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 結局、俺は眠りの魔法をかけられて、執事さんにアルファング王都まで連れ帰られたのだった。

 眠ったままにされたのは、魂なる物が体から飛び出さないための配慮らしい。


 アルファングまでの執事さんと二人きりの空路。無事である保障は皆無。俺の心臓は恐らくあとニ、三度、超新星爆発を起こしていただろう。


 そう考えると、執事さんの判断は適切だったと言わざるを得ない。


 しかし……


(そうなる原因を作ってるのは、いつも執事さんなんだけど〜)


 腑に落ちない。


「はあぁ〜」

「主様、大丈夫でございますか?大きなため息をおつきになられたようでしたが?」

「え、そんな事ないよ」

「お優しゅうございますね」

 ため息をついたのは、とっくにバレている。ため息を誤魔化した事も。

「慣れぬ移動でお疲れになられたのでしょう。ヒイロ様、こちらへ」

「わっ」

 ベンチにぴょこんと座らされた。

「お隣、失礼致します」

 そうして執事さんもベンチに腰掛ける。

「実は馬車を待たせている場所から、少し離れた所へ降りました」

「空から突然、降りて来たら目立ちますもんね」

「それもありますが、もう少しヒイロ様と一緒にいたかったものですから」

「なんで?執事さんも城に来てくれるんじゃ」

 ゆっくりと彼は首を振った。

「私は執事です。主様の馬車に同乗できません」

「俺が許します」


 執事さんは頷いてくれない。

 どうして?

 執事は主の命令を聞くものだろう。もっと強く言えばいいのか?


 ……うぅん。俺は、執事さんを従わせたいんじゃない。


「お気持ちだけで十分でございます。今はただ……」

 右手が髪に触れて……

「私の小鳥のお疲れを癒やせられましたら……と思っております」


 こくん


 優しい手が髪を撫でて、ほんの僅か力を込めた。

(この場所……)

 執事さんの肩の上だ……


「主様は私と過ごした時間を、どのようにお感じになられましたでしょうか?時はあっという間に過ぎていくもの。楽しい時間ならば尚更です。私はあっという間でした」


 執事さん……


 きゅっと、手と手が結ばれる。覆い被さった暖かな温もりが、俺の手を繋いでいる。


「手放したくないとさえ思います」

 細めた瞳。オレンジ色の夕日が浮かぶ。

「貴方様の自由を奪う事になるのだとしても」


 夕日がドロップみたいだった。

 切なくて、きゅんとする。


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