地上へ
「・・・・・・・・・・・・・・・」
言葉が出なかった。
見たことがない生物。
それをいとも簡単に制圧してしまう3番隊。
自分があの場に立っていたらどうなっていただろうと・・・
地面がない、空気もない、空中で戦うことの難しさを理解はできないが、
あっという間に、簡単そうにやってのけた。
敵からの侵入、攻撃を阻止してみせたのだ。
さっきはあれ程距離が近く話していたが、今は遠く感じる。
自分にはないものをたくさん持っているように感じる。
同時にかっこ良くも感じていた。
未知の敵に対して完膚なきまでに、相手にほぼ何もさせずに攻略し切ってみせたのだ。
高揚しない奴がどこにいる。
「・・・・・クソッ・・・」
今まで他人に対して反発してきた部分が表に出る。
自分の綺麗な感情を押し殺して、自分を守るかのように体全体を反発する自分で覆い被せる。
これまでの自分がやってきたように、本人の意思関係なく自然と言葉が表に出てくる。
自分を隠せるとも思っているのだ。
「3番隊、帰還した!」
「お疲れ様です!状況は把握しています。医療室へ伝達済みですのでそちらへ向かってください。」
「話が早くて助かる。副隊長、頼めるか?」
「ああ、私に運ばせてくれ。」
「ごめん、姉ちゃん。」
「あまり喋るな。早く見てもらおう。」
そう言って弟を支えながら医療室へ足を運ぶ二人を目で見送る。
「君がいる手前、皆怪我なくここに戻ってきたかったんだがな・・・。すまない皆、私のミスだ。」
「今回は私もシュウ君にかっこいい姿みせたいなと思って少し調子に乗っていたかもしれません・・・」
「・・・私もごめんなさい・・・・」
「・・・・・・・」
『僕がもっとサポートできていたらこんなことには』
帰還後周りの空気が、隊長の言葉から暗くなっていくのがわかる。
勘がいい隊長はすぐに気づき、気持ちをすぐ切り替える。
「起きたことは仕方がない!次どうするかを考えよう!
次同じようなことが起きないようにすればいい!」
「そ、そうですね!早速訓練しないと!」
「ん・・そうする。」
「う、うん、そうだね!」
『隊長、いいこと言うじゃん』
「ちょ、ちょっとやめてよ!!」
「ガハハハハハハ!ゆうようになったなコウタ!」
「い、今のは違うくて・・」
場が明るくなり、皆和気藹々と笑顔になった。
その場で理解できないのが一人。
「なんで他の奴らも謝る!あれはどー見てもヤマトとかゆうやつの自業自得だろ!!」
「シュウ君、これは我々防衛隊の考えだが、隊のミスは全体の責任だ。
今回は皆浮かれていたことをきっかけに注意力が散漫した。
皆しっかり動いてくれていたが、それぞれで出来たことがあったはずだと。
一人が怪我を負えばそれだけで防衛隊の戦力が落ちてしまう。
その隙間だけで敵が攻めてくる危険性だってある。
だから皆支え合って立ち向かわないといけないんだ。」
皆話を止めて真剣に隊長の言葉を聞き、頷く。
「ただ、私は皆でサポートしながらそれぞれが誰かのためを思って行動することこそが綺麗だと思う。
自分以外が怪我や失敗を未然に防げるように、自分から行動する。
自分だったら何ができるだろうとか、この人のために力になるためには、とか。
だから私は3番隊を家族のように思っているし、どんなことに関しても力になりたいと思っている。
恋愛相談とか人生相談とか、そんなんな日常でのことでも構わない。
私は、自分が生きている間は君のような人も含めて手を差し伸べてあげられる人になりたいんだよ。」
心にくる。その綺麗な言葉が自分が小さい時にも言ってくれれば、今の自分はどうなっていただろう。
物心ついた時から家族以外、自分に接してくる、自分と話に来る人などいなかった。
今までの人に対する考えをひっくり返されたような気分だ。
素直に自分と向き合ってくれる人が目の前に現れてくれた。
わかっている。わかっているが、素直に言葉には出来なかった。
「俺にはわかんねえよ・・・」
「これからわかればいいさ。焦る必要はない。
わからないと言うことは、伝える側次第では理解できると言うことだからな。」
「そうよ。ここは世界屈指の機密施設で世界屈指の戦力を備えている団体だけど、皆人格者が多いのよ。
それだけ、いろんな経験をしていると言うことね。私は防衛省出身だけど、
覚醒者は誰しもが一般人だったんだから。
私も君の態度は気に食わないけど、いてくれたら楽しくなりそうね。」
「うるせえ!」
そんな態度を示す自分に隊長微笑ましい表情となる。
「よし!それじゃあシュウ君!君についてだが、正直我々とともに来てほしいが、人生を左右する決断だ。
1ヶ月後に君のところへ向かおう。それまで回答が出なくても、君の気持ちを聞かせてくれ。」
「ああ、わかった」
「それじゃあ着替えてまたここに来るからちょっと待っててくれ。
皆も疲れただろう。何かあれば連絡するので解散!」
「「「「はい!!」」」」
そう言って今回の作戦に参加した皆、隊長含め戦闘服から着替えに行くのか部屋から出て行く。
オペレーター室に残ったのはサポートのカオリと俺。
皆が出て行った後に、椅子に座って思いっきり伸びていた。
「ん〜〜〜〜〜!!!!はぁ。疲れた。
ちょっとシュウ君体伸ばすの手伝ってくれない?」
「・・・・・・・なんでだよ。」
「いいじゃない少しくらい。」
「チッ・・しゃーねえな。どうしたらいい。」
「ちょっと後ろ向いて、背中同士くっつけて、腕組んで、お辞儀するヤツ。」
そう言われて言われたとうりにする。
二人でストレッチなんてやったことがないので、動作で言われるがままにする。
先に例としてやってもらうと思いのほか伸びた気がして気持ち良かった。
やられたように、今度は自分がお辞儀してカオリの背を伸ばしていると・・・
「何してんだ君たち・・・・」
「・・・・・・・・・隊長?」
「・・・・・・・・・・・・」
そのまま固まる。
(・・・・・どうしたらいい・・・)
「カオリ、一旦私と変わろう。」
「は、はい!シュウ君おろして!」
「あ、ああ」
カオリをおろすと、隊長が背中を向き、腕をがっちりと掴み、
「さあ、覚悟しろ。」
思いっきり俺を宙へと上げた。
これでもかと言うくらい背中を曲げて。
「い、いたっ、い、いででででででで!!!!」
「生意気な態度のお礼だ!!!」
その体制が1分ほど続き、解放されるとスッキリと言うより腰と背中がイカれるかと思った。
「さて、じゃあ君を家まで送る。体も万全だろうから明日から学校にも行ってこい。」
「・・・・・・言われなくても・・」
「それじゃあ行くか。少し送ってくる、しばし留守にするのでその間は任せた。」
「わかりました。行ってらっしゃい。シュウ君もまたね。」
「・・・・・あぁ・・」
そう言ってオペレーター室を出て行く。
前回通った道とは違う通路へと入っていき、1つの部屋に到着する。
「ここだ。」
隊長が先に入ると、後を続いて俺も入る。
中に入ると10畳ほどの部屋、左右の壁のガラスから外が見るようになっており、周りを見渡している間に隊長が操作板を操作すると、正面の壁中央の扉が開く。
「さあ、乗って乗って。」
中に入ると左側には操縦席、右側には8名ほどが座れそうな座席がある。
「どこに座ってもいいぞ。なんなら操縦するか?」
「いや、いい。」
「・・・・・そうか。」
(なんで残念そうなんだよ・・・・)
中に入り、座席に座る。
「よし、行くか!」
そうやって、濃い時間を防衛基地「アマテラス」にて過ごし、地上に戻る。
少し残念な気持ちもあり、同時に現実に戻るのかと嫌な記憶も蘇ってくる。
宇宙空間、地球上を飛び回れる移動用小型艦。
その中にあるデジタル時計で示された「19:40」の数字を見ながら。




