結局何だったんだ・・・。
(なんだったんだ結局・・)
宇宙空間から無事帰還。
出撃の前、戦闘服が掛かっていた自分のロッカーの前。
愁は今回の敵について考えていた。
自分の運命を変えた敵。
突如として公園に現れ、腹を突き刺された。
あの感覚は今でも鮮明に覚えている。
溢れる赤色。
痛みはなく、意識が薄れる感覚。
思い出したくなくても考えてしまう。
同じ見た目であるからこそだ。
さらに、俺のことを知っていた。
同じ見た目ではあったが、情報共有をしていたのか・・・。
今になっては分からない。
基地へと戻る最中。
別の部隊が何やら敵を複数名抱えながら帰り、一人は戦艦事基地の近くへと運んでいた。
彼らの表情は輝いており、我ながら少し引いてしまった。
そんなことを考えながら、ロッカーの前で何もせずにぼーっと突っ立っていると、
「おい、大丈夫か?」と哲が話しかけてくる。
「ん・・あ、ああ。わりい。」
「着替えないと置いてくぞ。」と哲は言いながら、戦闘服を脱ぎ終え、ロッカーを閉める。
自分が出遅れていることに気づき、急いで戦闘服を脱ぎ始める。
先にブーツを脱ぐことを忘れていたので、服を脱ぐ途中で座り、ブーツを脱ぎ始める。
どうやって脱ぐのかと思ったが、スニーカーで言うところのシュータンに振れると、勝手に締め付ける力がなくなり、簡単に脱げるようになった。
両足をポイポイと家の玄関のように脱ぎ捨てる。
内心焦っていたので、上着とズボンもパパッと脱ぎ終わり、ピチッとしたスーツ状態になる。
ロッカーにそれとなく入れ、ピチッとしているスーツに出撃前は感じなかった恥ずかしさが生まれ、そさくさと哲が向かった方面へと進む。
出撃前に通った霧のシャワールームへは向かわず、出口専用の道へと進む。
その先には男女別々に分かれる場所があり、迷わず男のマークが書いてある場所へと入る。
入ると、哲が俺を待っていたかのように座っていた。
「やっと来た。」
そういうと、哲は立ち上がる。
そんな彼に「待ってたのか?」と尋ねると、迷わず「まあな」と返事が返ってくる。
心なしか少しうれしかった。
「この扉の先がシャワールーム。そこでこのスーツを脱ぐらしい。」
哲が扉に向かって指をさす。
すりガラスの様に、中が見えなくなっているので何があるのかわからないが、哲が言うようにお風呂を思わせる雰囲気だ。
「このままでいいのか?」
「先脱いでもいいらしいが、あまりお勧めしないって言われた。」
「そうか。」
スーツを着たままでいいらしく、そのまま扉を開ける。
中は宇宙にある防衛基地だというのに、大浴場がそこにはあった。
温泉?につかる隊員たちや、体を洗っている隊員、はたまたサウナに複数人で入りに行く隊員たちなど様々である。
さらにすごいのは、上を見上げると星々が輝く宇宙が見え、さらには地球までみえているのだ。
ここまでの贅沢を誰が経験しただろうか。愁は圧巻の光景に、開いた口が収まらない。
愁だけではない、隣にいた哲も同じだった。
「うわ~」
「すっげえ~」
愁は素直に感動していた。久々の感情表現である。
普段の愁であればここまで素直な少年の顔をすることはない。
今日だけで数々の経験をしたこともあり、自分を形作る仮面がずれ落ちていた。
「いい顔するじゃないか二人とも!」
そこに現れたのは愁がよく知る人物。
上を見ていた目線を正面へと戻し、話しかけてきた人物を見る。
金剛隊長であった。
愁は興味と感動に満ち溢れていた表情から、むすっとした表情へと逆戻り。
(んだよ・・・)と思いながらも見るとすっぽんぽんだったのだ。
愁はその大胆な格好に驚き、言葉を失った。
大浴場のため、当たり前ではあるのだが、大浴場や温泉など行ったことがない。
少しの放心状態を得て、正気に戻った。
「大丈夫か?」と隊長が声をかける。
「あ、ああ。」とぎこちない言葉が出る。
何かと察しが良い金剛隊長はこの機会に、タメ語の例を返そうと企む。
その感情が表に出ていたのか、ニヤニヤしていた。
嫌な予感がしたので「哲、行こうぜ。」と誘って早々に立ち去ることにしたのだ。
あえて哲は何も触れなかった。変に苦笑いになっている。
立ちシャワー専用の個室があり、その前に辿り着くも、哲と立ち止まる。
「そういえば、これどうやって脱ぐんだ?」
愁はスーツに触れ、引っ張りながら知っているであろうと哲に聞いてみる。
「・・・・・・・・・?」
質問を受けた哲はスーツを愁と同じく触り、首元を引っ張っている。
頭にハテナを浮かべながら、こちらをみるも、わからないようでだんまりであった。
が、哲が思いついたのかスーツを着る際に触れたエンブレムのことを思い出し、
胸についているエンブレムに触れると、体の密着がなくなり脱ぎやすくなった。
着る前の状態へと戻ったのだ。
「愁。エンブレムに触れたらいけたぞ。」
「まじか。」
そう言われて愁も試すと、体を密着していたスーツが緩まったので安心したが、咄嗟にここで脱ぐと真っ裸を晒すことになるので、それは嫌だと言わんばかりに個室のシャワールームへと入った。
人1人しか入れないスペースほどの個室だったが、目の前にはシャンプー、リンス、ボディーソープ、洗顔と書かれたボトルが壁に備え付けてあった。
わからないのは、自分の溝打ち正面あたりの位置にあった3つのボタン。
ステンレス製の押し込むボタン。左から赤、赤、青と縁が光っていた。
ボタン上には点字があり、ボタン下にはシャワーのマークがあったが、青は嫌な予感がしたので排除し、赤に光る一番左のボタンを押すことにした。
思った通り、上のシャワー口からお湯が出てきてくれたようで、全身を清める。
シャンプー、ボディーソープとそれぞれ使用し、体を洗う。
リンスは使わず、洗顔は毎日なんとなくしていたので、その流れで顔も洗う。
シャワーは早い方で、あっという間に終わってしまった。
ただ、少しの興味で真ん中のボタンを押したくなってしまうのは男だからだろうか・・・。
全て洗い終わった上で、ボタンを押してみる。
するとシャワー室の壁から霧状にシャワーが左右から体へ吹き付けられる。
これが思いの外気持ちよかった。
体の汚れが取れているような気分となる。
顔にも当たるので、目は瞑っていないといけなかったが。
シャワーも終わり、外に出ようと考えたところで思いとどまる。
(俺、裸じゃね?)
そう、愁は自分の裸を見せるのが年齢的にもあるが、嫌だったのだ。
なんせ恥ずかしい。
成長途中の体。
なんとなく嫌だった。
(どうする・・・)と、タオルのような隠せるものなど持っていない。
戦闘用のスーツをもう一度着るか・・・?とも思ったが、ビチャビチャであった。
右手でスーツを拾い上げ、これをもう一度着るのか・・・?と再度考えるも、やはり億劫になる。
考えていると、シャワー室の扉が声と共に突然開く。
「まだか!?早く出てこい!」
驚き、振り返りざまにシモをスーツで隠す。
すごくいい笑顔の金剛隊長。
その少し後ろにさりげなく哲がいた。
「ちょっ!?いきなり開けんなって!!」
「何を隠す必要がある!風呂に入るぞ!風呂に!」
腕を捕まれ、引っ張られる愁。
相変わらずシモはスーツで隠したままだが・・・。




