学校での変化
6月17日。
月曜日。
「行ってきます」
玄関を開け、家を出る。
(とも、どれくらい抑えられるか計ってくれよ)
(『おう。一日中はきついかもしんねえけどな。』)
(やばかったらどっかへ逃がす。)
(『まあ、濃密なオーラじゃなければ他のやつらも慣れてるんじゃねえか?』)
(そのたんびに振り向かれるのはちょっと・・・な。)
(『まあ、確かに・・・。』)
学校でオーラを調整するよう話をしていた。
抑えられると分かったこともあり、学校がいい実験場だ。
顔は知っているが関わりのない人。
やらかしてはいけないという緊張感がある。
目立つのは好きではないので、なるべく気配を隠して一日を終えたい。
そういえば一人話しかけてきた女子もいたが・・・・・・まあいい。
事なき用、授業を終えよう。
(『相棒。そういえば防衛隊のガジェット類持ってきてんのか確認しとけよ。』)
(ああ、一応全部持ってきてるつもりだ。)
カバンの中に各種何があってもいいように入れている。
「メガネ」「ケイン」「カード」「バッジ」
あと一応、名前忘れたがハンカチも。
通信装置は耳たぶにつけているが、
ばれないように、色を同化させている。
(大丈夫・・・・・だな。)
(『そういえばお前、隊長からの連絡返事しなくていいのかよ』)
(あ~)
今朝、スマホにメッセージが入っていた。
”愁君!!学校行ってらっしゃい!!”
・・・・・・・・・・どうしろと?
今まで家族としかメッセージをやったことがないので分からない。
とりあえず放置していた。
(どーしろってんだ・・・。)
(『何かしらかえしとけよ・・・さすがに。』)
(チッ、ったく。)
ともと話しながら歩いていたので、
気づけば駅に到着していた。
とりあえず電車を待つために駅のホームに向かい、
待っている間に返信の内容を考えることにした。
(・・・・・・・・)
(『・・・・・・・・・・・』)
いつもの時刻に電車が到着し、乗り込む。
スマホのメッセージ画面を開きながら。
(・・・・・・・・)
(『・・・・・・・・・・・』)
(・・・・・・・・)
(『・・・・・・・・・・・』)
あっという間に最寄り駅に到着。
電車を降り、改札を抜けた。
(・・・・・・・・)
(『・・・・・・・・・・・』)
(・・・・・・・・)
(『・・・・・もう、”はい”っておくりゃいいんじゃねか?』)
(・・・・・・・・・・・信じるぞ?)
(『はぁ・・・・・気使い過ぎだっての。お前いつもの愁か?)
(うるせえ!分かんねえんだって!)
とにかく悩んでいても仕方がないので、
”はい”の言葉を入力し、送信ボタンを押した。
無事送信されたようで、とりあえず忘れようとスマホをしまう。
(・・・そろそろか。)
(『いつでもいいぜ。』)
いつも登校している道から少し逸れ、細い路地へと入る。
誰もいないことを確認すると、深呼吸。
目を閉じて胸に手を当てる。
オーラを自分の周りから吸い込むようなイメージ。
徐々に漏れていたものが薄れていく。
少し経つと、オーラは見る影もなく、閉じ込めることに成功した。
(よし、どうだ?)
(『さすがだな。完璧だぜ。』)
(ふぅ・・・・いくか。)
道に戻り、学校へと向かう。
心なしか、こちらを見られるような感覚がないように感じる。
そして教室に到着し、扉を開ける。
自分の席に座る。
いつもであれば、俺が入ると全員の会話が一斉に止まるのだが、
今回は入ってきたことが気づいていないようで、
いつもの嫌な視線が全くない。
これが日常か・・・とうれしくなる。
授業開始まで少し時間があるので、
スマホを触ろうかと思ったが、例の「メガネ」をかけて情報を確認することにした。
かけると自分を認識し、起動する。
思いのほか新規情報が多いようで、通知がかなり来ていた。
一つ一つ確認すると、各防衛拠点からの情報共有や、
昨日の会議報告書、新規装備やアップデートなど様々。
その中で目についたのが一つ。
”テステス、届いてたら返事してや!”
・・・・間違いなく朔だろう。
いろいろと試していたのか、メッセージが送られてきていた。
返そうと思ったとき。
「あ、粟生屋君。おはよ。」
話しかけてきたのは、
前にも話しかけられ、アーケードでもばったり会った同級生の皐月佳那多だった。
「・・・・・あ、ああ。」
「な、なんかいつもと雰囲気ちがうね。」
「そ、そうか。」
「メガネも・・・かけてるし・・かな?」
「あ、いや、これは・・・」
「かなた!こっちきて!」
「え!あ、うん。そ、それじゃ。」
同じクラスの里美玲に呼ばれ、戻っていく佳那多。
佳那多を呼んだ玲は俺のほうを睨み、目が合うとフンッと逸らした。
(んだよ、あれ。)
(『相棒、早速効果出てんじゃねえか。』)
(お前話しかけないんじゃなかったのか?)
(『いいじゃねえか、んなこまけえこと。
・・・・・・おもしれえからに決まってんじゃねえか。』)
(お前マジで覚えとけよ・・・)
少ししてチャイムが鳴る。
授業が始まるようだ。
授業間も何の問題もなく、オーラを抑制できており、
昼になるといつもの場所に行き、空に向かって放出。
練習していた甲斐があったのか、スムーズにできている。
そのまま昼が終わり、午後の授業も問題なく終了した。
嫌な目線を向けられること、恐怖を感じるような表情を見ることなく、
一日が終了し、効果を実感している。
今日は気分がいい。
充実した1日が過ごせたと満足していた。
机の荷物を片付け、少し机を掃除。
きれいになったところで立ち上がり、清々しい気持ちで屋上へ。
屋上から俯瞰するように、風を感じながらこの空気を堪能する。
念のため、空に向かってオーラを放出。
もちろん誰もいないことは確認済みだ。
少ししてから帰ろうと思い、校舎を出る。
背後から人の視線、気配がすると思いながらも
気にすることなくそのまま帰ろうとする。
そして校門を通り過ぎると。
「あ、ちょっとまち!」
何か聞こえた気がするが、自分ではないだろうと思いそのまま駅に向かおうとする。
「愁!!なに無視してんねん!!!」
「は?」
呼ばれたほうを振り向くと・・・。
1人はフードを深くかぶり、もう1人は知ってる顔。
校門の外、壁側に2人で待っていたように佇んでいた。
「え?どうゆうこと?」
「お前連絡見てへんやろ・・・。」
「・・・・・・・?」
「愁。3人のグループ作って朔が僕らを入れてたんだよ。」
「?」
状況が全くつかめないが、
そこにいた人物は朔と哲の二人。
「ん?なんや?」
「?」「?」
「あ、いや、なんか女の子と目合って・・・。愁、知り合いか?」
「誰だ?」
「あの団子にしてる女の子。」
振り向くと、目が合うも、すぐ恥ずかしそうに眼をそらされ、
一緒にいた玲と帰るようだ。
玲はこちらを睨み、まるで番犬のようだった。
「あ~。同じクラスの皐月さん。最近よく話しかけられる。」
「へ~。なんやモテてるやん。」
「んなじゃねえよ。」
「これ、僕らお邪魔だったかな?」
「いやあかん。聞かなあかんことあるやろ。忘れたあかんで哲。」
「そうだね。」
「なんだ?」
「とりあえず誰が聞かれてもええようにアマテラスいこや。
突然おらんようになった理由と、何話してたんか教えてもらうで。」




