スターフィッシュ①
楽しかった宴の後。
トンとシルビアは仲間たちと別れ、二人並んで家路につく。
少し前を歩く背中に向かって、シルビアは声を掛けた。
「ねえ、トン」
「ん?」
もう一度、確かめるように問う。
「トンの夢って、この国の≪ドレイグ≫を全員倒して、世界を平和にするってことだよね――――?」
トンは進める足を止めて、こう言った。
「ああ。そうだな」
確かめた後、シルビアは尋ねる。
「じゃあ、この街をもうすぐ離れる、の……?」
トンは答えた。
「ああ。俺は行く」
やっぱりか……分かっていた答えだった。
この国全ての人の平和のために、トンは渡り鳥のように街を渡る。
いつまでも、シルビアの家のあるこの街にはとどまらない。
だから。
言うんだ。今、言うんだ。
わたしもトンと一緒に、旅がしたい。
でも。言おうとすると唇が震えて、うまく発生できない。
代わりに出てきたのはこんな言葉だった。
「あの……もしも、夢が叶わなくなっちゃったら、どうするの?失敗ばかりで、自信を失っちゃったら……ええっと、あの」
こんな話題を切り出すつもりはなかった。
何やってるんだろう、わたし。
それに、トンは答えた。
「いいじゃねえか。道に逸れても穴に落ちても、つなげてみりゃ一本の道になるんだから。
たとえ一度諦めようが、何度も失敗を繰り返そうが、その意思を向ければ、夢につながる道は続いていくからさ。
だから自信を無くす必要はねえ。もう自信を無くしてるっていうんなら、今の自分を認めて、できることから積み重ねればいい。そうしたら、嫌でも自信は這い出てくるぜ」
「人に俺の夢を話すと、笑われるよ。世界中の人を笑顔になんて無理だって。
――――けどさ、俺が夢に近づくたびに、俺の周りの世界は、少しずつ良くなっていくんだぜ。
できないからやらないなんて言ってらんねえ。例え他人に値踏みされて扱き下ろされた価値だとしても、自分が信じた価値に飛び込んで足掻き続ける。
そしたらいつの間にか、隣にいてくれる誰かがいる。そしたらいつの間にか、目指していた場所に立ってる。夢を叶えるって、きっとそういうことなんだ」
トンが少し振り向いた。
シルビアは驚いた。
振り向いたトンの横顔が、空を満たす星々の光輝に負けないくらい輝いていた。




