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宣戦布告

 政務室の扉が開く。


 ディムガルド軍の黒い軍服に身を包んだ副官が、彼に占領の状況を伝えに来た。


「……既にマミルダ市街は八割を掌握し、兵の配置は占領体制に移行しました。

マミルダ市民は各自自宅待機を徹底させております」


「ご苦労。 くれぐれも兵の風紀がたわむこと無きよう手綱をしっかり締めてくれよ。

占領地での狼藉は我らディムガルド軍の国際的な外聞を落とすからな」


「はっ……して、いずれ来るカムラン軍に対する備えはいかがなさいましょう?

現在城壁外周に投石器を配置し、如何なる方向からの襲撃にも城門の外で排除するよう計画しておりますが」


「君の有能さには舌を巻くよ……私から何も言わずとも完璧な備えをしてくれる。

まあ付け加えるとするなら、占領地に配置してある各兵に野戦の用意をさせておくことだな。

 投石器で敵の士気を弱めたところで、城門を開いて突き崩す。 そうして撃退した後、本国からの援軍を待とう」


「はっ。 承知いたしました。 ……大佐、そろそろ声明を発表するお時間です。

原稿のご準備は」


「心配ない。 昔反乱軍を率いていたころから、こうしたデスクワークばかり回ってきていてね。 ウサ晴らしでよく真教の遺跡なんかを破壊して回ったものさ。 “悪魔の槌”で暴れるのは最高のストレス解消法だよ」


 彼はジョークを飛ばし、副官も愛想笑いか知れないが口に拳を当てて口の端を緩める。


「さて、声明を出そうか」


 そう言って、彼、ゼキム・ヴァオウはマミルダ政庁の政務室を出た。





 ――――ディムガルド軍とカムラン王国政府とのゼキム・ヴァオウの身柄引き渡しは最初から偽装だった。


 その実は、ゼキムの身柄引き渡しを口実としたディムガルド軍によるカムラン王国の主要都市マミルダの占領だった。


 そしてディムガルド軍のマミルダ攻略を指揮するのは、他でもないゼキム・ヴァオウ「大佐」であった。



 トン・ビロードビレッジのゼキム襲撃から一夜が明けていた。




『……本日未明。この旧カムラン領マミルダの地は、我らディムガルド大帝国が占領した。

 これは征服ではなく、解放である。 ≪ドレイグ≫なる野盗をのさばらし、真教なる邪教の蔓延を野放しにする力なきカムラン政府に、この地の統治は任せられぬことは明白。諸王家の総代として、崇高なるディムガルドの帝室がこのマミルダを直轄とするものである』



 トンを撃退した後、ディムガルド帝国軍は予定通りのルートをたどりカムランの北にある城塞都市マミルダに入場した。


 ――――そこで、ゼキムの身柄引き渡しにやって来たカムラン特使を殺害し、マミルダの都市守備兵を排除して市街全域を占領した。



 『カムラン王国は建国当初から騒乱の火種を常に抱え、諸国家の平穏をかき乱す不穏分子であることはここ数年の惨状を見るからに明らかである。 

志を持つカムランの民よ、我らがディムガルド親征軍の旗のもとに集結せよ。

無能なカムラン政府を自らの力で排除せよ。

我らディムガルド帝国は変革を望む者の味方である』


 ――――三年前の反乱に失敗したのち、ゼキムは隣国のディムガルド帝国に亡命した。


 その地にして、カムラン王国の地理を知り尽くしていたゼキムは、その情報をディムガルドに売った。




『私の名は……あえて偽ることをやめよう。かつて“ガロン”と名乗っていた。

 しかし我が名はゼキム・ヴァオウ。 名刀工として名を馳せるガロン・ビロードビレッジの弟子である。

 彼はかねてより自国の情勢を憂いていた。そのため、私は彼の代わりに、戦士としてガロンの名を冠し、自国に対して反乱を引き起こした。

 今私はディムガルド軍に籍を置く。しかし国を裏切ったわけではない。

 真にこのカムランのまつりごとを変えるための力。

 それを手にしたに過ぎない。

 私はカムランの暗愚な政府に宣戦布告する。

 私ゼキム・ヴァオウはカムラン王国を必ず打倒する!』


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