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25.長い時を経て結ばれる思い

※アレルトーラ公爵夫人視点です。

今、私は牢の中に閉じ込められている。

なんとも言えない臭いが辺りに充満している。

ほとんど明かりがないため薄暗い、

天井からはどこからか漏れ出た水が滴り落ちる音が聞こえる。

何も無い質素な牢獄ではもちろん何もすることがない。

私は昔を思い出していた。




私には前世の記憶がある。

前世の私はいわゆる陰キャだった。

私は陰キャになりたくてなった訳では無い。

陰キャなのには理由があった。



小学校の頃はいつも外で友達と遊ぶような少しやんちゃな子供だった。

しかし、そんな生活は中学校で終わりを迎える。

私は中学校の時にある男子から告白された。それが私の不幸の始まりだった。

そのある男子というのがファンクラブが作られるぐらいの学年で1番モテる男子で私はその告白を断ってしまったのだ。まずまずその男子との接点がなかったし、私には好きという気持ちが分からなかったのだ。

私は告白を断ったのが原因で一部の女子からいじめを受けるようになった。最初は反発した。でも誰も助けてくれなかった、誰も気づいてくれなかった。その一部の女子は陰湿ないじめをしていた。誰もいないところで囲まれて数々の悪口を吐かれたり、痣が付かない程度の暴力を振られたり、新しいノートや教科書を学校から少し離れたゴミ捨て場に破り捨てられていたりと様々ないじめを受けた。

私は学校での口数が次第に減っていった。



私の家はいつも誰もいない。

お父さんは海外で仕事をしているのでなかなか家に帰ってこないし、お母さんは看護師でほとんど一日中病院に仕事に行っているため帰りも遅い。何より私は仕事帰りの疲れているお母さんに心配はかけたくなかった。



そして私はだんだん1人で溜め込むようになった。



ある日私は友達ができた。

名前は(みお)と言う名前で、不良っぽいけど、いじめをしてくる女子の何倍もいい子だ。



澪はいつも楽しい話を聞かせてくれた。

私がいじめられて泣いているとずっと傍に寄り添ってくれて、ずっと私の話を真剣に聞いてくれた。



私は毎日が楽しくなった。

澪がいてくれるおかげで心も軽くなった。



しかしそんな楽しい日々は一瞬にして砕け散る。ある時澪に言われた。

「もうそろそろ気づきなよ、里美(さとみ)。私はずっとあなたのそばにいれない。いや、いなくならなくちゃいけない。」

咄嗟に私は聞く。

「なんで?澪は友達でしょ?ずっといてくれるんじゃないの?」



「里美、あんたが1番分かってるでしょ?私はあんたが作り出したもう1人の自分だってこと。あんたの体は1つだ、1つの体に2人はいらないんだよ。」



私はその時やっと気付いた。

そう、私に友達ができたんじゃなくて、澪は私が想像して作り出した存在だ。



私はずっと自分の想像上の人物と会話をしていたのだ。

その日、私は泣いた。

そして澪はその日からいなくなった。

いや、自分自身で消したのだ。



私は自分の想像力を生かしてノートにお話を書くようになった。お話を書くのはとても楽しかった。自分がそのお話の登場人物のすることを決められるのが面白かった。



学校ではいじめられるが、家には誰もいじめてくる人がいない。

私にとって家は自分の楽しみをする場所になっていった。

高校はいじめをしてくる女子が全くいない学校を選んだ。

友達を作るのが怖かった私はその高校でもあまり人と馴染めなかった。

私はその間もお話を書き続けた。

そうしてあっという間に高校生活が過ぎて、無難な大学に入学した。



大学に上がった私はあまり周りを気にしなくなったため講義前の教室でもお話を書くようになった。



いつも通りお話を書いていると突然後ろから話しかけられた。

「何を書いているの?」

後ろを振り向くと、そこには爽やかなイケメンが立っていた。

私はまた自分の想像した人を現実で見たかと思い、目を擦ってみたが目の前のイケメンはそこにいた。

「え、えっと。あの....。」

久しぶりに家族以外の人と話したからか、たどたどしい言い方になってしまった。



彼はじっと私を見ている。

「じ、実は、お話を書いているんです。」



「お話?それってどんなものなの?」

彼は興味津々なようで後ろの席から身を乗り出している。



「えっと........」

私は初めて人に自分が書いた話を話した。



彼は私が話している間ずっと話を聞いてくれた。




それから私はよく彼と話すようになった。

たまにカフェによって新しく考えたお話の話をしたり、彼のことを聞いてみたりした。



彼はある一族の分家にあたる家らしい。

いつも車で登校していてたまに乗せて帰ってもらうことも増えた。



ある時彼から提案される。

「もし良ければゲーム会社のシナリオを書いてみないか?」と。

私は少し考える時間をもらい、そのゲーム会社のシナリオを担当する部署に就職することが決まった。

そのゲーム会社の社長が彼の父親で彼はその後を継ぐ御曹司だったらしい。



彼はゲームのプログラム専門の部署に所属したのでたまにランチを一緒に食べたりするようになった。



私は幸せだった。

しかし、その幸せはあっけなく終わりを告げた。

ある時に社内旅行があって海外に行くことになった。



自然を満喫するのがコンセプトで自然文化遺産や世界遺産を見て回った。

旅行3日目辺りで私は山登りをしていた、ちょうど頂上に上がって社員が休憩に入った頃にある会社の女性に呼び出された。



私はその呼び出されたところに向かう。

そこには誰もいなかったどこにいるのかと崖近くを探していると急に後ろから勢いよく飛ばされた。

気づいたのは崖から落ちる直前だった。

「あなたが悪いのよ。涼介(りょうすけ)さんに近づくから。」

落ちる直前にそう聞こえた気がする。

涼介は彼の名前だ。



私は落ちている中、彼を思い出した。

まるで彼との記憶が走馬灯のように頭に流れた。

ああ、私は彼が好きだったんだ。

そこでこの気持ちに初めて気づいた。



でももう遅い、私は彼の幸せを願いながら目を閉じる。



強く地面に体が当たり、激痛が走る。

私は意識が朦朧としてくるのを感じながら、永遠の眠りについた。





そして次起きた時にはこの世界に生まれていた。

私が作ったこの世界に。いや、この世界は私が作った世界とは違う、全ての人が意志を持った世界だと最近やっと気付いた。

長い夢を見ている気分だったのが段々と現実味を帯びてくる。


私は狂っていた。

それは私がこの世界に生まれて初めて気付いたことだった。




そういえばなぜ私の夫は私に協力したのだろうか。きっと夫が協力しなくても私は彼女たちを危険な目に合わせていただろう。夫も一緒に犯行を犯す必要はないはず。



私は同じ牢に入れられた夫を見る。

「なぜ貴方は私に協力したのですか?私に協力しなければ貴方は助かったでしょう?」



なぜ?なぜなの?貴方と私は親同士が決めた政略結婚で結婚したから特にお互い情はないはずなのに。



彼はゆっくりと口を開く。

「私は昔、あなたを守れなかった。」



私は彼の言っている意味が分からなかった。

「昔とはいつのことですか?」



「君は覚えてないかもしれないけど前世のことだよ。前世の君が殺されるのを俺は気付けなかった。」



私はやっと彼の言っていることがわかった。

彼はきっと前世の彼、涼介だ。



「...あなたは涼介さんなんですか?」



彼は目を見開く。

「俺のことを覚えているの?」



「もちろん覚えています。今更ですけど、ずっと好きでした。」

私はずっと言えなかった言葉を言う。



彼が息を飲んだのがわかった。

なぜ気付けなかったのだろうか、前世の彼と今世の彼は顔がすごく似ていることに。



「ずっと....ずっと後悔していたんだ。本当はもっと早く好きだって伝えたかった。でもいろいろと片付けなくてはいけないことがあってどんどん言うのが遅くなって、言おうとした時には...もう...君はいなくなっていた。それからずっと仕事に打ち込んだ。君のことを最初は忘れようとした、俺って最低だよな.....。でも忘れられなかった。ずっと君に、里美に会いたかった。俺は君がいない事でだんだん憔悴していった。そして最後は病院のベットの上で命を落とした。」

彼は苦しそうに話を続ける。



「そして俺はこの世界に転生した。最初は自分が転生者だなんて思わなかった。でも君との婚約が決まって顔を合わせた時にすぐに美里だとわかった。その時俺は今世は絶対に君を守ると決めた。そして君には一部のの記憶だけが蘇ってるのだと気付いた。もう俺には君のいない世界はありえないんだ。だから君の犯行にも手を貸した。俺が手を貸さなくてもきっと君は捕まってしまう、そしてまた俺の前から姿を消してしまう。それが嫌だった。それなら俺も一緒に犯行を犯して一緒に捕まった方がいいと思ったんだ。全ては君と一緒にいたいがために。......遅くなったけど、里美.....いや、メティー君を愛している。」

私はそう言われた瞬間に彼に抱きついていた。彼も私に抱き返してくれる。



「私も、私も.....ダレンのことを愛しています。ずっと、永遠に。」

私の目から涙が溢れた。







数日後に2人の処刑が決まった。






もう何も怖くない、だって貴方が一緒だから。

次はアリシナ視点に戻ります。次回の投稿は明日の20時です。

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