やる気を出した者たち
あいつにだけ伝えるはずの叫びが気づけば自分に主導権が戻っており、
その場で大声で叫んでしまった。
その事実に愁は驚きを隠せず、苦い表情をしてしまう。
再度3番隊が集まる方向へと視線を向けると、
全員がこちらをキョトンとした顔で眺めているのがわかった。
(くそっ!なんでこう言う時だけ、目がいいんだよ・・・)
自分の視力を恨んだことはこの瞬間が初めてだ。
表情まで見えなければ、まだマシだったかもしれないが、
あの表情は明らかに自分の叫びが届いているであろうという証明でもあった。
そんなことを考えていると、隊長がこちらへ向かってくるのがわかった。
(逃げるか・・・?)などと若干自分の行ったことへの後ろめたさにそんなことを考えるも、逃げてもどうしようもないことに気付き、その場で諦めた可能ように立ちすくむ。
隊長が急ぐことなく、すぐ近くまでよってくると、
「愁くん・・・大丈夫か?」と、心配そうな顔でこちらの顔を伺う隊長の姿。
全くと言っていいほど問題ないが故に、
どのような表情で対応すればいいかと悩むものの、
とりあえず「も、問題ない・・・です。」と、
辿々しくも自分の状況を簡単ながら伝える。
金剛隊長はとりあえず安心したかのような表情になる。
「愁くん。先ほどの戦いは見事だった!
あんなことができるなんて想像してなかったぞ!」
「い、いえ・・・。」
「なんだ?そんなに恐縮するな!
大丈夫!!あとでしっかり説教してやる!」
「え!?」
「当たり前だ!!君は新人らしからぬ、1人で敵戦艦へ突っ込んでいったんだ!
流石に心配したぞ!もっと仲間を頼れ!!」
「す、すんません・・・」
「今回は問題なかったものの、今後一筋縄では行かない敵も出てくるだろう。
油断してなかったとしても、1人での行動は危険だ。
今のうちは誰かと共に行動しなさい。
君は龍司くんの庇った行いを無駄にする気かい?」
「・・・・・・・・・・・」
「あとでしっかりしごいてやる!覚悟するように!」
「っ!!!」
「ほら、いくぞ!」
正論。
俺でも理解できる内容に、ぐうの音も出なかった。
とりあえず隊長の後ろをついていく。
3番隊が集まる方面だ。
そこまで離れていないが、
隊長が移動速度がそこまで早くなかったからなのか、
少ししてから皆の元へ到着。
言葉は特に出てくることはなく、少し暗い表情になっていた俺を、
さらに皆は心配そうに眺め、励ますよう声をかける。
「愁くん!大丈夫でしたか!?」
「愁!やるな!お前!」
「さすがだな。」
「あとで飴をやる。」
「す、すごいです!感動しました!」
「!? ? ? ?」
自分の周囲に集まり、突然の賞賛にあたふたする俺。
それを暖かく見守る金剛隊長。
(おい!どうゆうことだ!?)
(『チッ。俺の手柄だって言うのによ〜』)
(投げ出したのはてめえだろ!!)
(『嘘だって!悪かったって!』)
碌でもないやつである。
そう思ったのは愁で、
彼はトモのふとした発言の優しさには現状、気づくことはなかった。
「君たち!そこまで!
愁君を賞賛するのはいいことだが、そろそろ次の指示を待つとしよう。
総司令に指示を仰ぐ!
何があっても対応できるよう、準備は怠らないように!」
「はい!」と全員が返事を返す。
愁を宥める時間は終わりのようだ。
しかし、皆が彼の活躍を見て心を震わせている。
新人らしからぬ活躍。強大な戦力が加わり、頼もしい気持ち。
自分もまだまだ足りない、もっと成長せねば・・・との感情も蠢いていた。
◇
「私たちも負けていられません。」
「教授。我々はどう動きましょう。」
「富岡さん。防衛戦では隊長ですよ。」
「すいません美豆隊長。」
語るは4番隊隊長、美豆圭人と副隊長、富岡悟。
その後ろに待機している4番隊メンバー。
彼らは総司令指示のもと、目標地点へと到着。
見つめる先には、戦艦1機とタロス複数。
美豆隊長は隊員たちへ振り返り、これから行うことについて説明をする。
「皆さん。我々が駆り出された・・・と言うことはわかっていますね?」
「はい。」と全員が頷き、反応する。
「総司令からの指示です。
今後の対策として、彼らの生体情報をできるだけ回収していきましょう。
総司令は今回の戦いだけで終わるとは考えていないようです。
タロスなるものの生捕り、または完全な状態での回収。
また、部品なるものでも多く集めてまいります。」
真剣な表情で、隊員達に語りかける隊長。
彼ら4番隊は研究者。
侵略者である、未知の生命体、文明を解き明かす物達。
その実働部隊である。
「しかし危機に面する、又は対処が困難と判断した場合はその限りではありません。
自分の命を優先するように。
皆、オリジンの使用、武器の使用を許可します。
危険な戦いであることを考慮し、いざとなった場合は離脱を。
他の隊に援軍を要求します。
パーツなどの回収は戦闘後でも可能です。
皆さんの顔を見る限り、少し高揚しているようですが、
私も実はタロスに対し、興味が尽きません。
防衛戦後は、皆で研究室に引きこもることになるでしょう。
少しの情報でも集めますよ。」
「はい!」と高らかに返事をする隊員。
皆が、返事の奥底で高揚しているのが少し緩んだ表情に出ていた。
極端な研究バカたちの集まりである。
その対象に直面した際には、正面しか見えておらず、
実のところ、ある意味で一番危険な部隊かもしれない。
そんな変態達が集まる4番隊は、
各拠点防衛基地でも有数の部隊だ。
アメリカのスター基地エンジニア、
魔道具開発のルグ兵装局、
バビロン所属、遺跡研究機関、
他、各国の研究機関から絶大な信頼を獲得している。
「さて、皆さん。研究材料の回収へと赴きましょうか」




