05 依頼人探し
ここは冒険者ギルド ブールストリーム支部。
依頼を発注し、冒険者通称ハンターが受注する場所。
ここはブールストリームに住む成人(十歳以上)ならば、誰でも依頼の発注と受注が可能だ。
だからこそディーのような子どもでも仕事が出来るありがたい場所である。
まあ、周りは屈強な男達ばかりなので場違い感はこの上ない。
だがディーに最初の頃のようにウザ絡みをしてくる相手はもう居ない。
子どもとはいえ、毎日顔を合わせ挨拶し、懸命に依頼をこなす姿を見ていれば、口には出さずともハンターの一員として認めてくれたのだろう。
そういえば日々依頼をこなす内にランクが上がった。
ディーにまた一つ、達成したことが増えた。
ランク昇格の条件は基本的に、累計での依頼の達成数と達成率、そして依頼の品質保証率である。
ハンターギルドは主に依頼主からの手数料で生計を立てている、依頼の品質保証を重視するのは当然と言える。
しかし、それはあくまでも依頼主への商売としての側面。
ディー達ハンター人一人にとっては、ギルドからどこまで信頼されているかが昇格の暗黙の了解であった。そこを理解できない者は、いい歳でも低級ランクを右往左往することになる。
依頼の結果だけが良くても、ギルド職員や依頼主への態度も監査項目の一つ。そして総合的に判断される上で重視されるのは、ハンターとしての実力と人間として信頼に値するかの二つの側面。
これは、どんな世界や時代・業界でも変わらない理である。
最低ランクから脱出したことで、街の外での活動資格を手にしたディーは、五年以上鍛えた弓と短刀の実力を遺憾無く発揮していた。
おかげで依頼毎の報酬が増えて、日々の生活に少しだけ余裕ができた。市場での買い物で値段を気にして諦める回数が減り、ちょっとお高くみえた店に入ることも、夜遅くの依頼帰りで少し豪華な外食をすることも出来た。
生きている実感がこの前くらいから少しずつ感じられている。
今日も、そんな一助になることを期待して一つの依頼を受けた。
☆
受けた依頼は街外における薬草採取。
摘む薬草は三種類。もしくは四種類。後者は採取可能であればとの記載。
種類が多いのは手間だが、どの薬草も採取は難しくはない。
早ければ昼の終わり頃、遅くても夕方には納品完了可能と予想を立てながら通りを歩いていた。
これから依頼主との待ち合わせである。
今回は依頼主から直接以来の詳細を聞くパターンだ。個人での依頼発注では割と多いパターンなので、最低限の対人能力がハンターにも求められる。
しかし依頼書を見たときから予感していたが、合流は時間がかかりそうだ。
いま歩いているこの通りは、市民が最も多く行き交う通りである。いわゆるブールストリームのメインストリートなのだ。ディーは勝手に市場・露店通りと呼んでいる。
中央が馬車や多くの人がすれ違えるよう大きく開け、両端には多くの露店が並立してる。イメージとしては市場と個人商店〜中小商店が立ち並ぶエリアだ。奥には両端が更に拡張された通りが現れる。ここは露店ではなく本格的な建物がならぶ飲食や商会エリアだ。そして奥に行く毎にグレードが上がっていく。この時代では貴重なガラスもふんだんに使われた服飾店や、王都でも名を馳せる有名な大店商店などが立ち並ぶ。
そこでの待ち合わせは問題ない、いままでの依頼でも露店で仕事中の片手間での依頼対応は何度も経験した。問題は目印が記されていないことだ。
依頼主の身長や服装の特徴のみが記されていて、通りを往復してるので声をかけて下さいと指示されてる。
そんな曖昧な指示があるか、と思ったが仕事をしながらの依頼なのだろうと納得する。
しかし通りを往復しながらの仕事だと警吏か? 依頼主は女性とあるし、指定された服装からも見回りの警吏の線は薄い。うーん分からない、この世界でのキャッチのような仕事だろうか。
2026年の現代日本ではキャッチ行為自体が自治体で禁止されてるし(行われていないわけではない)、世界的には法的に禁止されてる国が多い。
この世界でその規制はないだろうから、やりたい放題だろう。
果たして何のキャッチだろう、飲食のキャッチなら食べてみたい。
まだ見ぬ食べ物のことを呑気に考えてたディーは、前から歩いてきた若い女性が目に留まった。
身長150センチ程度で頭頂部のMのエアインテークがトレードマークの、ラフなウェーブがかかったサイドが長く、襟足が短めのショートボブ。
目にかかる長めの前髪に、おろおろキョロキョロと自信なさげな気弱そうな顔立ち。
服装は異国のものか? この辺りでは見ない服装だ。
インナーは現代のスウェット生地のような紺のインナーを首から膝まで着ていて、その上から青のカーディガン、そして高そうな黒のローブを羽織っている。
下は所々小さな痣がある細い脚をさらけ出し、くるぶしまでのブーツを履いている。
背中には小さい魔石が埋め込まれた杖を差している。
この人だ。間違いない。
キャッチではなく自分で商品を売り歩いてるようだ。
首から掛けた大きなカゴには、緑色の液体が入った容器おそらくポーションが歩く度にガチャガチャと音を立てている。
ポーションの歩き売りなら、そう依頼書に書いてくれれば早く見つけられらたのに。
ディーは話す前から、目の前を通り過ぎようとする女性に、気の抜けた印象を抱いた。
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次の更新は7月20日12時です。




