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事故現場

土曜日。

あの事件があってから11日後の5月18日。

シュウは自分の部屋の机に向かって真剣に考えながら、頭を抱えていた。


(クッッソ。あの野郎。反省文なんて渡しやがって・・・・)


一文字くらい書いているだって?

そんなわけがない。

全く手が動いていない。

もちろん本人も反省していないわけじゃない。

関係のない一般人を巻き込んで怪我までさせてしまったのだ。

ただ、あまり良くないかもしれないがあまり後悔がない。

あいつが言ったように必要なことだったのだろう。

どのみちこうなっていた。


しかしそれを抜きにしても反省文なんて書いたことがないのである。

読書感想文や作文などは授業の一環で書いたこともあるが、実は苦手であった。

この時代、ネットやA Iに頼めばそこそこいい案が得られるのだが・・・・

頼ったら負け。そんな思いがなぜか強かった。

そもそもシュウは他人から避けられていた分、他人や他に頼ると言うことをせず、

自分で全て解決してきたのだ。そうなっても仕方がない。


(どーすりゃいい・・・・・)

(『・・・・・・・・・よお』)

(んだよ。今こっちは忙しいんだ。)

(『んなことゆうなって。一人で考えるよりいいだろ?』)

(・・・なんかアイデアあんのかよ。)

(『・・・・・・・・そうゆうこと聞くなよ。今からだろ?今から。』)

(チッ。結局ねえじゃねえか。)

(『俺だってお前なんだぜ?シュウの知らねえこと俺が知ってるわけねえじゃねえか。』)

(じゃあどうしろってんだ。)

(『・・・・・・・・・・・・・・・・とりあえず外でねえか?』)

(・・・・・・・・まあ、そうだな。埒開かねえし)


かれこれ4時間ほど机に向かって格闘していた。

気持ちを切り替える意味でも外に出る。


「ちょっと外出てくる。」

「あらそう?いってらっしゃい!」

「シュウ!夜用にコロッケ頼んだ!」

「好きだな父さんも。」

「ほれ。これで帰るだろ?」


父親から1000円を手渡される。


「全員分な!楓も夜までには帰ってくるって言ってたぞ!」

「わかった。いってくる。」

「おう!きーつけて!忘れんなよ!」


振り向いて手を上げてわかったと合図をする。

玄関から靴を履いて外へ出る。

といっても突然頼まれたコロッケ以外に目的はない。

どうしようかと考えていると。


(『相棒。事故のあった場所、いってみねえか?』)


ドキッとする。

自分のオーラを解放したせいで事故が起きた現場。

思えばテレビでしかみておらず、実際の場所は行ってなかった。


(『俺も悪かったと思ってる。あんなことになるなんて俺が一番わかってたのによ。』)

(・・・・・・・・・・俺だって抑えられなかった。)

(『悪かった。先を急ぎすぎた。』)

(謝んなって・・・・みにいくぞ。事故現場。)


スマホでこの前の多発事故について検索。

そこは日本一危険な交差点で有名な東京池袋にある場所だった。

スマホのマップで場所をしらべ、ナビを起動。

電車で移動するので何回か乗り継ぎが必要だったが、そんなことには目もくれず目的地へ向かう。


・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・


かれこれ1時間ほど電車に乗り、池袋へ到着。

駅を出て、周りを見渡すと人だらけ。

ちょうど天気も良く、外に出ても春の心地いい風が頬を撫でるくらいなので、

街ゆく人々も皆それぞれ半袖や長袖など、着たい服を着ているようだ。


あの時、事故現場にいたらこの人らも怪我をしていたのか・・・など考えながら歩くこと10分。

例の交差点に到着。

あれから2日経っているからなのか、交差点は車が通れるよう復旧しているようだ。

ただ、所々に今回の事故でできたような傷や、撤去された街灯などがある。

事故の激しさを物語っているようだった。


(ひでえことになってんな・・・)


歩行者を守るためのガードレールも車が突っ込んだのか、内側に拉ている。

まだ撤去できていない物もあるようだ。


元々の風景を確かめようとマップのストリートビューで元の状態を確かめる。

今、自分が見ている景色と同じ風景をスマホに映し出し、交互に見る。

街灯があった場所は、根本のみ残っており、ガードレールは拉ている。

壁には車の擦れた跡があり、地面には急ブレーキのタイヤ痕。

ニュースで見た震災よりかはひどくないが、自分がやったと思うとゾッとする。

ネットやテレビで見るのと実際に見るのとでは明らかに違うと実感する。

テレビやニュースではどこか他人事のように思ってしまうが、実際に見るとその感覚はなくなる。

後悔や罪悪感で埋め尽くされる。


交差点を信号で渡りながら一周。

1時間ほど現場を確認し終えたら、心に残るものを抱えながら家に戻る。


(・・・・・・・言葉にならねえな・・・)

(『・・・なんとかして俺を使いこなせてくれよ?』)

(ああ、こんなことがもうないように。)


家に到着。


「ただいま。」

「お!おかえり!どうした?元気ないぞ?」

「いや、そんなことねえよ」

「そうか・・・・ところでコロッケは買ってくれたか?」

「・・・・・・・・・・・・・」


さっきの落ち込んでいた感情が引っ込み、焦る。

言われていたコロッケを買い忘れていた。


「シュウ。まさか・・・・」


すぐリビングから玄関の方へ飛び出し、靴を履いて外へ。

急いでスーパーへ向かうのであった・・・・


◇ ◇ ◇


「今日、誘えなかったですね・・・・。」

「そうだな。なんか暗そうだったし。」


そう言って近くの公園でブランコを漕ぎながら話す二人。

3番隊のサラとヤマトだ。


「どうしようどうしようって悩んでたら、家から出てきてちょっと隠れたもんな。」

「どこに行くのか後を追いかけて行ったらまさかの事故現場ですよ。」

「なんかくらい顔してたしな〜。」

「ちょっと話し掛けづらかったですね〜。」

「ねーちゃんだったらあの時どうしてたかな。」

「副隊長でも躊躇ったんじゃないですか?流石に」


二人、思い詰めながらどうしようかと考える。

救われた経験があるがゆえに、シュウのような孤独な人間をほっとけないのだ。

二人というか、彼に関わった防衛隊の皆、割と心配していた。

防衛隊に入るか入らないかより、どこかで心が負けないか不安だった。


「明日、また誘ってみるか。サラちゃん予定空いてる?」

「私大丈夫ですよ!」

「それじゃあ、明日再チャレンジだな!」

「わかりました!任せてください!」


そう言ってサラがブランコを漕ぐのを止め、動いている状態から飛んで着地を試みる。

勢い余って大きくジャンプをしてしまい、少し焦るも着地を試みる・・・・が。

砂の地面で滑って大転倒。

後頭部から地面に激突する。


「いだ!!」

「ちょっと!大丈夫!?」


何かと個性強めなサラと、それを心配するシスコンのヤマト。

彼女らとシュウが交わるのは明日。

彼の日常が日に日に変化していくのであった。

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