模擬戦・・・?
「悪い。大丈夫か?」
「ああ。」
「多分・・・。」
2人の顔色が優れない。
下を向いたまま、2人とも深呼吸をしているようだった。
オーラに晒されていた時間は約40秒。
1分が限界なのに対し、かなり長時間恐怖の中にいた。
それこそ、死を目の前に一歩でも動けばすぐ殺されるような圧力を感じながら。
(とも、どうすりゃいい。)
(『・・・・・わからん。』)
(お前でもわからなかったらどうしようもねえじゃねえか・・・)
(『心を強く持ってもらうしかねえな・・・。お前も体験するか?』)
(・・・・できんのか?)
(『よし。ちょっと待ってろ。』)
あいつが俺に、皆が感じている恐怖を体験させてやるという。
興味があったわけではない。
ただ、心ここに在らずの友人たちに戻ってきてもらえるよう、
自分も経験するべきだと考えたのだ。
「お前ら、俺になんかあったら頼む。」
「は?」
「え?」
地面に座り、胡座をかく。
目を瞑り、合図を送る。
(頼んだ。)
(『気絶すんじゃねえぞ・・・・?』)
内側からドス黒い何かが溢れてくる。
それは胸の中心から愁の全身を巡り、決して体から外には出ることはなかった。
(!?!?!?)
突如、襲ってくる死のイメージ。
指一本でも動かせば、切り落とされかねない緊張感。
あまりにも濃密な殺気。
(っ!!・・・・・・・・・・やべえ・・・。)
極度な緊張感。
冷や汗。
パニックに陥りそうな、精神への負担。
徐々に耳鳴りが起きる。
動悸も徐々に早くなる。
息ができない。
(『止めるぞ!』)
ともの合図とともにドス黒いオーラが引き、体に戻っていく。
極度の緊張状態からの解放。
体の力が抜ける。
「はぁ!はぁ!はぁ!」
過呼吸。
汗が滝のように出ていた。
体の震えが止まらない。
(やばすぎんだろ・・・・)
(『今のはやりすぎだが、それに比べてだいぶ弱い波動を常に放ってた感じだな。』)
(くそっ。こりゃ俺でも近づかねえわ。)
「ちょっと!大丈夫!?」
朔が俺の状態を見て駆け寄ってくる。
ふと見上げると、疲れ切った顔の中に、心配そうな表情も見える。
「そっちこそ・・・。」
「愁。僕はもう大丈夫だ。」
いつの間にか、すぐそばにいた哲。
本人の表情は普段と変わらず、無表情に近い。
本来は、無理をしているのだが、それを周りに見せようとはしないようだ。
「お前らが感じてたものを体験してきた。
・・・・・・ありゃ、やべえな。すまん。」
「やばいなんてもんちゃうで・・・・。心臓なくなるかとおもたやん。」
「同感。次から頼むぞ・・・。」
「悪かった・・・。」
「まあ、とりあえず1勝取れたし、次も頼むで!」
朔には背中を思い切りしばかれ、
哲は不意に笑いをこぼし、
俺は2人に勇気づけられた。
「次はどうする?最後だぞ?」
「・・・・愁。君は何ができる?」
「何って・・・・オリジンか。」
「それ以外ないだろ。」
「・・・・・ムカっ。」
「お、火付いた。」
「うるせえ!」
「いつもの調子やん!はよ、情報共有!」
「ったく。」
何もなかったかのように普段通りに戻る。
実は2人、事前に愁の状況について金剛隊長から聞かされていたのだ。
独特な雰囲気により、周りに人がいないこと。
それをきっかけに、素行が悪く、荒れていたこと。
事件後の1ヶ月を通して、本当は悪い人ではないこと。
支えになって欲しいと金剛隊長より頭を下げられていたのだ。
朔、哲の2人ともオリジンを発現している。
実は2人も心に闇を抱えそうなほど、壮絶な事件に巻き込まれている。
その経験もあり、同じく壊れてもおかしくない人の助けにもなりたかったのだ。
「俺の能力はオーラ。
自分を強化して、身体能力を上げる能力・・・のはずだ。」
「はず?」
「オーラを飛ばして相手を怯ませたり、
さっきみたいにオーラを全力で人に当てることもできる・・・?」
「なんだそれ?」
「はっきりゆいーな!」
「俺だってわかってねえんだ。
今んとこできんのがそれくらいだからな。」
「そうか。僕は知っての通り物を改変することができる。
決まった条件はない。命の宿っていない物であればなんでもいじれる。」
「私は、知っての通り視線を集めることやな。」
「それ以外は?」
「知らん。多分あらへん。」
「・・・・むずすぎない?」
「私かってどうしたらええかわからんねんもん。」
3人で改めて情報共有を行う。
その上で作戦を立てる。
チームの頭脳は哲。
特攻隊は愁。
サポートは朔という形に変更はない。
その上で立案していく。
・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・
「この作戦で行く。
僕は状況把握をした上で指示を出す。
1人かけたらおしまいだ。
愁は足止めを頼んだよ。
朔は・・・僕が私たアイテムでなんとか自分を守ってくれ。」
「了解。」
「頼んだで・・・2人とも。」
作戦が決まる。
大まかにいうと、長期戦は勝率が低いので、
一瞬でケリをつける手段に出る。
そして、またしてもタイミングよく飛騨隊長からの合図。
3人は再度中央に集まる。
「最後の模擬戦です。
皆さん、お互いこの訓練をきっかけに得られるものも多いと思います。
改めて、自分の糧としてください。
粟生屋さん、宮城さん、新田さんは先輩方や、隊員の方々に行き詰まったら相談してください。
必ず力になりますよ。」
3人に顔をむけ、本気だとわかる表情でこちらを見る。
「それでは、皆さん。中央のオービットへ。」
6人、中央へと向かう。
その間。
「粟生屋!」
リーゼント先輩に指を刺され、意味深な顔でこちらを見ている。
特にそれ以上口を開かず、中心へと向かった。
中心部へ到着。
オービットを正面に、お互いの距離が少し離れた位置で準備。
『作戦通り頼んだよ。2人とも。』
「ああ。
『うん』
『それでは最終第3模擬戦。3、2、1・・・スタート!!!』
飛騨隊長から開始の合図。
オービットが緑に光り、模擬戦が開始された。
愁は事前にともへ制御をお願いしており、自分の役割を全うする。
『タ・・・・!?』
『あ・・・・・!?』
神谷先輩と愁、同時に全力の言葉を唱えようとしたその時。
空間に異常が発生した。
緑のオービットがあった場所に空間の歪みが生じる。
突然の異常事態に6人全員が動けずにいた。
歪みはどんどん大きくなり、
直径2mまで大きくなると、歪んだ空間が黒くなる。
愁はかなり嫌な予感を察知していた。
その予感は的中。
歪みが晴れ、中から出てきたのは見知った存在。
愁の腹に穴を開け、スター基地防衛戦でも見かけたやつと同じ見た目。
あのメカメカしい、二足歩行のロボットであった。
「ほう・・・・ちょうどいい場所に転移できたようですね〜。」
「!?」
「おや、その顔・・・・・なんと!思い出しました!
あなた・・・殺したと思っていたのですがね・・・。」
(まずい!!)
突如、体が咄嗟に反応し、上に飛び、避ける。
咄嗟の判断が功を奏したのか、元々いた場所にレーザーが駆ける。
スター基地で戦っていたやつと同じく、杖を持っておりそこから照射されたのだ。
「あの子の敵です。せめて、命を散らしてください。」
こちらを睨み、声をかけてくるロボット。
その目に怯み、一瞬体が強張ってしまう愁。
突然の状況に飲み込めない哲と朔。
しかし、彼を守り、地球を守る防衛隊は目の前にいたのだ。




