自己紹介
「お待たせいたしました!」
「きましたね。これで今回入隊するメンバーが揃いました。
我々は少々持ってくるものがありますので一旦席を外します。
その間自己紹介を済ましておいてください。」
そう言ってゾロゾロと会議室を皆出ていく。
ただの顔合わせだったのか?とも思いながら出ていく姿を見守る。
金剛隊長がこちらを見てニカッと笑って出ていった。
なんだんだ・・・・。
そうしているうちに3人だけになってしまった。
こう言う時、どうすればいいのか全くわからない。
一人はパソコンを触って何かしていたので、俺もスマホを取り出し操作する。
・・・・・・もちろん圏外だった。
そんな時。
会議室のスクリーンがある正面に立ち、自己紹介をする。
「皆さん!私から自己紹介しますね!
私の名前は新田 朔。歌手やってます!
よろしくお願いします!」
声が通る。
(確か自己紹介の時は終わったあと拍手するんだっけか?)
「パチパチ・・・・・」
「・・・・・・・・」
ミヤギは全く気にした様子もなく、パソコンを触っている。
俺も特に拍手するのみであまり興味がない。
基本、人への興味などとっくに捨てていたのだが。
「・・・・・・・な、なんや・・・その反応・・・・・(ボソ」
何か聞こえた気がしたが、気のせいだったのだろう。
特に反応することもなく、スマホへと視線を戻す。
密かに隠していた恋愛漫画コレクションはダウンロード済みである。
ファイルを開き、見ようとした時。
『こっちを見ろ!』
急な声に視線がアラタへと向けられる。
いや、それだけが原因ではないようだ。
視線が逸らせない。
固定してしまっている。
かろうじて瞬きはできるし、首も動くが、目が離れられない。
「人が自己紹介してんのに・・なんやその態度は!!
学校で人の目を見ろっておそわらんかったんかいな!!」
突然の怒号。
女の子にここまで言われたこともないので驚く。
しかも関西弁。
綺麗な見た目の子とは思えない迫力・・・。
「お前!パソコンばっか触ってんとはよ自己紹介せえよ!」
「うっ・・・・わ、わかった。僕は宮城 哲。以上。」
「早すぎるやろ!趣味は!?特技は!?能力持ってるんちゃうんかいな!」
「・・・パソコンが得意。他は特にない。」
「・・・・あっそ。ほな次。そこのお前。」
「お、おう。俺は粟生屋 愁。特技は・・・・特にねえな。」
「自己主張なさすぎやろみんな。なんでここ入ってん・・・。」
「・・・・・・・お、お前ら、俺のこと見てもなんとも思わねえのか・・・?」
「なんか圧感じる気はするけど、別に大したことあらへんで。」
「僕も特には気にならないな。」
「そ、そうか・・・・ホッ」
一安心。
そして、視線も固定されなくなってる・・・
とりあえずいつものように避けられる心配などはしなくていいようだ。
ただなんでだ・・・?
防衛隊の奴らも全く気にしていなかったようだし・・・。
ただ油断はできない。
入ると決めた以上、ここでもいつもと同じ状況にはなりたくない。
「なんでそんなん気にすんねん。まさかお前、指名手配の犯罪者か?」
「・・・まじ?」
「ちげえよ!!犯罪なんてしたことねえよ!」
「なんやねん!!大袈裟なこと聞くなよ!」
「い、いやちょっと・・・気になって。」
「そんな見た目でメソメソすんなよ!はっきり言え!乙女か!」
「ブフォ!」
「ムカッ!・・・・人の一番気にしてる部分を・・・・・。」
そう言ってると、会議室の扉が開き先ほどのメンバーが皆入ってくる。
隊長の皆、何枚も紙を持ってきているようだった。
「ちょっと、何してるんですか君たちは・・・。」
「なにっって・・コイツが!」
「もうええって、話聞こーや。」
「ムカッ!」
「ちょっと血の気多すぎない?」
「その元気さみて安心したぞシュウ君!!」
「うるせえおっさん!」
「お、おっさん・・・・そ、そうか・・俺はおっさんか・・・」
「ハジメ!切り替えろ!お前はおっさんだから安心しろ!」
「そうですね!このこ達から見たらおっさんですね!」
「切り替えの速さ以上だろ・・・」
「ミヤギ、アラタ、アオヤ!席につけ。今から重要な書類を配る。」
1番隊隊長のヒダがそういうと、それぞれ席につく。
そしてジョッキほどの高さに積み上げられた紙の束。
3つ用意されていた束を、各机の上におく。
「その紙の束ですが、全て契約書です。
外へ周知する人はいないと思いますが
我々の存在、組織、技術など全てが国際機密事項の中でも更に重要な、
”トップシークレット”だと思ってください。」
「すいません。なんでダメなんですか?」
「そうですね。
まず1つ目、侵略者の存在を知った時、または、現にそれを見てしまった時。
間違いなく人は恐怖するでしょう。
更に空からの侵入者など防ぐ術など、人は持っておりません。
我々は常に不安を感じさせる意味はないと判断しました。
よって、侵略者の関連事項は禁句です。
2つ目は、”オリジン”の守秘義務です。
”オリジン”について詳しいことは後日説明しますが、
覚醒のトリガーが瀕死の状態である以上、秘匿状態にせざるおえません。
自殺する人が絶え間なく続く現実など見たくありません。
3つ目に、技術の秘匿性です。
今の現実では考えられない技術を用いた施設や武器、艦隊などありますが、
我々は”優れた技術は国を滅ぼす”という言葉に従い、
過度な性能を持つ技術をあえて隠しています。
変な話、力を持つと戦争を仕掛ける国など出てくる可能性がありますから。
我々は地球全てを守るためにここにいます。
この”トップシークレット”がキッカケで守りたい人が守れなくなる可能性もありますからね。」
そう言って説明する飛騨隊長は真剣そのものだった。
ただ、どこか暖かい言葉のようにも聞こえ、
地球を守るという彼にとっての願いのようにも思えた。
「と、いうわけで全部の書類にサインしてください。
紙媒体で申し訳ありませんが、やはり紙が一番信用度が高いので。
今日一日それで終わるかもしれませんが、まだまだこれからやることは山積みです。
しっかりついてきてくださいね?」
「え・・・・・」
「うせやろ・・・・?」
「・・・・・・・・」
3人とも凄まじい量の契約書に顔が強張り、戦意喪失。
魂が抜けそうになりながら、契約書に手をつけていくのであった。




