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念願の風呂


支えがなくても座っていられるようになった、ある日。

いつものお世話係——あの少女が、朝から何か準備をしていた。

しばらくして、同じ服装の大人の女性が二人やってくる。

(……増えた)

嫌な予感しかしない。

抱きかかえられ、運ばれる。

抵抗はできない。

されるがまま。

連れてこられた先にあったのは——

風呂だった。

猫脚のバスタブ。

周囲に余裕のある造り。

(……ちゃんとした風呂だ)

少なくとも、スラムではない。

三人がかりで、洗われる。

お湯に浸けられ、中に置かれた台のようなものに座らされる。

完全に介護スタイルである。

(……溺れないようにしないと)

変なところで現実的な心配をしながら、ただ終わるのを待つ。

風呂から上がる。

すぐに全身に何かを塗られる。

油分の強いクリーム。

ワセリンに近いが、少し薬草の匂いがする。

(……治療込みか)

手首や足首の傷を見る。

前よりは、薄くなっている。

それでもまだ、残っている。

そこには別の薬が塗られ、丁寧に包帯が巻かれた。

用意された服に着替えさせられる。

茶色と薄いピンクのストライプ。

フリル付きのワンピース。

締め付けはほとんどない。

(……子ども服だな)

ルームシューズを履かされる。

リボンで固定するタイプ。

細かい。

そのまま、鏡台の前へ。

鏡はそこまで大きくはないが、硝子製だ。

(……判断材料が足りない)

豪華なのか、普通なのか。

文化レベルがまだ読めない。

けれど。

それよりも重要なものが、そこにあった。

(……これが、私)

初めて見る、自分の顔。

瞳は、赤みのある紫。

ローズピンクに近い。

肌は白い。

不自然なほどに。

ぼんやりとした知識が引っかかる。

顔立ちは、思ったより幼い。

垂れ目気味で、きつさはない。

いわゆる“悪役令嬢顔”ではなさそうだ。

髪は、ミルクティーのような淡い色。

柔らかくウェーブしている。

——が。

(……ひどいな)

長さは肩あたりで揃っているが、ばらつきが激しい。

ところどころ、極端に短い。

ほぼ刈られたような部分もある。

(飼育崩壊した保護犬……)

的確すぎる例えが浮かぶ。

そして。

(……これもか)

髪に、淡い煌めき。

青。

自分でも“煌めき”と呼んでいいのか迷う程度に、暗い色。

むしろ影に近い。

(……魔力?)

まだ確信はない。

けれど、この世界の“何か”だとは思う。

気づけば、髪は整えられていた。

完全ではないが、見られる程度には。

再び、ベッドへ戻される。

背にクッションを当てられ、座った状態で待機。

やがて。

扉が開いた。

執事らしき男。

その後ろに、三人。

女が二人、男が一人。

紹介されているらしい。

まったく聞き取れないが。

(……家庭教師?)

見た目から、そう当たりをつける。

優しそうな女性。

厳しそうな女性。

学者然とした男性。

ぼんやり眺めていると。

執事の視線が、わずかに鋭くなった。

(……あ、まずい?)

その時。

優しそうな女性が、こちらに歩み寄る。

何かを話しかけてくる。

——聞き取れない。

女性が、周囲に何かを伝える。

一瞬の静寂。

そして。

空気が、変わった。

(……え)

明らかに、“驚き”。

全員の視線が、こちらに集まる。

(……いや)

そこまで?

(喋れないの、そんなにおかしい?)

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