、促されてスタート位置につく。


 どいうでもいいといえばどうでもいいのだけれど、同じ組の参加者は全員が男女の組み合わせ。なので俺たちだけが離れた場所からのスタートということになる。「がんばろうね」と言われたので、「うん、がんばろう」と返す。やはり悪い奴ではなさそうだ。


 スタートの銃声。


 一歩目から転んだ。


 結果はビリ。


 ハンデなんか必要ない大差がついてのビリだった。運動能力試験の最初の競技だし母とシャルルがあれだけ応援してくれたのだから頑張りたかったのだが、どうしようもなかった。


 最初に転んだときにドンチッチは膝を擦りむいて痛そうにしていたので、あまり急かすこともできなかった。そのうちに他の参加者とかなりの差がついていたので、無理しなくていいよと言ってほとんど歩いてゴールした。


 そこまではまあしょうがないと諦めの気持ちだったのだが、最悪なのはその後。なんと、ゴールする俺たちをカメラクルーが撮影していたのだ。


 厚化粧の女レポーターが「頑張れ頑張れ!」と心のこもってない応援をしながら盛り上げようとしている。俺たちの事を面白がっているのは明らかだ。


 しかもゴールした途端にすぐさま寄ってきて「頑張ったね」とか「痛かった?」とか「最後まであきらめなくて偉い」とかどうでもいいことを言ってくるしカメラは近いしで腹が立つ。適当に「はい」だけ言って急いで足を結わえている紐をほどいて早足でその場を離れた。


 席に戻って見るとシャルルは大いに失望していた。


「もっと頑張りなさいよ!」と尖がった目で言われたけれので、「どうしようもなかった」と返すと「担いで走ればよかったのに」とか無茶なことを言っていた。足が繋がっている相手をどうやったら担げるというのだろう。


 軽く受け流しつつ、次は頑張ると約束をした。微妙な空気の中で紅茶を飲んでいるとまたしても受験番号のアナウンスがあった。


 次は「玉入れ」らしい。


 シャルルの期待には応えられないかもしれない。




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