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帰るか

そうして円卓会議は終わり、現在はアマテラス防衛基地。

時刻は遅く、21時を回っていた。

3人で防衛線を見ていたリクライニングチェアのある会議室はもぬけの殻。


いつ侵略者が攻めてくるかもわからない状況なので、

常に隊員は複数人駐在しているが、

それぞれジムや訓練場、休憩室、風呂など過ごし方は様々。

俺は明日月曜日なので、家に帰る必要がある。


その前に、アタッシュケースなどを渡された会議室へと戻り、

椅子に座って待っている。


なぜかって?

金剛隊長が持ってくるものがあるとか何とか・・・。


少し待っていると扉が開く。

音のなった扉のほうを振り返ると、半分顔を出している人物がいた。


よく見ると3番隊の隊員。

防衛戦では何もできなかったと嘆いていた宮野浩太だった。


「げ・・元気?」

「え・・・・ああ。」

「そ・・・そう。」

『なんか緊張するよ~』

「ちょ、ちょっと!」

「・・・・・・・・」


自分よりいくらか年下の少年。

会話に慣れていないのか、はきはきしゃべる様子はない。

ただ、彼の体にあるもう一つの口が達者なようで、

自分自身に突っ込んでいるような構図がなんとも言えない、

どう反応していいかわからない現状に陥っている・・・・。


(どうするのが正解なんだ・・・?)


そうすると浩太の後ろから金剛隊長が現れる。


「浩太君、何してるんだ?」

「た、隊長!す、すいません。少し気になっちゃって・・・」

『だってなんか心配だったんだもん』

「こ、こら!ダメだって!」

「ハッハッハッハ!浩太君も入っていいぞ。

特別なことは特にないからな。」

「あ、ありがとう、、ございます。」


そういった金剛隊長は手にアタッシュケースと何かを持っているようだった。

持っていたものを俺の前に全て置き、説明が始まる。


「さて愁君。本当はアタッシュケース紹介の後に説明する予定だったのだが、

予想外の出来事があったからな。

他の2人はすでに説明を終えて、それぞれの家に帰っているよ。」

「ああ。そうみたいだな。」

「説明はすぐ終わるから少しだけ辛抱してくれ。

まずアタッシュケース。

全部身に着けたと思うが、これは家に保管しておいてくれ。

極力見つからないようにな。

見つかったとしても君や防衛隊以外はスクリーンですらまったく反応しない。

開けることができないが、変なものを隠したりするなよ?」

「んなことしねえよ・・・。」

「そして二つ目はこれ。」


手渡されたのは手帳。

手帳というかバッジというのか・・・。

テレビでしか見たことはないその見た目に驚く。


「これがあれば何かと便利だろう。

基本、自由度の利く通行証だとでも思ってくれ。

実は、皆持っている。」

「・・・・・・・・」


そう言って手渡された手帳を開くと、まぎれもない公安警察手帳。

さらに、いつ撮影したのか分からない自分の写真がそこに張られていた。


「俺、警察なのか・・・?」

「公安警察だ。表向きはな。

この肩書が日本では一番動きやすい。

警察のデータベースにもしっかり情報が載っているから安心しろ。」

「俺未成年・・・。」

「大丈夫!何にでも例外はあるってことだよ少年!

これから急に呼ばれることも出てくるが、このバッジを見せて動けば問題ない。

・・・・・・・・悪用するなよ?全部筒抜けだからな?」

「あ、はい。」

「ぼ、僕も持ってるよ。ほら。」


浩太もポケットから手帳を取り出し、見せてくれた。

俺と同じ公安警察の手帳だ。


「ちなみに私も同じだ。」


そういえば防衛基地で魔ざめた後、家に送り届けてもらえた時、

親に見せていたのを思い出す。


「私も公安に所属していることになっている。

我々はこう見えて一種の公務員だ。

本来の肩書は隠さなければいけないが、

公安という肩書であればある程度自由に動ける。

進入禁止区域の調査、新しいオリジン覚醒者がらみの事件への関与。

悪いことをしない限り、処罰を受けることはない。

国内の事件もそれなりに調べることもできる。」

「へ~」

「あまり興味なさそうだな・・・」

「興味ねえし。」

「そ、そう・・・」


少し気が沈んだようだ。


(そういえば前みたいに生意気きいても殴られなくなったな・・・。)


「それはそうとして、国家権力があるからと言って必ず悪用するなよ。

・・・・・・・・・ばれるからな?」

「へいへい。」


隊長がこちらへ近づいてくる。

少し体を屈めた。

顔を近づけられ、何かと思うと。


「人の話を・・・・・・・聞け!!!」


大声を叫ぶタイミングでデコに力を込めた一発。

デコピンが炸裂した。

椅子に座っていたので、衝撃で椅子が後ろに倒れこみ、そのまま地面に頭を打つ。


「いっっっっっっっっっっって!!!!!!!!」

「私が手を出さないと思って油断しただろ?

甘い。実に甘い。

ちょっと心配になるぞ、愁君。」

「い、今のは、隊長が、、正しいかな?」


デコを押さえながら立ち上がり、そのまま倒れた椅子を元に戻す。


「チッ・・・・ったく。」


舌打ちをしながら椅子に座る。


「まあ土日はほとんど基地にきてもらうよていなので覚悟するように。

きたければ平日の学校終わりに来てもいいぞ。

集中できる場所もあるし、トレーニングもできるし、

なんて言ったってしゃべり相手もいるからな。」

「ああ。」

「いつもの調子に戻ってきたな。

まあ、予定があれば事前に連絡をしてくれれば問題はない。

学生の間は特に我々の業務を無理強いすることはないからな。

ただ、緊急をようするときはさっき言ったようにバッジを見せてから学校を出ろよ。

明日、おそらく職員会議で君の事情は共有されると思う。

教師から大っぴらにされることはないと思うが、何があっても大丈夫だ。

あ、ちなみに昼頃配った万能装置「ケイン」に皆の連絡先全部入ってるからな。

手持ちのスマホに連携して隊員全員に連絡することもできる。

私に連絡してくれてもいいぞ?」

「するかよ!」

「え!ちょっとショック・・・。まあ、使いながら慣れてくれ。

・・・・・さて、今日はここまでだ!」


本日の説明は終了のようだ。

防衛隊に入隊すると決め、入隊してから2日目。

あまりにも濃い時間を過ごした気がする。


契約書をひたすら書かされる1日目。

突然の戦闘と支給品、突然の襲撃者かと思えばアメリカから呼び出され。

防衛隊のお偉いさん達を目の当たりにし、変に目立っていた気がする2日目。


頭の中では、いろいろあったな・・・とあまりにも薄い感想しか出てこない。

今まで以上に濃く、未体験なことばかりであった。


「搭乗口に君専用の小型艦が用意してある。

あとは、それに乗って家に向かってくれ。

搭乗口の場所はわかるか?」

「まあ、なんとなくは。」

「そうか。じゃあ案内してくれ。ついていく。」

「そこは、ここで別れる流れじゃねえのかよ・・・。」

「そんなさみしいことはしないさ。

私は情熱溢れる人物だと自負しているよ!」

「た、隊長は頼りになります!」

『隊長かっこいい!!』

「ありがとう浩太君。

それじゃあ案内してくれ!」

「・・・・・・・チッ」


そういわれ、会議室を出る。

うろ覚えで通っていた道を進み、目的地を目指す。

一歩歩くごとに、意外にも頭の中でこっちだという記憶が蘇る。

迷うことなく、目的地への道がはっきりと呼び起され、

あっという間に搭乗口へ到着。


「ほぉ。以外にも愁君記憶力がいいな。」

「なんだよ意外にって。」

「あ、いや、すまない。決してけなすようなことを言ったわけではないんだ。

搭乗口へ入隊してから数日でたどり着ける奴はあまりいなくてね。

大体少し迷うんだよ。」

「へえ・・・」

「君の才能かもしれないな。大事にしろよ?」

「おぼえとく。」

「よろしい。

それじゃああとは搭乗口にあるスクリーンに「ケイン」をかざせば、

君専用の小型艦が乗り場につくはずだ。

あとは何とかなるはずだからそれで家に帰るといい。」

「・・・助かる。」

「フフ・・・いいってことよ、少年。」


そう言い残し、隊長は来た道に戻っていった。

帰っていく後姿を少し見送り、スクリーンに視線を戻す。


言われたとおりに「ケイン」を取り出し、スクリーンへとかざす。

そうすると、スクリーンが反応し、3番へ移動してくださいと表示される。


場所は近く、すぐそこだったので扉へ向かうと、

防衛基地まで来た小型艦と同じものが止まっていた。


どうしたらいいのかと考えていると、アナウンスが鳴り、

『「ケイン」を扉右手にあるスクリーンへかざしてください』という。

言われた通りにかざすと、扉が開き、中へ入れるようになった。


自分専用の小型艦。

初めてではないのに、少し緊張する。

自分専用となると一気にどうしたらいいのかと心がざわつく。


とりあえず扉が開いているので、中へ入る。

すると新品の香り。なんとも表現しにくいあの香りである。


自分が入ったことを、機体が確認すると、突然扉が閉まり、真っ暗になる。


「え!ちょっ!」


すぐに小型艦正面の窓がかっこいい起動画面で作動する。

正面に見えているのは真っ暗な窓に「初期起動中」と文字が書いてあるのみ。


『はじめまして。これより、認証、登録をはじめます。

小型艦正面にある操縦席へとお座りください。』


突然の音声。

隊長たちの小型艦はこんな音声しなかったよな?と思いながら言われた通りに座る。


『それでは鍵である「ケイン」を操作盤に差し込んでください。』


操作盤が光る。

いかにもここにさしてくださいと言わんばかりに光っている。

ここなんだろうなと思いながら差し込む。


『「ケイン」認証しました。粟生屋愁隊員。データ確認中。・・・・・・・完了』

『ようこそ。粟生屋愁隊員。これより小型艦を起動いたします。』


画面が切り替わり、窓の視界があける。

そこに見えていたのは青い星。

広大な海と陸が広がり、所々には雲が装飾されている。

その景色が再度、俺の心を動かしていた。


「・・・・・・・・・・っと、やべ。帰らねえと。」


起動し終わったのか、窓に操作できる項目が左右にいくつか並んでいる。

操作盤でいろいろと選択できるようだ。


『小型艦、起動完了。

音声での問いもお声がけいただければ対応できますのでお気軽にお呼びください。』


(音声でも呼びかけできるのか。)


「家に帰りたい。」

『分かりました。

場所はデータより照合済みですので、ルートを確認次第出発いたします。』


スクリーン左側に地図が表示され、実家の場所が映し出された。

そこからルートを計算しているようで、立体的にルートを組んでいる。


『ルート確定。これより飛行を開始いたします。目的地まで約30分。

ごゆっくりとおくつろぎくださいませ。』


その言葉が終わると小型艦が動き出す。

ただ何故か毎度思うがヒュンっとするような現象が起きないのが不思議である。

あれだけ高度を下げているのにどうやっているのか・・・・。

まあどうでもいいことなので、小型艦内の電気がつき、

いつもの座席にも座れるようになっていたので操縦席を離れ、そちらへと座る。

外の景色に目を奪われながら、30分の宇宙(そら)の旅を楽しんで帰るのであった。


(『おい相棒。そういえばなんだが・・・・・。

母さんにこんな時間になるって言ったか・・・?』)

P.S 彼は母さんに報告していないのを知っています。

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