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リハビリスタート


あれから、数日が経った。

薬を飲まされ、スープを口に運ばれ、身体を拭かれる。

単調な繰り返し。

けれど——

確実に、変化はあった。

視界が、はっきりしてきた。

ぼやけていた輪郭が、形を持ち始める。

それに伴って、他の感覚も少しずつ戻ってきた。

温度。

重さ。

触れられる感触。

人の顔も、判別できるようになってきた。

目鼻立ちがはっきりしている。

アジア系というよりは、ヨーロッパ寄り。

(……やっぱり、日本じゃない)

ぼんやりしていた確信が、形になる。

いつも世話をしてくれる少女がいる。

十代前半くらいに見える。

緑がかった黒髪。

光の加減によっては、ミントグリーンにも見える不思議な色。

黄みのある茶色の瞳。

(……珍しい色合い)

観察する。

癖のように。

そして。

(……私、小さいな)

ふとした瞬間に気づいた。

手足の長さ。

細さ。

少女と比べて、明らかに一回り以上小さい。

(……子ども)

その事実を、ようやく受け入れる。

どこぞの名探偵みたいな例外でもない限り——

(転生、か)

結論は、そこに落ち着いた。

あの時。

トラックの衝撃。

途切れた意識。

(……死んだんだろうな)

実感は、まだない。

けれど。

否定する理由も、もうない。

(……なら)

切り替える。

今できることを、やるしかない。

差し出された器から、粥のようなものを口に運ぶ。

少しずつ、固形に近づいてきている。

自分で噛み、飲み込む。

それができるようになってきた。

身体も、少しずつ動かせるようになってきた。

補助付きではあるが、手足を動かす訓練も始まっている。

(……動く)

それだけで、少し嬉しい。

手近にあったクッションに触れる。

もふもふ、と指先で確かめる。

(……少し硬め)

どうでもいいことを、わざわざ確認する。

言葉も、覚えたい。

けれど。

(……速い)

会話の速度についていけない。

音としては聞こえているのに、意味として処理できない。

そして。

この少女は、あまり話さない。

必要最低限。

それすら、下回るくらいに少ない。

他の人と比べても、明らかに口数が少ない。

それなのに。

不思議と、場を回しているのは彼女だ。

(……慣れてる)

子どもの世話にしては、手際が良すぎる。

無駄がない。

迷いもない。

(……変だな)

十代の少女が、一人でやる動きじゃない。

気になることは、いくつもある。

けれど。

(……今はいいか)

どうにもならないことを考えても、仕方がない。

まずは、動けるようになること。

話せるようになること。

そうして。

私の“リハビリ”は、始まった。

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