防衛基地、向かう前に小型艦で・・・。
翌日からも学校に通い、いつも変わらぬ日々を過ごす。
皐月さんからは、昨日の放課後の2人について聞かれたが、
ただの知り合いだと返答しておいた。
オーラを消す訓練をしてから、
割と皐月さんから話しかけられることが多くなった。
俺はそれに対し、そっけない態度をとる。
その度に何故か里見さんが睨んでくるのだ。
無碍に扱ってくれた方が会話しやすいのに、
そのような行動は全くしてこなかった。
次第にどう接すればいいのかわからなくなっている。
ともは今の状況を面白がっておちょくって来るし、全く頼りにならない。
愁は人と普通に関わることを、してこなかった。
否、できなかったので、余計にわかっていない。
常人が思い浮かぶ”誰かに相談”という言葉も、彼には全く選択肢に入らないのだ。
ぎこちない距離感で時は過ぎ、
訓練日である土曜日に時は移り変わる。
当日の朝は早い。
平日と同じ時間に目が覚め、朝のルーティンをこなす。
毎日夜の睡眠中はトモと訓練。
次第に練度が上がってきた気がする。
全力の発動時間も3分から5分に伸びた。
劇的な成長である。
トモも驚き顔で感心していた。
(『相棒。今日は勝つぞ。』)
(まだ、模擬戦で何やるか決まってねえっての。)
(『初めから勝つ気で行けよ。ヘタレ。』)
(ムカッ!)
歯磨きの途中でそんな会話をしていた時。
突然のトモからの煽りに対し、顔に青筋が浮かび上がる。
オーラが少し漏れ、手に力が入る。
その瞬間に、歯ブラシが真ん中で折れてしまった。
(・・・・・・・・・)
(『・・・・お前まじか・・・。』)
(誰のせいだと思ってやがる・・・。)
(『悪かったって!と、とりあえず朝の準備終わらせようぜ。』)
それだけ言い残してあいつは引っ込んだ。
なんて行儀の悪いやつだろうか。
そんなこんな言いながらも、あいつにまだ勝ててない俺が言うのもなんだが・・・。
こうやって本当の相棒のように接してくれるあいつに、
本来は感謝しないといけないのだろう。
少しの時間でも、事前にこんなやつと話ができたおかげで、
今関わっている防衛隊のメンバーとも会話できているのかと。
ただ、そんな気に全くさせてくれないのもあいつの責任だと思う。
それは理解してほしい。
そうこうしているうちに、ご飯も食べ終わり、部屋に戻ってきた。
なぜこんなに早起きかというと、事前に防衛基地へ入っておこう作戦だ。
諸々の装備を見て、訓練場で体を動かそうと考えていた。
意識の中で訓練しているのと、
実際の現実での体にとんど違いはなかったのだが、
念の為確認しておこうと思ったのだ。
お昼ご飯も無料。
施設も充実している。
マップを確認したら大浴場やサウナまであった。
仮眠室や、しっかり寝れる個別の寝室まであったので、
生活できそうである。
「行ってきます。今日はご飯なしで。」
「あら、そう?わかった。行ってらっしゃい!」
そんなこんなを思いながら家を出る。
時間は午前10時30分。
夜ご飯も基地で済ませて、長時間滞在するつもりだ。
無くさないようにと、”ケイン”は財布のなかに入れており、
いつもの公園に向かい、小型艦を呼ぶつもりである。
公園に着くと、この時間からも子供達は遊んでいるようだった。
ここでは呼べないなと思いながらも、人気のない場所を探す。
駅から逆方向に進むと、閑静な住宅街が広がり、
車での移動する人が多いのもあり、徒歩で移動する人が少ない。
愁にとっては好都合で、周りに人がいないことを確認すると、
ケインを操作し、小型艦を呼ぶ。
頭上にすぐ到着したようで、
機内に入れるよう、機体下のハッチが開く。
ジャンプで難なく機内に入れた。
オーラの操作も、この程度は慣れたものである。
『お帰りなさい。粟生屋隊員。』
小型艦に搭載されているAIが音声で出迎えてくれる。
そう言えば気にしていなかったが、機内の散策をあまりしていなかった。
大型のキャンピングカー程の広さはある。
この機会に壁の収納や、ほかに触れる場所を確認しようと思った。
座席の方から確認する。
俺お気に入りの座席。
高級感のあるクッション性に、ずっと座れそうなリラックス感。
素晴らしい。
目の前のテーブルは折り畳みのできるテーブルのようで、
壁の中に収納できるようになっていた。
「おいおい、すげえなこりゃ。」
(便利なもんだな。)
「ああ。」
後ろへ進むと座席がない代わりに収納スペースがある。
開けたことがなかったので、開けてみる。
「・・・・・・・・・・・」
(・・・・・・クク)
中にはどこかの隊長が入れたと思われるものが入っていた。
”愁君!ここを開けたと言うことは少しずつでも今の状況に慣れてきている事だろう!
そんな君にとっておきのプレゼントを私から送りたい。
活用してくれ!
スター基地の知り合いのエンジニアに無理言って作ってもらったんだ!
気に入ってくれると思うよ!”
黒い箱の前に直筆の手紙が置いてあった。
確実にあの人からの贈り物であることは文章を見ても一目瞭然だった。
(おい、開けてみろよ。)
「・・・・だな。」
黒い箱を棚から出す。
やけに凝っており、箱の大きさは正方形で、縦横20cmほどありそうだ。
箱の上部には、
”すごく頑張りました。 スター基地エンジニア・アーネストより”と刻印が刻まれていた。
どうやって開けるのかと考えていたが、
文字の下に多角形の溝があることに気づく。
(これって・・・。)
(『あのケインって棒、刺すんじゃねえか?』)
(だよな。)
財布から取り出し、差し込んでみると、
見事にピッタリハマり、最後まで押し込むことに成功した。
すると、箱全体が読み込みに成功したのか、
刻まれた文字がひかり、刻まれた内容も変わる。
”お前、愛されてんな こっち来たら一杯奢れ。 アーネストより”
「うるせえ・・・」
(フッ、可愛げのねえことで。)
「お前もうるせえよ。」
(はいはい。)
箱がひとりでに開く。
すると中に入っていたのは時計だった。
シンプルな作りながら、引き込まれる文字盤だ。
パイロットウォッチのようなシンプルな見た目。
小ぶりで合わせやすく、手に取り、腕につけるとジャストサイズで腕に馴染む。
そう言えば、他の隊員も皆時計をつけていたことを思い出す。
(でもなんでエンジニアに頼んでんだ・・・?)
その疑問はすぐに解消されることとなる。
横についていたボタンを押すと、突然見た目が変化する。
時計だったものが、全面スクリーンの腕輪に変形。
タッチスクリーンで様々な操作ができるようだ。
見てみると、ケインと同じ機能が備わっているようで、
腕輪でも小型艦を呼べるし、通信する相手も選べるようだ。
「もうなんでもありだな・・・。」
(カッケー!すげえなこれ!)
さらに、時計のデザインも変えられるようで、
好みの見た目に設定できるようだが、候補は多くないようだ。
突然画面に文字が表示され、
”増やしたいなら要望をアーネストに直接言うように”
とのことらしい。
はじめのデザインが気に入っている。
サイドのボタンを見つけ、押すと元に戻った。
「便利すぎんだろ・・・。」
箱は丁重に取っておくとして、
他にも実は棚の中に入っていたのを俺は見逃していない。
箱の右側にはサメのぬいぐるみと手紙が。
”愁君!密かに私はぬいぐるみが好きなのです!
私なりに、君に会うかなと思ったものをプレゼントします!”
「・・・・・と、とりあえず全部見るか。」
上の段にも複数、ものが置いていた。
初めに手に取ったのは2冊の本。
体術に関する本。
合気道の本。
似たような本が置いていた。
同時にメッセージも添付されており、
”粟生屋君。まだしっかりと君とは話したことがないが、
私からこの本をプレゼントする。
これからの戦いに役立つだろう。
会える日を楽しみにしている”
もう一通。
”愁!ねーちゃんを見習えよ!
やっぱねーちゃんのセンスさすがだぜ!”
「・・・・・・・・・・・・・」
(・・・・・・・・・・・)
そっと元に戻した。
次に目を向けると、見たことある袋。
手に取ると、棒つきのキャンディーがいっぱい入った袋だった。
メッセージを見ると、
”食べろ。”
それだけ。
なんともシンプル。
「リュックに入れて持って帰ろう。うん。」
(そうだな・・・。)
あと2個あるようだ。
無難そうな袋を見てみよう。
1つは何故か嫌な予感がするので置いておく。
開けてみると、スケジュール帳が入っていた。
メッセージも見つけ、
”僕も同じもの持っています。
色々と思い出も含めて忘れないように、プレゼントします!”
(無難で実用的だな。)
「割とありがたいか・・・。」
そして・・・・。
一番嫌な予感がしている袋。
かなり大きいのが一番不安にする要素でもある。
手に取ると、服が中に入っているのか、感触でなんとなくわかる。
ただ、今まで3番隊の皆から1つづつのプレゼントで、全員分渡されたと思ったが・・・。
袋の外側についていたメッセージカードを開く。
”おい新人。新しく入るらしいお前にとっておきのプレゼントをやる。
まだタイミングがなくて会ってねーが、お前とは何か近いものを感じる。
俺からの魂をそこに預けた。受け取ってくれ。神谷龍司。”
メッセージカードを閉じ、中身を確認するために袋を開ける。
やはり服だったようだ。
取り出したところで口が開いたまま、固まってしまう。
服の背中には”天照 粟生屋愁”の文字。
豪勢に刺繍が施されていた。
「・・・・・・・・・・・・・」
(ハハハハハハ!!おい!これ!特攻服じゃねえか!)
「・・・・・なんだよ近いものを感じるって・・・。
これどうしろってんだ・・・・。」
(ハハハ!!笑っちまうぜ!!!)
「笑いすぎだっての!」
とにかく、見なかったことにして、ソファに掛けておく。
安易な探索だったのに、こんなものまで見つけてしまうなんて・・・。
防衛基地へ行くのが少し億劫になってしまった。
誰と会うのか、そして合同訓練の内容はなにか。
負ける気はサラサラ無いが、
3人の中で一番能力について練習していると自負している自分が先頭に立つと決めている。
プレゼントは一旦棚上げに。
操縦席へと移動し、防衛基地アマテラスに向けて舵を切る。
この場所より後方、今日は見ないように過ごそうと決意を固めて・・・。
特にあの服については・・・。




