防衛戦:2番隊 山本辰巳
投げた磁石を追うように引き寄せられる男。
右手を磁石へと伸ばしたまま、移動する姿はまるで空飛ぶヒーローのよう。
表情は至って真面目。
敵6体の位置を移動中、把握する。
彼が放った磁石の球速は110km。
移動速度は早く、空気抵抗のない宇宙空間では速度が一定で進み続けるが、
彼のオリジンである「磁力」は、名前の通り引力と反発を引き起こす力である。
早く動いている物体に対し、引き合う能力を発動。
動き続ける物体は、徐々に速度を落とし、互いに引き合うこととなる。
つまり・・・。
彼の計算は完璧であった。
敵6体。
その中心を目掛けて放った磁石。
右手をかざし、引き寄せた自分の体。
自分の体と磁石が引き合い、右手に収まった地点。
それこそ敵6体の中心。
彼は”ニヤリ”と口を歪ませた。
完璧であった自分の感覚に高揚感が抑えきれない。
その光景を見ていたタロス達。
迫ってくる光景を目で追い、敵の出方を伺っていた。
は何をすることなく自分たちの中心にたどり着いたため、
臨戦態勢を取ったまま少し呆気に取られる。
「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」
タロス達の手には槍を携え、矛先を無言で辰巳へと向けている。
「ハハっ!」
その光景に、不思議と笑い声が溢れる。
しかし、笑いで終わるわけはない。
右手の磁力を解除し、磁石をつかむ。
それを胸の前に浮かせ、正面の1体へと視線を送る。
その視線に、正面の敵は手に持つ槍の力を強めた。
が、次の瞬間。
右拳を強く握り、1回転した辰巳。
気づいた時には、彼の右側で攻撃のタイミングを伺っていたタロスが爆発した。
「っ!?」
「流石に舐めすぎだな・・・。」
右手を軽く上げ、ため息混じりで言葉を吐き捨てる。
少し経たないうちに、磁石がどこからともなく彼の右手に吸い込まれ、
手の甲の部分に引っ付く。
「やめだ。早くママのところへ戻ろう。」
そういうと、彼はポケットから3つ、同じ形の磁石を空中へ浮かせた。
「全員!防御体制ですよ!!」
5体のうち1体が、残りの4体へ向け指示を出す。
彼らは手持ちの槍を自分の正面で回し始める。
手首が回るのか、みるみるうちに回転速度が上昇し、
触れたものを粉砕すべく、防御体制を取っていた。
辰巳が取り出し、空中に浮かせた合計4個の磁石。
そのうちの一つを右手に取り、残りを胸の部分に引っ付けた。
(10秒だ。)
彼が右手に持った磁石を足元に浮かせ、1体目を視界に収めた。
陸上選手のスタートダッシュのように体を丸め、
右足の裏に、磁石を付ける。
『S!』
先ほどとは違い、今度は互いが反発する。
その反発力は一瞬で敵の斜め背後に移動し、
タロスや人間が目で追えないほどの速度。
辰巳はタロスの背後へ、
反発に利用した磁石は敵へと吸い込まれていく。
敵へと放たれた磁石は槍の防御で完封されることはなかったが、
磁石へと接触し、双方にヒビが入る。
しかし、磁石の勢いは止まず、
ヒビが入ったものの、敵へと吸い込まれ、貫通。
それさえ計算していたのか、少しズレた軌道は、
頭部に吸い込まれ、貫通。
頭部含め全てメカのため、部品が粉砕。
回転していた手首が徐々に遅くなり、生体活動を終えた。
一方、辰巳副隊長。
瞬時に敵背後へ移動すると、胸につけていた磁石を取り出し、進行方向へ投げる。
体を捻り、足を磁石の方へと向けると、
再度、反発を利用し、背後へ急接近。
そのまま排除するかと思いきや、タロスの体を背後から押し込み、
もう一体へと突っ込む。
双方の槍が互いを削り切るまで動き続け、体へと命中したところで爆発。
(3秒。)
最後の一体となったタロスは自分の指示が間違っていたことに気づき、
手首を回転させ、防御体制と取っていた自身の行動をやめた。
「貴様あああ!!簡単に死ねると思うなよ!!!」
タロスの背中部分から腕が生え、合計4本の腕となる。
その腕は伸び、砕かれた仲間達の残骸付近にある槍を取り、
4本の槍を手に、辰巳と対峙する。
(6秒。)
辰巳は極限の集中状態にあったため、彼の言葉など聞いていない。
いつの間にか体に引っ付き、戻っていた磁石4個。
磁石が引っ付いている場所は先ほどと同じ場所ではなく、
右足裏、右肘、右拳、胸であった。
そこから彼の行動は早く、右足裏の磁石の反発作用を利用。
一瞬で敵の正面、懐へと入り込む。
タロスは目で追うことしかできない。
拳を強く握りこみ、上半身を捻る。
右肘を後ろに下げ、1撃に全てを込める。
下げた肘と磁石が反発。
人には出せない速度での右ストレート。
高速で放たれた拳は敵の胸へと吸い込まれ、最も簡単に貫通。
その後の行動も早く、胸と拳についていた磁石を利用し、反発。
その場から即時離脱し、敵の動きを見る。
(10秒。)
秒数を数え終えると案の定、体が爆発し、合計6体のタロスを撃破することに成功。
「ふっ。ピッタリだな。」
彼こそが、2番隊副隊長。
『磁力』のオリジンを覚醒させ、奄美隊長の元で外敵から守る役目を果たす古参。
46歳にして現役で活躍する、髭もじゃスキンヘッドの山本辰巳である。
◇
シーンは切り替わり、3番隊NO3の人物が日の目を浴びる。
腰には刀を携え、髪を一本括りにする男性。
宇宙空間を、皆のように早く動けるわけではなく、
ブーツの力を使い、最大限高速化するしかないが、
短距離での移動におけるブーツの使い方はずば抜けてうまい。
その戦闘スタイル。
とくとご覧あれ。




