要求
「何しに来たの……?」
パルテナはバドジに来訪の目的を尋ねる。
依然、首筋に刃物を当てられたままだ。
「ちょっと真教連の人たちにお願いがあって来たんだ♪中に入れてくれると嬉しいな」
「ふざけないで。舐めてもらっちゃ困るわ。死んでもここは通さない」
ゾワッ、とした殺気がパルテナの背中で膨張した。
それは彼女の体内に溶け込み、不快感で全身をかき乱す。
辛うじて両脚で立つのが精一杯だった。
「すごいね♪本当に通さなかった。合格♪」
バドジの体がパルテナの腰に触れる。
そこから一気に、パルテナの腰がギュルリと“螺旋状に”曲がった。
未知の恐怖に、思わず悲鳴を上げてしまう。
「大丈夫、殺したりはしない。どかしたいだけだから♪」
パルテナの体は扉の端によけられ、バドジは開いた扉の中へ入っていった。
◇◇
「してバドジ・L・ガーナー……貴様の要求は何だ」
緊張した空気が真教連の最高幹部が集う会議室に漂う。
その中心で一人、場違いな笑みで飄々と場の空気を受け流しているのが、バドジだった。
「別に難しい話じゃないんだよ♪ボクの要求はただ一点♪」
バドジは言った。
「ボクを≪リ・セイバー≫の序列一位にしてほしいってこと♪」
「何……」
「ふざけるな」
「賊の頭風情が、戯言を……!」
当然、その場の誰もがこれに賛同しなかった。
神聖なる序列一位の位を、よりにもよって賊の首魁に。
「そっかー、でも現役はいいって言ってるんだけどね?」
バドジが指を鳴らすと、会議室に一人の女性が入って来た。
それは。真教連、いや巷の誰もが知る顔。
の、はずなのだが、変わり果てたその姿は目を凝らさねば彼女だと判らなかった。
≪リ・セイバー≫序列一位のエリザベス・シェリーフェンは、半世紀の時を経てきたかのように痩せこけ、さらに皺だらけの容貌でこの場の誰をも瞠目させた。
「ねえ、エリザ?♪」
「はい、私はバドジ様に序列一位の位をお譲りいたします」
しばしシン、となり、そして一座がざわついた。
「バカな!この皺ボケの女が、序列一位なわけがない!」
エリザをよく知る真教連幹部が声を荒げる。
「兇賊の戯言に耳を貸す必要などないぞ。皆の衆、早く近隣の≪リ・セイバー≫に連絡を……」
そう言った神父の。
首が、ギュルリと捻り切られた。
ざわめきが強くなる。
「な……」
「あんまりこういう野蛮なことしたくなかったんだけどね。呼んでも誰も来ないよ♪この施設内にいた帯剣してた人は全員殺しちゃったから♪」
「ボクからのお願いは、ただ一つ。ボクを序列一位にしてほしいってこと。お願いできる?♪」
異を唱えようとしたものも、口を噤んだ。
戦場からほど遠い場所に常在する真教連の老人たちは、皆、この螺旋の主の言葉に呑まれていた。
◇◇
「何が目的?」
バドジは自身が序列一位に立つことの了解を得ると、それだけで満足だとでも言うように会議室を出た。
そして今、真教連本部の一室を占有している。
もはやこの施設はバドジの前に陥落したも同然だ。
唯一自由な行動を許されたパルテナが、バドジに真意を問う。
「別に……ちょっと面白いことしたくてね♪」
「だから、それが何かって訊いてるの」
「怒んないで♪じき分かるから♪」
バドジはそう言って、組んだ指を軽やかに動かした。
次回は14日(金)か15日(土)に更新します




