表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

新しい人生の始まり


…………?

……なにも、感じない。

ここは——どこだろう。

まぶたを開けようとする。

うまくいかない。

何度か繰り返して、ようやく、わずかに開いた。

けれど。

見えない。

真っ白でも、真っ暗でもない。

輪郭のない何かが、ただ広がっているだけ。

ひどい霞み目のような——そんな感覚。

身体は、ある。

たぶん。

でも、動かない。

指先ひとつ、ぴくりとも。

(……なんだ、これ)

ふと、考えが浮かぶ。

(……生まれた直後から記憶がある、みたいなやつ?)

最近よく見る、異世界転生の話。

——いや。

それにしては、おかしい。

人の気配が、まるでない。

(……違う)

思考を、現実に引き戻す。

事故。

そうだ、トラックに——

(生きてる?)

なら、ここは病院のはずだ。

麻酔が切れかけて、目が覚めた。

そう考えるのが、一番自然で——

(……静かすぎる)

違和感。

耳を澄ます。

機械音が、ない。

心電図の音も、足音も。

誰かの気配も。

代わりに。

かすかに聞こえるのは——

風の音。

葉の擦れる音。

遠くで鳴く、鳥の声。

(……は?)

病院で、そんな音がするはずがない。

それでも、思考は否定する。

(個室かもしれない)

(機械の音が聞こえないだけかも)

(耳に何かつけられてるとか)

理由を、並べる。

無理やりでも、納得しようとする。

(……でも)

おかしい。

どう考えても。

もし、転生だとして。

スラムで放置されているなら——

(詰みでは?)

笑えない。

本気で、どうにもならない。

……とにかく。

動けなければ、何もできない。

そう結論づける。

けれど。

身体は、動かない。

意識だけが、やけにはっきりしている。

どれくらい時間が経ったのか、分からない。

暗くなって、明るくなって。

また、薄暗くなる。

(……一日?)

喉の渇きのようなものを、遅れて自覚する。

(まずいな……)

そう思い始めた頃。

——声が、した。

人の声。

言葉のように、聞こえる。

誰かがいる。

安心と警戒が、同時に湧く。

音は、近づいてくる。

扉の開く音。

思ったより、反響が狭い。

(……部屋、小さい?)

人の気配が、すぐそばまで来る。

瞬きをする。

やはり、見えない。

金属音。

何かを触る音。

複数人の気配。

会話。

——聞き取れない。

(……いや)

違う。

身体が、持ち上げられる。

強引に。

誰かが、何かをしている。

耳を澄ます。

必死に、言葉を拾おうとする。

そして。

理解する。

……ニホンゴ、じゃない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ