防衛終了
アマテラス基地。
屋上、屋根の上。
戦闘服を纏う男。
スコープを除き、目標物を捉える。
「すぅ・・・ふぅ」と静かな空間に、深呼吸の音。
静寂が訪れる。
そして、彼は引き金を引いた。
◇
「水島!!」
通信機越しに聞こえる彼の叫びは、危機への必死さを物語っていた。
「はい!」とそれに応える水島隊員。
タロスを投げた方向と真逆の方向へロボットを操作する。
ロボットに内蔵されているジェット機能で全力脱出を行うのだ。
しかし、光は徐々に強くなり、間に合わないと思ったその時。
「・・・シュン!」とロボットに内蔵されているマイクを通し、彼の耳元へと聞こえてきた。
その直後には、タロスの胸部。
体が光り始めた部位に風穴を開け、光を帯びていたパーツを体から切り離す。
弾丸のサイズが大きかったのか、胸を丸ごと抉るように、
タロスの機械的な体に30cmほどの穴が空いている。
「チッ。後藤のやつ・・・。」
「・・・・・・さすがですね。」
『・・・聞こえてんぞお前ら。お礼はねえのかよ、お礼は。』
「・・・今度飯奢らせてくれ。」
「後藤さん。ありがとうございます。」
『替えがあるとはいえ、たけえもんな。それ。』
「バイク野郎にやられちまう。」
「・・・・ハハ。」
『・・・和田。後で使った武器の清掃とメンテナンスやっとけ。』
通信機越しに小林隊長の声が聞こえる。
「!?隊長!そりゃねえって!」
『水島!お前もだ。』
「え!!ちょっと!」
『今日中に終わらせとけよ。』
その言葉を最後に隊長からの通信が切断される。
彼は基地に辿り着き、バイクの状態を確認し終えると、基地内へと戻っていった。
「勘弁してくれよ・・・」
「和田さん・・・・」
この後待ち受けている作業を想像し、何時に終わるだろうと考えながら、
ロボットを基地へと向かわせる。
その足取りは、少し遅いように感じた。
◇
全ての防衛隊が目標を排除。
その光景を見ていた総司令。
「これで終わりだとは思えんな・・・。」
そんな言葉を言い残し、大破した戦艦5隻、宙に浮かぶ戦闘不能となったタロスを眺める。
初めに出現した杖を持った奴が見当たらない。
戦艦を出撃させていたところまでは追っていたが、それ以降軍隊に隠れ、見えなくなってしまった。
不安を感じ、即座に全体へと指示を出す。
「全体に告ぐ!今回の戦いを呼び起こした存在は未だ撃退できていないはずだ!
注意を怠るな!発見次第皆に伝えろ!」
耳に装着している通信機越しに指示を出す。
アマテラス基地含む全体へと通信が行き届く。
「後藤!そこから周囲を見てくれ。他隊員では見逃す可能性がある。
見つけ次第発砲して構わん。許可する。」
『っ!了解した。』
5番隊の狙撃を任されている後藤へと単独で指示を出す。
声をかけられた後藤は一瞬驚くも、冷静さを取り戻し、ことの重大さを理解する。
元凶が捕まっていない恐怖は彼もよく知っている。
同じことが何度も起こる危険があるのだ。
更に、情報を与えることにもなる。
逃すのは危険だ。
彼は全体を見渡した後、双眼鏡で遠く離れた先を確認する。
現れた場所を知っていたので、その場所を中心に探した。
予想は的中。
戦艦が現れた場所より中央やや上。
杖を持ったタロスがこちらを俯瞰して見ていた。
ただ気になったのは、杖の先端部分がピカピカと光っていた。
一気に寒気がした後藤隊員は、急ぎ狙撃銃を構え、狙いを定めると即座に発射する。
しかし、撃った直後杖を足元へと一度叩くとタロスの周辺空間が捻じ曲がる。
後藤隊員も気まぐれながら、模擬戦を見ていたので瞬間移動だと察する。
「3番隊正面よりやや上の方向!やつを発見した!瞬間移動が始まる!注意しろ!!」と、通信を繋げ、全体へと共有した。
3番隊を含む全ての隊員が見渡し、発見したところでタロスの姿が消える。
出現したのは・・・・・・総司令の近くであった。
総司令の正面、20m程先で空間が捩れ始め、レーザーが放たれる。
総司令に放たれたレーザーは彼の正面でバリアに阻まれ、傷つけることはできなかった。
そして姿を見せたタロス。
「チッ!鬱陶しいですね・・・。簡単にやられてくれればいいものの。」
表情が変わることはないが、心底鬱陶しそうな言葉を並べる。
「何が目的だ。」総司令は睨みつけながら言葉を投げかける。
「そう怖い顔をしないでください。」
その発言の直後、横から発砲音が聞こえ、杖のタロスへと弾丸が伸びる。
その弾は見事に頭を直撃するものであったが、一筋縄ではいかなかった。
タロスが展開している障壁に阻まれ、宙で弾丸が止まっている。
発砲した本人である後藤は「チッ!」と苦言を漏らしていた。
「お前も簡単にはやられてくれないな。」
「ふっ。皮肉ですか?通用しませんよ。
しかし思いの外、あなた達はお強いようでした。
想定外です。改めて攻めますので、覚悟しておいてください。
こちらもそれなりの準備をしてまいります。」
「何・・・。」
「一方的な蹂躙にならないよう、楽しみにしてますよ。」
それだけを言い残し、杖で足元を一度突く。
空間の捩れが始まったようで、徐々に彼の姿が捩れていく。
しかしその光景をただ見守っている防衛隊ではなかった。
4番隊の富岡隊員が銃を構え、『転送!』と唱え、引き金を引く。
彼のオリジンは『転送』。銃弾を杖のタロスのそばへとワープさせる。
捻じ曲がっていた空間のそばから空間が開き、銃弾が放たれる。
放たれた銃弾は捩れに吸い込まれ、銃弾ごと巻き込まれていった。
命中したのかは不明。
だが、彼の目的はそれだけではなかった。
『アラーム弾。巻き込めたようです。』と通信機を繋げ、総司令へと報告。
「よくやった。」と彼を讃え、全体へと再度通信を繋ぐ。
「皆よくやった。無事防衛成功だが、まだ危機は目の前にある。
休息をとり、いつでも体制を整えられるよう、準備をしておいてくれ。
新人の3名。粟生屋、宮城、新田。よくやった。
後日改めて会議を開く。
呼ばれたものは参加するように。以上。」
通信を切断。
佐藤総司令はそのまま基地へと戻っていった。
他の舞台も通信を受け、そのまま基地へと戻っていく。
それぞれ周囲を改めて残党が残っていないか確認すると、各部隊で固まり、基地へと戻っていった。
第2防衛戦が終了しました!
主人公にとっては初めての防衛戦かつ、大規模な戦い。
まだまだ危険が残っている中で、どう立ち向かうのか・・・。




