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8.兄国王Side

【エーリックお兄様、助けて! ここ(帝国)の人たちに意地悪されているの!

 私の子供たちが奪われていくのよ! 信じられないわ!

 最初の男の子も、次に生まれた女の子も、その次に産まれた男の子も、一週間前に産んだ女の子も、全員奪われたわ!

 こんなのおかしい!

 私が生んだのに!

 私が母親なのに!

 なのに!

 あの人が、……お義母様(夫の母)が奪っていくの。

 フランツは、お義母様に任せておけば問題ないって言うばかりで取り合ってくれないのよ。他の人もそう! 皆、お義母様の味方なの!

 お願い、お兄様!

 私の子供を取り戻して!】


 二番目の妹、ユリアからの手紙が相変わらず支離滅裂だった。

 こんな手紙、読みたくはない。だが、あれでも大国の皇后だ。読まないわけにはいかなかった。

 ユリアはハイデスブルク帝国に嫁いで早々に懐妊した。

 そうして、次々と子供を産んでいるが、子供の養育にユリアが関わることはできない。

 ユリア自身が皇后として未教育のままなのだ。当然の処置だと誰もが思うだろう。……ユリアを溺愛している皇帝でさえ、この件(養育)に関しては一貫して自分の母親側についている。まあ、無理もない。

 ユリアは、馬鹿だ。

 いや、ユリアを偏愛する父の偏った教育によって育てられた結果だろう。

 父は、絶世の美女であった祖母に瓜二つというだけで、ユリアを特別扱いし続けた。それも悪い意味での特別扱いだ。

 おかげで、王家に生まれてきた者としての責任感がまったくない。

 そうだ、あれは、ユリアが十歳の時だ。


『お父様~~』

『ん? どうした、ユリア』

『ユリアね、大きくなったら、騎士様と結婚したい!』

『な、なんだと!? き、騎士……だと……?』

『うん!』

『……ユリアは、お父様のお嫁さんになるんじゃなかったのかい?』

『え~~! だってお父様にもお母様がいらっしゃるじゃない! それに親子では結婚できませ~~ん』

『ユリア!』


 ユリアの宣言で父は号泣していた。

 そんな二人を母は冷めた目で見ていたな。

 すぐ下の妹のカロリーネは苦笑していたし……。

 私も母と同じような目で見ていたはずだ。

 これが五歳くらいの幼女なら「かわいらしい」で済む話だが、言ったのが十歳の王女だ。

 はっきり言って「アホか?」としか感じなかった。

 そもそも、父親の膝の上で言うセリフではない。

 十歳にもなって自分のことを「ユリア」というのも止めろ。情けない。

 まあ、この後、母からの教正でユリアは自分のことを「ユリア」とは呼ばなくなったが……。

 父は落胆していたが、必要なことだった。

 なにしろ、あのセリフは玉座の間で行われていたからな。国内の貴族だけの小規模なものとはいえ、公務中での出来事だ。流石の母も危機感を覚えたのだろう。貴族の多くは慣れているせいか、見て見ぬふりをしてくれたが……。あんなことをしている王族は我が国くらいだろう。はぁ~~……。普段は、まともなのだ、父は。アレさえなければ今頃「賢王」と呼ばれていただろうに……。父は、ユリアが関わると愚王に成り下がる。


 後日、ユリアが「騎士と結婚したい」と言い出した理由が分かった。

 先日行われた儀礼式。

 そこで、カロリーネは騎士から剣を捧げられる場面があった。

 剣を捧げられ、それに答礼する。それだけだ。他意はない。様式美というやつだ。

 ただ、それを見たユリアは「かっこいい」と感じ、「私もやりたい」と思い、「騎士様、素敵! 結婚したい」と飛躍したのだ。

 なんとも馬鹿馬鹿しい理由だ。

 思い付きでなんでも言葉に出すユリアらしい、ともいえた。


 ああ、そういえば、あんなこともあったな。


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― 新着の感想 ―
全体的にエリザベートを彷彿とさせますね。
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