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婚約者候補達のお披露目


扉の向こうから音楽が流れてくる。

華やかなはずの音色が、妙に遠く感じられた。

今夜は社交シーズンの幕開け。

——そして、私たち婚約者候補の品定めの場でもある。

革新派から選ばれたはいいものの、後ろ盾は薄い。

視線の重さが、そのまま現状を物語っていた。

だからこそ——

今夜で掴まなければならない。

とはいえまだ私は幼い身だ。

そのため今回は桜色の可愛らしさを前面に出した衣装にした。


「国王陛下御入場。」


目の前の扉が開かれ私は陛下にエスコートされながら入場した。

国内全ての貴族が集まる場で視線の数は以前より圧倒的に多い。

厳しい視線の中殺気のようなものも混ざっている気がした。

所定の位置につき、陛下が開会の宣言を行った。


貴族たちが挨拶の列を作る。

最初に来たのは婚約者候補の1人を出した保守派筆頭の摂政閣下だ。

「王国の太陽へご挨拶申し上げます。

 我が娘ローザリアは陛下の婚約者候補となりました。よくお導き頂けますようよろしくお願い申し上げます。」

「スファレライト大公が娘ローザリアと申します。

 陛下のお役に立てますよう研鑽致します。」

ローザリア嬢は真っ赤な薔薇のような帝国風の華やかな衣装を纏っている。

陛下より3つほど年上だが候補者たちの中では最も社交に長けているだろう。


その次に現れたのは中立派の婚約者候補を擁するアベンチュリン侯爵だ。

「王国の太陽へご挨拶申し上げます。

 我が娘セリーヌをお引き立て頂き光栄に存じます。」

「古参貴族アベンチュリンが嫡女セリーヌと申します。

 よろしくお願い申し上げます。」

セリーヌ嬢は私より1つ下だと言うのにとても落ち着いて見える。深緑の衣装がそう感じさせるのだろうか?


 

その後も挨拶の列は続く。

高位貴族に保守派が多く、革新派は下位だが勢いのある貴族家に多い。

当たり障りなく笑顔で挨拶を受け続けると言うのもなかなか大変だと知った。


挨拶も落ち着き、私は給仕から飲み物を受け取った。

酒ではない飲み物を受け取るのはこの中では未成年の婚約者候補たちしかいない。

自然と近くに集まることとなった。

「こちらの飲み物はアベンチュリン領のものではないかしら。」

ローザリア嬢がまず話し始めた。

「ええ。我が家から王家に献上したものの1つのようです。」

「とても美味しい飲み物ですのね!感動いたしました。」

——無難。可もなく不可もなく。

こういう場では、記憶に残らないことが一番安全だ。

「お2人はまだこのような場は初めてでしょう?お疲れになってませんか?」

ローザリア嬢は少しだけ困ったような顔で問う。

「皆様親切な方ばかりで楽しませていただいてますわ。陛下にもよく気を使っていただいてます。」

「基本、両親の判断に従うだけですので問題はありません。

……それが最も効率的ですから。」

「それならば安心致しました。ですが陛下はお忙しい身。あまり甘えられるのは……陛下のためにも、よろしくなくてよ。」

「わたくしも陛下を案じておりますが、最初が肝要だからと譲ってくださらなかったのです。」

「そう……。王太后殿下からなにかあったのかもしれませんわね。」

 まだ幼い私たちへ気遣うようにローザリア嬢は優しげに話し続ける。

「ですが、陛下には国のために大切なお仕事があります。それを支えることが、王妃には求められます。王妃にはそれ相応の資質が必要なのです。」

「資質……ですか?それはどなたが見極めるのでしょう?」

 ローザリア嬢は優雅に微笑む。

「さあ……ですが——分からない方は、すぐに淘汰されてしまいますわ。我々は後宮にて、同じ場に立つことになるのですから。」

 ローザリア嬢はその後、保守派貴族たちに呼ばれその場を後にした。

「同じ場とは何かしら?セリーヌ様は分かりまして?」

 予想はつきつつもその場に残っていたセリーヌ嬢に問うてみた。

「……ええ、概ねは。どなたが残るかも含めて。……わたくしも父に呼ばれているのでこの辺りで失礼いたします。」

婚約者候補たちは、それぞれに厄介そうだ。

——けれど。

この場で立たなければ、最初から負ける。

私はグラスを置き、革新派の輪へと足を向けた。


 革新派の輪に入ると、年配の貴族たちが安堵したように表情を緩めた。

「リオラルーシュ様……よくぞご無事で」 「これで我らも……」

——頼る気満々ね。

「皆様のお力添えがあってこそですわ」

柔らかく笑う。

中身は真逆だが。

「しかし、保守派の動きが強く……」 「王太后殿下も苦しい立場で……」

口々に不安を吐き出すばかりで、具体案は出てこない。

——これは駄目だ。

「でしたら」

私はグラスを軽く揺らしながら言葉を選ぶ。

「まずは“陛下の信任”を固めるべきでは?」

一瞬、空気が止まる。

「わたくし、少々目立つ役を引き受けますわ」

——寵姫として王を守るために。

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