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悪魔の槌継承戦①


 そうだ。


 言えるわけがないのだ。


 シルビアを殺してもよいなど。



 


 その言葉を聞いて、ゼキムがにやりと口角を吊る。




「…………ただし」



 トンは付け加える。



「俺が負けた後、お前らがシルビアたちをどうするかは、俺が口を挟むことじゃねえ」



あくまで冷静に聞こえるよう、声色から感情を消した。




言った後で、胸が締め付けられるような痛みに苛まれた。



ゼキムの表情は、さらに歪な喜色で満たされる。



最初からトンがどの返答をしようとも、こいつにとっては面白い展開になるのだ。



そして、罵声が飛んだ。

トンはその名を知らないが、シルビアの隣で地面に転がっていた、クレオからだった。



「てめえ!よくこの子の姿を目にして、そんなこと言えたな!……この子はな、あんたを救けるためにここに、体張ってきたんだぞ!それを、そんな子に向かって!

 俺が負けたらそいつはどうでもいいなんて、よくも言えたな、てめえ……!」



「言わなきゃ全員この場で殺される。トンは自分の置かれている状況とシルビアへの気持ちをはかりにかけて、ギリギリの判断をしたのよ。頭を使わず感情に任せて吼えるだけなら誰だってできる」


背後から、リリアンがクレオの言を制した。


しかしトンはリリアン、と呟き、、それ以上クレオに何か言うのを咎めた。

クレオの怒りはもっともだと思ったからだ。



「では死合おう、トンよ」


 その言葉を合図に、仲間を残してトンは背を向けるゼキムについて行く。




◇◇


マミルダ城のバルコニーからは、マミルダ市街が一望できる。


市民は外出を禁じられていたためその姿はなく、代わって街は黒ずくめのディムガルド兵で埋め尽くされていた。

いずれ劣らぬ精兵ぞろい。

城の外に押し寄せてきたカムラン王国軍を一時撤退させ、彼らは今、襲撃と襲撃の間隙に生じた束の間に、大いなる余興に興じようとしていた。



そして今、二人の男がバルコニーに現れて、市街からこちらを見上げる黒ずくめの兵たちから喚声が湧きたった。


ゼキムとトンが相対する。



「トン。一時貴様にこれを預けよう」


 そう言ってゼキムから渡されたのは正真正銘トンのベルグハンマーだった。


「お前はどうすんだ?」


 トンはゼキムに訊いた。


 トンのベルグハンマーに伍するには、それと同等かそれ以上の武器を持たねばならないはずだ。


 そしてそんな武器などこの世広しといえど稀少だ。


 まさか。


 あれが現存するというのか。


「貴様に案じられる謂れはない。

 おい、アレを用意しろ」


 ゼキムが傍らの士官に告げると、白布に包まれた槌のシルエットを取る得物が、ゼキムの手に渡った。


 布を解かれ姿を現した銀槌は、トンの“悪魔のベルグハンマー”と酷似していた。


 そう。これこそがベルグハンマーの試作品プロトタイプ


 プロトハンマーとでも呼ぶべき代物。




「先の反乱の後、国内に残った私の同志がひそかに回収したものだ。

 試し打ちの品と言えど私にとって思い入れの深い槌」


 ゼキムはプロトハンマーの柄を撫でて落ち着いて話す。


「だがそれも今日で手放そう……貴様を打倒し、私は名実ともにベルグハンマーの継承者となる。これはガロンの弟子としての、矜持をかけた闘いだ」


 今度はトンの手元に握られるベルグハンマーを睨視して、力強く言い放つ。




「それではこれより……ゼキム・ヴァオウ対トン・ビロードビレッジ、ガロン門下の二人による、悪魔の槌の正当な継承権を賭けた、一対一の決闘を行うッ!」



 バルコニーの外の喚声は、最高潮に達していた。

 今、トンとゼキムの決戦が始まる。



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