なぜそうなる・・・
突然起こされたかと思えば真っ暗で何もない空間。
そこに佇む淡い光のシルエット。
「おい、ここどこだ。」
『お前の中で俺の居場所だ』
「・・・・・・何言ってんだてめえ。」
『ムカッ・・・・やんのかてめえ』
「上等じゃねえか」
『前々から思ってたが可愛くねえなお前』
「・・・・・・殺す」
シルエットと本人、お互いが向き合い数回の会話しかしていないにも関わらず、よくない雰囲気に。
初めに動いたのはシュウだった。
シュウが構えて右拳を顔にストレート。
シルエットは顔を拳一つ分だけずらし避けて見せる。
ずらした顔をそのまま元の体制へと戻すのかと思いきや、そのまま頭から体を横へ傾け1回転。
回転の反動を利用して顔目掛けて踵から足を振り抜く。
経験が功を奏したのか、シュウは瞬時に反応し頭を下に下げ回避。
そのまま肺目掛けて拳を回しながらストレート。
見事に入った。
『グッ・・・やるな・・』
今度はシルエットが高速で拳を休みなく顔、胸、腹、至る箇所に放つ。
初めはうまくいなしていたが、徐々に速度についていけず、速度重視なぶん威力はそこまでだったが、五発ほど喰らってしまった。
「・・・・・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・・』
次で最後にするような面持ちでお互い見つめる。
今度はシルエットが先に動く。
顔に拳を放たれるがそれがフェイクで、足のふくらはぎに横から蹴りを入れられる。
しまったと思いながらも即座に反撃。
左手で軽く顔目掛けて打ちながら気が逸れた時に右からフックを顎目掛けて放つ。
読まれていたのか、後ろにすこし傾けて避けられる。
避けられた後、足の関節目掛けて前蹴り。
見事に入る。
少し後ろに下がっていた分、浅かったのか戦闘不能にはできなかった。
ヤケクソになり、そのまま相手に近寄り、数々のパンチを躱わされ、いなされながらも高速で叩き込みながら相手の意識を拳に向ける。
今だ!と思い、足を思いっっ切り足と足の空間へと振り抜き、目標のブツへと目掛けて蹴り上げる。
まさかのクリティカル。これでもかというほど完璧に命中。
『おおおぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!』
「・・・・卑怯なんて言うなよ。」
とある部分を抑え、もがき苦しむシルエット。
叫ぶだけでそれ以上の言葉がない。
勝ち誇ったかのようにシュウはスッキリする。
ハードボイルドな輩であればここでタバコを吸い何もなかったかのように佇むだろうが、
現実でもシュウは吸っていないし吸う気もない。
やはり男の急所というものは頑丈にできておらず、
真っ暗な空間の中、体感にして30分ほどの時間が経過した。
『てんめえ、やってくれたな・・・・』
いまだに大事な部分を抑えながら立ち上がり、その様は内股で生まれたての子鹿のようだった。
「久々にいい戦いだった・・・」
『よくねえよ!何股間ぶち抜いてくれてんだちくしょお!』
「ひさびさ気持ちよかったわ。あんなに完璧に決まるなんてな・・・」
『てんめぇ。こっちが優しく教えてやろうとしてんのによぉ・・・・・・
聞きたくねえのか?オリジンについて』
「聞きたいね。今は気分がいい」
『やっぱりやめようかな、こいつに教えるの・・・
まあいい、教えてやらなきゃ始まんねえしな。』
そう言って、指パッチンをすると、暗い空間だった場所が一転する。
景色が変わるとそこは見慣れた体育館だ。
今通っている高校の体育館で、バスケットゴールが4つ、地面にいくつもの線が描かれている。
突然バスケットボールを投げられ、パスを受ける。
『はいシュート』
「ムカッ」
言われるがままにバスケットゴールにシュートを放つも、突然ゴールが横にずれ、入らず。
『はい残念!!ププ』
「・・・・・・・・・・・・・・」
『まあまあ落ち着けって。正直、お前は運が良かったんだ。
あそこで死にかけなきゃオリジンが覚醒することもなけりゃ、あの人らに出会うこともなかったんだ。』
そう言いながら、ボールを床から拾い上げ、シュートを放つ。
リングにもあたらず綺麗にゴールへと吸い込まれていった。
『オリジンとは、その人がもともと持っていたもの、
そして瀕死の際、心のどこかで思っていた願いがかけ合わさって唯一の能力として昇華した力のことだ。
隊長が言ってただろ。
あの人も気持ちの切り替えが早すぎて他人から距離置かれてたって。
気持ちの切り替えがいいことも本人はわかっていたから、
オフにできたらなとか願ったんじゃねえか?真意は知らんが。
お前の場合は、もともと他人を寄せ付けない威圧、オーラのようなものを常に放っていた。
だから人が寄りつかないし、話しかけてもこない。他人から恐れられる。
生まれてからずっとだからお前はこの特性を受け入れていた。
だから消えずにオリジンとして、一つの能力としてすでに昇華している。
ただ、そこには願いがない。
お前はずっと一人でもいいと心で思いながらも、どこか横で歩いてくれる友が欲しいと願っていた。
一人でもいいから友と呼べる存在が欲しいと。
もともとあるオーラ、それと願いが合わさって・・・・・・
俺が生まれたってわけだ!!!!喜べ相棒!!俺がお前の友になってやる!!!』
「・・・・・・・あ・・・あぁ」
『お!ちょっと嬉しがっただろ!良きにはからえ!』
「・・・やっぱお前ムカつくわ」
『さっきも言ったがマジで運がいい。
他の連中は多分能力について自分で模索して、どう使えるかそれぞれ研究しているだろうがお前には俺がいる。
能力?俺自体がそうなんだからなんでも知ってるぜ。多分・・・
今後の努力次第でいつもの威圧を抑えられたりもできるしな。』
「ってことは、人から避けられなくなるのか・・・?」
『そう思ってもらってもいい。
今までの素行がそもそも悪いからその意味で近寄ってこないやつもいるだろうが。』
「お前はどうなるんだ。俺の中なんだろここ。」
『・・・・・・いつか俺を外にも出せるように頑張ってくれ。』
「・・・・そうか。」
『ちなみにリアルに体は今寝てるからな。
寝てる間だけこういう感じで俺とお前で面と向かって会話ができる。
しかも俺が今の体育館見たいな場所も作れるし、なんなら闘技場だって作れる。
能力試し放題だぜ。練習にうってつけだ。
多分、今までの奴らより断然成長スピード早いぞ。』
「なんだってやってやる。力をかせ」
『何言ってんだ、俺はもともとお前なんだって。
お前よりお前を知ってる。
今まで忘れていることすら俺は知ってるからな。
俺以上の理解者なんていねえぜ・・・ニヤ。
一生付き纏ってやるから覚悟しとけ。
あと今後は起きててもお前に話しかけるし、お前から俺に話しかけてもいいぜ。』
「・・・気が向いたらな。」
『・・・・もう時間だな。学校、まあいつも通り過ごせ。』
そう言われて体育館にいた俺の意識が落ちる。
その後、ふと目が覚める。
ベット横の時計を見る。
時刻は「6時40分」
5月14日(火)の文字とともに時刻が表示されている。
「学校か・・・・・」
ベットから起き上がり、タンスから制服をもちリビングへ。
「おはようシュウ、早いわね。」
「ああ」
「おはよう、ちゃんと朝食えよ。」
「わかった。」
服をリビングのソファーに掛け、洗面台に向かう。
「あ、おはおう」
「おはよ」
カエデは歯磨きをしながら。
俺は顔を洗い、歯磨きをしてリビングへ向かう。
キッチンに置いてあったトーストをトースターに入れ、焼く。
「チーン」という音とともにトーストを取り出し、ブルーベリージャムを乗せ、頬張る。
食べ終われば水を飲み、手を洗い、服を着替える。
いつも制服に袖を通すときは内心きが落ち込んでいたが、今日はやけに清々しい。
カバンなど諸々の準備が終わる頃には時計の針は「7時40分」。
「いってきます」
「「いってらっしゃい」」
「今日もほどほどにね。」
かーさんが毎日登校するときに言う言葉だ。
カエデは7時30前には出ないと間に合わないみたいでもう出て行ってる。
リビングを出て玄関へと向かい、靴を履く。
少しひさしぶりの登校だと思いながら家の扉を開けて。
急所っていうくらいなのでね・・・
想像するだけで痛くなりそうだ




