表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

とりあえず生きてる


運ばれる。

誰かに。

抵抗は、できない。

どこか柔らかい場所に下ろされた。

(……やわらかい)

それだけで、さっきまでの場所がどれだけ硬かったのか分かる。

口元に、何かが触れる。

液体。

流し込まれる。

水、だろうか。

うまく飲み込めない。

喉が動かない。

少しだけ、息を止める。

(……意味、ないな)

毒でも、どうにもならない。

そもそも、抵抗できる状態じゃない。

身体に、触れられる。

布で拭かれる感触。

着替えさせられているらしい。

その合間にも、少しずつ液体を飲まされる。

どれくらい経ったのか分からない。

意識が、途切れていた気がする。

気がつくと、明るくなっていた。

さっきより、見える。

ぼやけてはいるけれど、輪郭が分かる。

(……見えてる)

少しだけ、安心する。

同時に、意識もはっきりしてきた。

足音。

誰かが、来る。

一人。

今度ははっきり分かる。

器と、匙。

すくわれた何かが、口に運ばれる。

味がした。

(……スープ?)

ようやく、“食べている”実感が湧く。

再び、身体を拭かれる。

着替え。

そして——

背中に何かを当てられ、上体を起こされた。

(……一人で?)

違和感。

動けない人間の介助を、一人でやっている。

手慣れている。

無駄がない。

しばらくして、さらに人が来た。

二人。

年配の男と、もっと年老いた男。

年老いた方が、こちらへ近づいてくる。

もう一人は、案内役のようだ。

そばにいた女性と、何か話している。

言葉は、やはり分からない。

けれど、流れで理解する。

(……医者?)

手足に触れられる。

巻かれていたものが、ほどかれる。

その瞬間。

視界に入った“それ”に、思考が止まった。

(……なに、これ)

皮膚が。

ただれている。

赤黒く、変色して。

ところどころ、褥瘡のように——

(……やばい)

静かに、理解する。

動けないから、静かなだけだ。

動けたら、きっと叫んでいる。

薬の匂い。

何かを塗られる感触。

淡々と処置が進む。

やがて、手が離れる。

診察は終わったらしい。

残ったのは、ひとつの事実。

(……言葉が、分からない)

日本語じゃない。

英語でもない。

聞いたことのあるどの言語とも違う。

(……ここ、日本じゃない)

遅れて。

ようやく、理解が追いつく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ