桜色の先端
現れたのは、金砂を塗したかのように美しい輝きを放つ髪と、空の蒼をそっくり映し出したかのように透き通った色で満ちた大きな瞳を持つ少女だった。
シルビア・ロレンティだ。
その表情は、明らかにトンを探していたことを言外に告げている。
「来ちゃい……ました……」
泣きそうな表情をしているのに、彼女はそういてはにかんで見せる。
つい昨日一昨日まで、自分が持つ異能に怯える気弱な引きこもりだったというのに、そんな器用な感情表現ができるなんて、トンは意外でもあり、そして――――嬉しかった。
シルビアは教会の中に入ると、初めて会う神父に一礼した。
「初めまして神父様。その……突然入ってごめんなさい。シルビア・ロレンティと言います。そこにいるトンに会いたくて……来ちゃいました」
「おう、おおう、よう来なされた。まあ募る話もあるだろうから、後は二人きりでごゆるりとな」
神父は空気を読んでか、その場から下がる。
正直トンは神父が持ってきた二つの報せの中身が気になったが、それは後にして今はシルビアに向かっていった。
彼女を前に、こみ上げてくる罪悪感。
「シルビア……」
「トン……トン!」
二度名前を呼んで、シルビアはトンの胸元へ飛び込んできた。
「ごめんなさい……!トンは帰ってくるって言ったのに、わたし、もしかしたらトンは遠くへ行っちゃったんじゃないかって、ものすごく不安になって……」
シルビアはぐずりながら、まるで今まで感じていた分だけの不安を一気に外側へ吐き出すかのように、トンに体をこすりつけた。
「トンのこと、信じて待たなくちゃいけないのに……!」
トンは胸の中で泣きじゃくる彼女の頭をゆっくりと撫でて、穏やかに言った。
「本当にごめん。俺が悪かったんだ。本当はな……お前のもとを去るつもりだった。俺と一緒に居るのは危険すぎる。
だから、その……俺は、詳しくは言えないけど、俺はお前を探してた。お前に一目会えて良かった。
もう一目会う望みは叶ったから、そのまま去ろうと思ってた。
だけどやっぱり…………。本当に、ごめん」
胸の中で、涙をすする音が止んだ。
シルビアが顔を上げてトンの双眸に自らの瞳を覗かせる。
トンも、見上げてくるシルビアの顔を覗く。
二人の距離が、近づく。
トンはシルビアの腰を抱き、シルビアはトンの背中に手を回した。
シルビアの方から、目を閉じた。
トンも自然と目を閉じて、
そのまま、お互いの顔は近づく。
深まる距離の先端は、互いに震える唇だった。今、互いの先端が急速に縮まる。
まるで「恋人」であるかのように。
今、二つの桜色の嘴が、重なろうと




