根差す百合の花は散って
こんなはずではなかった。森、三田村がいなくなって、私の心の澱は解けたのだ。それは同じだったはず。なのに、どうして? 彼女にはメールを送っていないのに、水科さんは転落して亡くなった。そうなると、彼女は殺された? そんな! 彼女達は殺さない約束ではなかったのか。話が違うじゃないか。由里絵を死に追い詰めた森、三田村の復讐から、私は協力したのに。
そうなると、私は裏切られたのかもしれない。水科さんを殺した後は、四十川さん、次に私だろう。もちろん、この件を嗅ぎまわっている、小町さんも危うい。
そうか。あの人は最初から、こうなることを計画していたんだ。私は、それを知らずして、犯行に肩入れした。メールや殺害方法を提供し、森、三田村をこの世から抹殺したかっただけなのに、あの人はパソコン倶楽部の人間、全員を皆殺しにしたかったのだろう。
でも、それだけの憎しみや怒りを抱くのは、私にもよくわかる。心の底から、彼らだけは許せなかった。女が女を好きになるのは、いけないことなのか? それは罪なのか? 彼らの汚物を見るような目で、由理絵を見ていたことが忘れられない。
もし、水科さんがLineで由里絵の秘密を吹聴しなければ、こんなことには……。正直に言えば、最初は水科さんにも憎悪を抱いた。なんで、彼女の秘密をバラしたのかと。しかし、実際は違った。由里絵から聞いた話では、水科さんは由里絵と個人でLineをやりとりしていたらしい。同時刻にはグループLineの方も参加していたようだ。それで、由理絵に送るはずのコメントが、間違ってグループに送ってしまったと……。
彼女は、由理絵に何度も謝ってきた。最初は由里絵も気を悪くして、水科さんに憤然としていたらしい。でも、友達だからと最後には許していたのだ。ただ、その許しを伝える前に、彼女は自ら、いや彼らによって殺された。鋭いナイフのような言葉で心を滅多刺しされ、殺されたんだ。
その背景を知っているだけに、水科さんが亡くなったのは、言葉にできないほど悲しかった。彼女は死ぬべき人間ではなかったのだ。喫茶店でお母さんの為に働き、私に笑顔でコーヒーを持ってきてくれた。小町さんと一緒に過ごした店内で、彼女の頭を撫でた、この手の感触が忘れられない。大事な、大事な、生徒だった。それなのに、なんで、あの人は、あんなことを……。
このままでは、四十川さんも、小町さんも殺される。無論、私も。話し合わなければ。あの人が暴走する前に、私が、生徒を、小町さんを守らなければ!




