13.今も昔も
※ルーナトルテ視点の話です。
私はルーナトルテとして生を受けてからしばらくして自分が転生者だったことに気づいた。
前世の私はすごく内気で、友達が少なかった。
私の前世の名前は島野 咲だった。
私は小さいころから病を患っていた。
それは今の医療では治らないとされる不治の病だった。
あまり外には出ていけないため家でじっとしている日々が続いた。
前世で私は乙女ゲームというゲームをプレイするのにハマっていた。
数々の乙女ゲームをプレイした。
数少ない友達に誘われて文芸部に入った。
そこの部活の人達は私のことを温かく迎え入れてくれた。
私には尊敬する先輩がいた。
その先輩は私と2つほど年が離れていて名前は咲 真城先輩という。
私の名前と同じ咲だったからか少し親近感がわいたのかもしれない。
彼女は文芸部所属だがたまに運動部から助っ人として呼ばれるほど運動神経が抜群だったのだ。
いつかは覚えていないが先輩がこうつぶやいた時があった。
「私はね、2年前に大切な親友に先立たれちゃったの。その子にだけ将来の夢を教えたことがあるんだけどね。私はそれを絶対にかなえようと思うんだ、あの子との約束を守るためにも。」
そういいながら彼女は少し俯いた。
彼女の黒髪がさらりと動く、顔は見えなかったけれどきっと泣いているのだろう。
数年後、その先輩はその言葉の通りに夢を叶えた。
先輩は大人になっても私に連絡をくれた。
「この前発売された後輩が作った乙女ゲームなんだけど、これ咲ちゃんプレイしてみてくれない?」
その時に渡された乙女ゲームの名前は『月の乙女のティアラ』というものだった。
私はそのゲームにドはまりして公式設定集や、ファンディスクを片っ端から集めた。
その時は心なしか自分の病のことも忘れられた気がする。
同じ乙女ゲーム好きな友達とゲームの話を一晩中したり、先輩から誘われたショッピングに行ってみたりと楽しい日々を過ごした。
もうすぐ続編が発売される、という時に私は不治の病で命を落とした。
命を落とす前に見たのは夏の日差しでよく照らされた病室と鳴き始めたばかりの蝉の声、それに先輩からの手紙、そして少し年老いた両親だった。
ああ、もう私は生きられないのね。
でも、私は幸せに生きた。
最後まで付きっ切りで看病をしてくれた私の両親、私へ励ましの言葉を何度もくれた友達、そして先輩、最後の最後まで病を治そうとしてくれた病院の先生方、今まで出会ってきた人全員に。
ありがとう、私すごく幸せでした、いや、今もずっと幸せです。
その日、私は蝉のような短い一生を終えた。
病室に置かれたひまわりの花が窓からの光で輝いていた。
私は転生者だということに気づいた時にすごく驚いた。
私が生まれた世界が完全に乙女ゲームの世界と同じ、いや、似通っていたからだ。
そのゲームのヒロインとして出てくるのが私、ルーナトルテだったのだ。
前世の世界では異世界転生などのライトノベルなどがよく流行っていたがまさか自分自身が異世界転生していることにも驚いた。
最初は完全に同じ世界かと思っていたが私はある時この世界はゲームの世界ではないことに気が付いた。
もともと攻略対象を攻略しようとも思わなかったが、一番違ったのは悪役令嬢設定にあったアリシナ・ヴェルディーンの性格が真逆だったのだ。
悪逆非道な設定の彼女は気が強いが影で弱々しく泣いているスチルなどがあった。
もともとゲームをプレイするユーザーからは「アリシナちゃんには婚約破棄してほしくない。」「アリシナちゃんは幸せになるべきだった。」など、いろんな批判を浴びていたが、最初に会ったアリシナは原作のシナリオとは全く違う誰もが憧れるような人だったのだ。
私もアリシナには幸せに生きてほしいと今でも思っている。
アリシナに出会う前にも不可解な点があった。
それは親の存在だ。
両親は最初から内向的な性格だった私を精一杯支えてくれた。
生きる意味を教えてくれた。
しかし、私の両親は突然私の前から姿を消した。
ゲームの中では両親ともに揃っていて最後のハッピーエンドの時にある結婚式でその両親もしっかりと描かれていたのだ。
そして何よりも一番メインの攻略対象、この国の王太子ロストワール・イグニアがいなかったのだ。
そこで私はここは現実で決してシナリオ道理に進んでいるわけではないとはっきりと自覚したのだ。
私はアリシナの友人としてこれから過ごすことに決めた。
アリシナが幸せに生きれるようにこれからもサポートをしていこうと思う。
全ては最初から私に優しくしてくれたアリシナのために、そして私に生きる意味を教えてくれた今世の両親のために、そして前世の人たちのためにも。
ひまわりの花言葉は「憧れ、あなただけを見つめる」なんだとか。
次回の投稿は明日の20時です。今度はまたアリシナ視点に戻ります。




